東京2020オリンピック・パラリンピック選手の薬事情〜選手は薬を服用できないの?アンチ・ドーピングについて紹介〜

ヴェリタスジャパン、「産業医ラボ.com」コラム更新のお知らせ

企業のヘルスケアをサポートする産業医ラボ.comを展開する株式会社Veritas Japan(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:中川隆太郎、以下産業医ラボ.com)は、開催までいよいよ100日を切った東京2020オリンピック・パラリンピックに関連いたしまして、「アンチ・ドーピング」についてご紹介するコラムを更新しましたのでお知らせいたします。

2020年末に世界アンチ・ドーピング機構=WADAは東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて選手たちに新型コロナウイルスのワクチン接種を強く推奨するという見解を出しました。国際オリンピック委員会=IOCは大会に出場する選手たちのワクチン接種について、参加条件とはしないものの推奨する姿勢を示しています。一方で、選手からはワクチン接種に伴うドーピング検査への影響や接種後の副反応などを懸念する声も聴かれます。そこで今回のコラムでは、東京2020オリンピック・パラリンピックに参加する選手たちが直面するドーピングに関連する様々な問題についてご紹介いたします!

■ドーピングとアンチ・ドーピングはなにが違う?

ドーピングとは、「スポーツ活動において禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為」とし、さらにルールに反するさまざまな競技能力を高める「方法」やそれらの行為を「隠す」ことも含めてドーピングと呼んでいます。

アンチ・ドーピングとは、ドーピング行為に反対(antiアンチ)し、スポーツがスポーツとして成り立つための、教育・啓発や検査といった様々な活動のことです。WADA(世界アンチ・ドーピング機構)ではCODE(世界アンチ・ドーピング規程)に全世界、全スポーツ共通のアンチ・ドーピングのルールを定めています。

CODE(世界アンチ・ドーピング規程)にはアンチ・ドーピングの規則違反として11種類の項目が定義されています。これらの違反はアスリートだけでなく、違反の種類によってはサポートスタッフ(指導者、コーチ、チームドクターなど)もその対象になります。

■禁止薬物って?日常で販売されている薬剤にも禁止薬物が含まれている!?

CODEに規定されている禁止物質は3つに分類されます。


①常に禁止されている物質と方法(使ってはいけない)

②競技会において禁止される物質と方法(競技大会中だけ使ってはいけない)

③特定の競技において禁止される物質(特定の競技の選手のみに禁止されている)


よく聞かれる禁止物質は男性ホルモン、筋肉増強剤やステロイドなどですが、実は普段口にすることが多いサプリメントや風邪薬などの市販薬、病院で処方される医薬品などにも多くの禁止物質が含まれています。


主な禁止薬物の種類まとめ

1,医療用医薬品、市販薬(OTC)

風邪薬、咳止め、アレルギー薬(エフェドリン、メチルエフェドリンなど)
花粉症の薬(プソイドエフェドリン)、胃腸薬(ストリキニーネなど)
体毛を濃くするぬり薬(これは男性ホルモンを利用したお薬ですね) など

2,漢方薬

麻黄(エフェドリンを含む)、ホミカ(ストリキニーネ)  ほか

3,サプリメント

食品扱いになりますのですべての成分の表示が必ずしもあるわけではありません
筋肉増強、脂肪燃焼などを目的とするサプリメントは注意が必要です

意図的でなく摂取したものの中に禁止薬物があった場合でも、違反に問われることになり“うっかり”では済まない結果になる場合があります。


■アスリートは服薬できないの?治療使用特例(TUE)とは?

