連合調べ 「ネット受注をするフリーランスとして働く中で トラブルを経験したことがある」遭遇率は50.6% 経験したトラブルTOP2は「不当に低い報酬額の決定」 「納期や技術的になど無理な注文」
~ネット受注をするフリーランスに関する調査2020~
急速に増加する雇用と自営の中間的な働き方や、業務委託、請負、フリーランスなど、従来の労働関係法令では保護の対象とならない「曖昧な雇用」で働く就業者の保護が喫緊の課題となっています。とりわけ、IT化の進展によるインターネットを通じて仕事を仲介するサービスなどが広がり、インターネット上のサービスを介して仕事を受注する働き方をしているフリーランス(以下、「ネット受注をするフリーランス」)が増えています。
そこで、日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:神津 里季生)は、ネット受注をするフリーランスの意識や実態を把握するため、「ネット受注をするフリーランスに関する調査」を2020年1月22日~1月24日の3日間でインターネットリサーチにより実施し、インターネット上のサービスを介して仕事を受注する働き方をしている全国の20歳以上のフリーランス1,000名の有効サンプルを集計しました。(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)
[調査結果]
ネット受注をするフリーランスの働き方
◆ネット受注をするフリーランスの働き方 「専業」37.5%、「副業」44.8%、「複業」17.7%
◆ネット受注をするフリーランスが取り組んでいる仕事 1位「データ入力」2位「文書入力」3位「添削、校正」
◆「クラウド・ソーシング事業者を利用している」70.7%、利用率が高いのは30代や副業のフリーランス
インターネット上のサービス(マッチングサイトやアプリ、自身のFacebookやブログのページ等)を介して仕事を受注する働き方をしている全国の20歳以上のフリーランス(以下、「ネット受注をするフリーランス」)1,000名(全回答者)に、自身の働き方について質問しました。
まず、ネット受注をするフリーランスとしての働き方を、どのような位置づけで行っているか聞いたところ、「専業である」は37.5%、「本業は別にあり、副業として行っている」は44.8%、「本業を決めず複数就業の一つとして行っている」(以下、「複業」)は17.7%となりました。
世代別にみると、20代~40代では「本業は別にあり、副業として行っている」(20代54.3%、30代53.2%、40代49.3%)、50代以上では「専業である」(50代48.2%、60代以上42.1%)が最も高く、世代によって取り組み方に違いがみられる結果となりました。
自身の世帯の状態を聞いたところ、「自分が主たる家計支持者で、この働き方の仕事が主な収入源である」は40.4%、「自分が主たる家計支持者であるが、主な収入源は他にある」は37.4%、「自分以外の家族の収入が、世帯の家計を支えている」は22.2%となりました。
また、どのような内容の仕事に従事しているか聞いたところ、「データ入力作業」(29.8%)が最も高く、次いで、「文書入力、テープ起こし、反訳」(17.7%)、「添削、校正、採点」(12.2%)、「原稿・ライティング・記事等執筆業務」(6.6%)、「取引文書作成」(6.4%)となりました。
働き方改革の一環として副業が推進される中、インターネット上で仕事を受けたり依頼したりできるクラウド・ソーシングサービスが注目されています。では、どのくらいの人が利用しているのでしょうか。
全回答者(1,000名)に、クラウド・ソーシング事業者を利用しているか聞いたところ、「利用している」は70.7%、「利用していない」は29.3%となりました。
「利用している」と回答した人の割合を世代別にみると、最も高かったのは30代(84.1%)でした。
働き方別にみると、クラウド・ソーシング事業者を利用していると回答した人の割合が最も高くなったのは副業(85.9%)で、大部分の人が利用している実態が明らかとなりました。
◆ネット受注をするフリーランスの就業実態 労働日数は平均3.7日/週
専業は平均4.4日/週、副業は平均3.1日/週、複業は平均3.8日/週
次に、全回答者(1,000名)に、ネット受注をするフリーランスとしてどのくらい仕事をしているか質問しました。
