金融緩和修正が不動産に与える影響と広がるエリア格差

2023年の不動産市場を占う

2021年に引き続き、高水準の価格を維持した2022年の不動産市場。その年の瀬も迫った12月20日に日銀の黒田総裁が発表した金融緩和の修正に注目が集まる中、好調続きの不動産市場はどんな2023年を迎えるのか、株式会社さくら事務所会長・不動産コンサルタントの長嶋 修が予測します。

不動産市場の3極化はくっきり

日本の土地総額はバブル期の1990年代末には約2400兆円まで上がったものの、今ではその半分、約1000兆円近くまで下落。「価格維持・あるいは上昇する地域」は都心・大都市部、駅前・駅近、大規模、タワーといった利便性の高いエリアに限られ、2023年も「上がるエリア」と「下がるエリア」の格差は広がり、市場の3極化がくっきりとした輪郭を表してくるだろう。

コロナ禍需要は一段落、REITや不動産投資は影響不可避

2023年4月8日の黒田日銀総裁任期満了を待たずして0.25%の実質利上げも、要は数ヶ月タイミングが早まったのみ。今後さらに0.25%程度(トータル0.75%)までの利上げも織り込んでおくべきだろう。住宅ローン利用者の大半は政策金利の影響を受けにくい変動金利を利用しており、マイホーム分野の影響は軽微にとどまるも、コロナ禍需要は一段落。REITや不動産投資は一定の影響不可避。が、円安水準ピークと見て円転看護二言の資産に投資する動きが顕著となれば日本の資産市場に最後のバブル到来可能性も。

中古マンション価格は「管理の見える化」が影響

2022 年4 月にマンション管理適正化法が改正され、新しく「管理計画認定制度」がスタートしているが、現場の自治体ではまだ準備が整わず、本格的な始動は2023 年ともいわれる。マンションの管理計画が一定の基準を満たしていれば、マンション管理組合は地方公共団体から適切な管理計画を持つマンションとして認定を受けるため、購入者層が管理の質に着目し始めることで価格や売却価格などにも影響が出る可能性は否定できない。

空き家・実家の売却は2023年がベストタイミング

市場の3極化が進むことでなだらかに下落を続ける地域は今後も増え、都心のほんの一部の地域以外は価格競争が激しくなり安く売る方向に流れていく。また、売却する実家の価格が購入時より高額なケースでは、相続前の売却により3,000 万円特別控除が利用できて、売却時の譲渡所得税をゼロにする・圧縮できる大きなメリットがあるが、この制度の適用期限は2023(令和5)年12 月31 日までとなっている。金利上昇や在庫数増加のリスクも鑑みると、2023年は一部立地を除いて売却に適した年と言えるだろう。

不動産コンサルタント 長嶋 修(ながしま おさむ)

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。『中立な不動産コンサルタント』としてマイホーム購入・不動産投資など不動産購入ノウハウや、業界・政策への提言を行なう。ドラマ・マンガ「正直不動産」の監修をはじめ、著書・メディア出演多数。YouTubeチャンネル登録者数6.46万人

年頭所感

株式会社さくら事務所 代表取締役社長 大西 倫加(おおにし のりか)

当社が約15年手がけているマンション管理コンサルティング事業では、築年数が浅い段階で予防的・建設的な改革ご相談が急増し、対前年150%の伸長となりました。一戸建てのインスペクション領域も同様に、着工後、担当者のコミュニケーション不信、施工への不安などから工事途中から当社サービスの新築一戸建て工事チェックは対前年200%に伸長。本当の資産性とは何か、どうすれば維持向上が可能なのか、必要な選択眼や対応のための知識、ノウハウをお伝えし、購入者や所有者の方々の「かかりつけの不動産版お医者さん」「かかりつけの建築士」として伴走するべく、サービスの拡充と高い見識・倫理観をもつコンサルタント・ホームインスペクターの育成、信頼に足る情報発信に努めてまいります。

当社さくら事務所グループであるらくだ不動産、また防災情報やサービスを提供するシンクタンクだいち災害リスク研究所では、生活者にとって重要な判断材料をすべて適切に提示・アドバイスでき、利用者利益を最大化できるエージェント制仲介の普及・拡大と、プレイヤー教育にも注力していきます。

当社創業者より社長交代のバトンを受けて10年の節目となる今年、実務はもちろん経営体制も若手へのより一層のシフトを進め、ネクストステージへの基盤づくりを行います。才能や個性に最適化した職種や役割をカスタマイズする、当社独自の「まかない採用」スタイルをさらに広げ、ウェルビーイングな事業・サービス・働き方を進化させたい。2023年もご利用者、当社、仲間、業界、社会すべてがより良くなる「五方良し」を唯一の行動基準・ルールとして、人と不動産のより幸せな関係を追求してまいります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

■不動産の達人 株式会社さくら事務所■

東京都渋谷区/代表取締役社長:大西倫加
https://www.sakurajimusyo.com/
株式会社さくら事務所は「人と不動産のより幸せな関係を追求し、豊かで美しい社会を次世代に手渡すこと」を理念として活動する、個人向け総合不動産コンサルティング企業です。1999年、不動産コンサルタント長嶋修が設立。第三者性を堅持した立場から、利害にとらわれない住宅診断(ホームインスペクション)やマンション管理組合向けコンサルティング、不動産購入に関する様々なアドバイスを行う「不動産の達人サービス」を提供、約60,000組を超える実績を誇っています。

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