杉田万智 個展「BORDER」
ギャラリーARTDYNEにて杉田万智個展「BORDER」を開催
この度、ARTDYNEは杉田万智の同画廊における3回目の個展、「BORDER」を開催いたします。
杉田は夜明け前や日没時の群青色に沈む情景と鮮やかなネオン看板を組み合わせ、民族問題・人権問題への言説や警鐘を込めた作品を一貫して制作しています。特徴的な色彩の鮮やかな対比に加え、白く輝く縁取りを重ねることによって、より重層的でミステリアスな画面を獲得した作品は、多くのファンを惹き付けてやみません。
今回の個展では、以前から継続的に発表を続けている「境界」にまつわる事柄に焦点をあてた展示を試みます。軽やかに国境を越える渡り鳥、涼し気に大地を駆け抜けるウマなどが、「BORDER」をものともせず突破していくモチーフの象徴として描かれます。
今展では100号の大作を含む新作6点と、杉田が初めて発表する写真作品5点で構成されます。この機会にどうぞご高覧、ご高評いただければ幸いです。
【アーティスト・ステートメント】
「BORDER」は自然的国境である海に囲まれた島国の“境界線”の在り方と、場所の“境界”を示すシンボルである看板を合わせたシリーズだ。人間が作り出した境界線と国境、歴史の壁を最も容易く越える存在である渡り鳥はどこか神秘的な光を纏っている。
私が何故これほど日本の民族や人権問題を意識しているのか、不明瞭な自分自身の立ち位置に疑問を抱きながらも目の前のキャンバスや風景と向き合う日々。ある日、民族や人権に向いた私の意識が鏡のように跳ね返り、自分自身のマイノリティさを見つめていたことに気付かされた。そして核心を突かれたような腑に落ちたような、作品と作家を結びつける切り離せない脆く細く切ない糸を感じて私は少し強くなれた。
この「BORDER」は土地を隔てる意味のみならず、日常で誰しもが抱える“境界”にも該当する。
私たちは無意識的に境界上を行き来しながら生きている。
【写真作品に寄せて】
BORDER作品を制作するにあたり、少しずつ“端”へ出向かうことを決めた。
ロシアや国後島から漂流する流氷や霧で微かに浮かび上がるサハリン島のシルエット、光を纏う渡り鳥の群れを眺めた記憶。凍てつく空気と吐息に命を噛み締めて、自分が立つ場所と他国との密接な距離を強く実感した瞬間。
与那国馬に会いにひたすら東へペダルを漕いだ日、怖いくらいに綺麗な群青と強い日差しに反射する献花と落ちる花弁。
自分の眼に映し出された現実の数々の風景がBORDER作品を少しずつ強くしてくれる。
杉田万智
■展覧会情報
2025.01.10 (Fri) - 01.26 (Sun)
12:00-19:00、月火水休廊
103-0025
東京都中央区日本橋茅場町1-1-6 小浦第一ビル2C