近年パラリンピックに代表されるように、障害者スポーツも極めて競技性が高くなり競技人口も増えてきています。一般アスリートに加えてパラアスリートにとっては、その障害に応じて何らかの薬物を使用している割合が高くなっています。しかし前述した規則違反や、禁止薬物は健常者と障害者の区別なく一律に適用、運用されています。

こうした障害や疾病で薬を使用する場合はどうしているのでしょうか?禁止薬物のうち、麻薬とアルコール以外のほとんどが治療薬として使われる薬に含まれています。健康な選手であればこれらの成分が含まれた薬は体調が悪い時にだけ服用すればいいですが、障害や持病を持つ選手はこれらの成分が含まれた薬を常用しなければならない場合が多くあります。ドーピング違反になるという理由で薬の服用をやめることはできません。

アスリートが「病気やけがの適切な治療」を目的として、禁止物質や禁止方法を使用する場合には、「特例」として、その使用が認められます。 そのルールのことを「TUE(Therapeutic Use Exemption:治療使用特例)」と言います。どのような場合でも認められるわけではなく、禁止物質・禁止方法を使わなくても他に治療方法がある場合は認められません。TUEが認められるためには、少なくとも以下の条件を満たす必要があります。


①治療上使用しないと重大な障害を及ぼすことが予想される

②ほかに変えられる合理的な治療法がない

③使用した結果、健康を取り戻す以上に競技力を向上させることがない

④ドーピングの結果生じた副作用の治療ではない


■実際にドーピング判定された例とは?

実際に2019年度は3例の規定違反が報告されています。いずれも意図的でないという判定で、競技成績の執行・資格停止期間が短くなっています。日常的に服用していたサプリメントの成分表記に記載がなかった、事前に申請していない薬を服薬してしまった、家族が勘違いしてしまった結果誤って服薬してしまったという事例です。毎年こんな事で違反になるの!?と驚く事例が多数起こっています。

故意は別として、意図しないでうっかり重大な結果を招いてしまったことでも処罰の対象になってしまいます。そのような事が起こらないように、競技者や周囲の方々は以下の点を注意する必要があります。


①競技者がその必要性を十分学習すること

②周りを取り巻く家族、スタッフなどの周知・理解も重要

③医療機関を受診する場合は、アスリートであることをあらかじめ周知したうえで治療を受ける必要がある


■新型コロナワクチンはドーピングにならないの?

東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて選手たちに新型コロナウイルスのワクチン接種を強く推奨するという見解がありましたが、新型コロナワクチンはドーピングには引っかからないの?と心配になると思います。この件に関してWADAより声明が発表されました。

・このパンデミックの状況下においてはアスリートの健康が一番重要であると考えている。万が一、ワクチンによってアンチ・ドーピング規則違反が生じる可能性がある場合は、ワクチンとアンチ・ドーピングの原則が相反しないよう、すべての結果管理を監視する。
・ワクチンは新規ではあるが、アンチ・ドーピングのルールに反すると考える理由は現在のところ無い。

日々の情勢なども考慮し、このような声明が公開されたことによりアスリートは安心して新型コロナワクチンを接種し、競技やトレーニングを行うことができます。


■まとめ

いよいよ東京2020オリンピック・パラリンピックの開催時期が近くなってきました。このコロナ渦、なかなか厳しい状況にはありますが果たして無事に開催されるのでしょうか?選手にとっては開催を信じてトレーニングに邁進する日々だと思います。今後もコロナウイルスの蔓延を抑制しながらアスリートの健康を維持し、公正なスポーツの祭典が開催できることを望んでいます。


出典:JADA(公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構) https://www.playtruejapan.org/
出典:JADA 世界アンチ・ドーピング規定(CODE) https://www.realchampion.jp/code2021.html


■ 執筆 ■
竹内 敦子 たけうち あつこ
株式会社メレコム 薬事センター管理薬剤師
昭和55年に薬剤師免許を取得。その後、医学部臨床病理学で生化学研究室勤務。
後、消化器内科学にて肝炎ウイルスの遺伝子解析、がん腫瘍マーカーなどの研究に携わる。
現在は、同グループ会社 株式会社MeRecomの薬事センターにて専属薬剤師として活躍している。


Veritas Japan 会社概要

・ 会社名:株式会社 Veritas Japan
・ 代表者:代表取締役 中川隆太郎
・ 所在地:〒231-0015 横浜市中区尾上町 6 丁目 87 番地 3 産経横浜ビル3階
・ 事業内容:産業医紹介、メンタルヘルス対策、医療コンサルタント事業 他
・ 公式HP:https://veritas-japan.co.jp/



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