超小型人工衛星打ち上げプロジェクト! 近大生が組み立てた「宇宙マグロ1号」が宇宙へ

2022-04-27 14:00
超小型人工衛星「宇宙マグロ1号(SpaceTuna1)」

近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)電気電子通信工学科准教授 前田 佳伸、同理学科物理学コース講師 信川 久実子らの研究グループは、株式会社エクセディ(大阪府寝屋川市)と共同で、10cm角の超小型人工衛星「宇宙マグロ1号(SpaceTuna1)」を開発しました。5月上旬に宇宙航空研究開発機構(JAXA)へ引き渡し、ロケットで国際宇宙ステーション(ISS)に運ばれたのち、「きぼう」日本実験棟から放出予定です。

【本件のポイント】
●超小型衛星「宇宙マグロ1号(SpaceTuna1)」を年内に打ち上げ
●衛星に取り付けた再帰性反射材シートに地上からレーザーを照射し、反射特性を取得
●学生の手で衛星開発を行うことで、継続的な「宇宙人材」の育成をめざす

【本件の内容】
近畿大学理工学部電気電子通信工学科准教授 前田 佳伸と、同理学科物理学コース講師 信川 久実子は、株式会社エクセディと共同で、再帰性反射材シートを装着した10cm角の超小型人工衛星「宇宙マグロ1号(SpaceTuna1)」を開発しました。
「宇宙マグロ1号」は、三井物産エアロスペース株式会社(東京都千代田区)提携の米国スペースフライト社のプログラムにより、5月上旬に宇宙航空研究開発機構(JAXA)へ引き渡され、ロケットで国際宇宙ステーション(ISS)に運ばれたのち、「きぼう」日本実験棟から放出を予定しています。衛星に搭載した再帰性反射材シートに地上からレーザーを照射し、地上・衛星間を往復した反射光を地上で受光することにより、宇宙空間における反射材の特性を調べます。

【研究の詳細】
「宇宙マグロ1号」は、近畿大学と日本カーバイド工業株式会社(東京都港区)が共同開発した、反射特性を最適化した再帰性反射材シートを装着しています。これにより、地上から約400km離れた地球周回軌道上の「宇宙マグロ1号」にレーザーを照射し、反射強度の基礎データを実測します。近畿大学と共同研究を行なう国立研究開発法人情報通信研究機構(東京都小金井市、以下NICT(エヌアイシーティー))宇宙通信システム研究室協力のもと、同研究室の光地上局の大型望遠鏡から、衛星に向けてレーザーを照射し、望遠鏡の受光器で反射光を観測します。人工衛星は地上に対して秒速約8kmで移動していますが、NICTの望遠鏡設備は高速追尾が可能です。
打ち上げから約1年の運用期間中は、レーザー照射を定期的に行って反射光強度の経年変化を測定し、宇宙空間における再帰性反射材の劣化具合をモニターすることで、再帰性反射材の宇宙耐性を調査します。
また、レーザー照射のためには衛星の軌跡を知る必要があることから、「宇宙マグロ1号」には青色LEDを搭載し、その光を地上の望遠鏡で探索することで、衛星の位置を特定します。LEDの点灯周期はドミソの3和音の周波数に設定しており、周波数解析によって「宇宙マグロ1号」であることが特定しやすくなります。

【今後の展望】
本研究は、持続可能な宇宙事業開発への貢献を目指すもので、再帰性反射材によるレーザー反射の技術を応用すれば、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の回収に役立つことが期待されます。例えば、あらかじめ衛星に再帰性反射材を取り付けることで、衛星がデブリ化した場合も、地球や他の健全な衛星からレーザー照射をすることで、デブリ衛星の詳細な位置が測定でき、回収に寄与できます。また地上では、登山者が再帰性反射材を装着することで、万一遭難した場合も上空からの探索が容易になり、遭難救助システムにも応用可能です。
なお、「宇宙マグロ1号」は、学生の「超小型衛星を作りたい」という強い思いから始まったプロジェクトで、学生が自らの手で組み立てて衛星を完成させました。近畿大学における継続的な「宇宙人材」育成のため、2機目の超小型衛星の開発を目指しており、近畿大学の工学分野の研究者と宇宙科学分野の研究者が協力し、地球大気の測定や天体観測を行える超小型衛星を開発・打ち上げることで、SDGsへの貢献や宇宙の謎の解明に寄与していきます。

【再帰性反射材とは】
再帰性反射とは、光源からの光が再び光源方向へ帰る現象で、「宇宙マグロ1号」には、プリズム型の再帰性反射材を取り付けています。これは、直角三角錐型のプリズムをシート表面に並べ接着したもので、そこに入射した光はプリズム面で高輝度の再帰性反射を起こします。近畿大学と日本カーバイド工業が開発した反射材は、高精度直角三角錐のサイズを最適化することで、長距離反射伝送を実現しました。

【株式会社エクセディ】
所在地 :大阪府寝屋川市木田元宮1丁目1番1号
代表者 :代表取締役社長 久川 秀仁
設  立:昭和25年(1950年)7月1日
従業員 :16,145人(連結)※ 令和3年(2021年)3月末現在
事業内容:
マニュアルクラッチ(手動変速装置用製品)やトルクコンバータ(自動変速装置用製品)、その他、建設・産業機械用製品、二輪車用クラッチなどの駆動系部品を、世界25ヶ国にあるエクセディグループ44社で生産・販売

【日本カーバイド工業株式会社】
所在地 :東京都港区港南2-16-2
代表者 :代表取締役社長 杉山 孝久
設  立:昭和10年(1935年)10月8日
従業員 :連結3,589人、単体494人 ※ 令和4年(2022年)3月末現在
事業内容:
電子・機能製品事業、フィルム・シート製品事業、建材関連事業、エンジニアリング事業

【関連リンク】
理工学部 電気電子通信工学科 准教授 前田 佳伸(マエダ ヨシノブ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/444-maeda-yoshinobu.html
理工学部 理学科 講師 信川 久実子(ノブカワ クミコ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2460-nobukawa-kumiko.html

理工学部
https://www.kindai.ac.jp/science-engineering/

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