まず、1週間あたり、平均何日働いているか聞いたところ、「2日」(16.3%)や「3日」(17.4%)、「5日」(24.3%)との回答が多く、平均は3.7日でした。
働き方別にみると、専業と複業では「5日」(専業38.7%、複業21.5%)、副業では「2日」(23.0%)が最も高くなり、平均はそれぞれ専業4.4日、副業3.1日、複業3.8日でした。
1日あたり、平均何時間働いているか聞いたところ、「2時間未満」(26.1%)や「2時間以上~4時間未満」(21.4%)、「4時間以上~6時間未満」(21.3%)に回答が集まり、平均は4.5時間でした。
働き方別にみると、専業では「6時間以上~8時間未満」(29.6%)、副業と複業では「2時間未満」(副業39.3%、複業29.9%)が最も高くなり、平均はそれぞれ専業6.2時間、副業3.2時間、複業4.2時間でした。
また、通算で何年くらい仕事をしているか(中断がある場合はその期間を除いて)聞いたところ、「1年未満」(14.5%)や「5年」(16.8%)、「10年以上」(16.1%)などに回答が分かれ、平均は4.7年でした。
働き方別にみると、通算の経験年数の平均は、専業6.4年、副業3.5年、複業4.0年で、専業のフリーランスで働く人が最も長くなりました。
◆ネット受注をするフリーランスの平均月収 専業168,600円、副業60,201円、複業85,960円
さらに、全回答者(1,000名)に、現在の働き方で得られる月収(税込)の平均を聞いたところ、「~50,000円」(40.8%)に最も多くの回答が集まったほか、「50,001円~100,000円」(25.2%)や「300,001円~」(9.9%)にも回答がみられ、平均は105,410円でした。
働き方別にみると、専業では「300,001円~」が23.2%となった一方、「~50,000円」は19.7%、「50,001円~100,000円」は20.0%となりました。副業では「~50,000円」(56.9%)に半数以上の回答が集まったほか、「50,001円~100,000円」は29.2%となり、複業では「~50,000円」(44.6%)に多くの回答が集まったほか、「50,001円~100,000円」は26.0%となりました。月収の平均をみると、専業168,600円、副業60,201円、複業85,960円と、専業のフリーランスが最も高くなりました。
また、専業のフリーランスについて世代別にみると、20代・30代では「~50,000円」(20代34.1%、30代26.7%)、40代以上では「300,001円~」(40代28.1%、50代29.0%、60代以上26.2%)に最も多くの回答が集まり、世代によって月収額に差がみられる結果となりました。
◆ネット受注をするフリーランスとしての働き方を選んだ理由
TOP2「収入を増やしたかった」「自分のペースで働く時間を決められる」
全回答者(1,000名)に、ネット受注をするフリーランスとして働くことを選んだ理由を聞いたところ、「収入を増やしたかったから」(44.9%)や「自分のペースで働く時間を決めることができるから」(42.0%)が高く、以降、「働きたい仕事内容を選べるから」(22.3%)、「自分の夢の実現やキャリアアップのため」(19.8%)、「働く地域や場所を選べるから」(19.4%)が続きました。収入アップや自身に合った働き方を重視している人が多いようです。
世代別にみると、20代では「収入を増やしたかったから」(50.4%)や「自分の夢の実現やキャリアアップのため」(25.6%)、60代以上では「自分のペースで働く時間を決めることができるから」(49.0%)や「専門的な技術や資格を活かせるから」(24.8%)、「雇用されない立場で働きたいから」(16.6%)がそれぞれ他の世代と比べて高くなりました。
ネット受注をするフリーランスが抱える不安・トラブル
◆「ネット受注をするフリーランスとして働く上で不安に思うことがある」80.9%、30代では91.5%
◆不安に思うこと 最多は「収入が不安定」、「報酬額や条件の一方的な変更」「失業手当がない」が上位に
全回答者(1,000名)に、ネット受注をするフリーランスとして働く上で感じる不安について質問しました。
まず、どのくらいの人が不安に思っているのかみると、「不安に思うことがある」は80.9%、「不安に思うことはない」は19.1%と、多くの人が何かしらの不安を抱えて仕事をしていることがわかりました。
世代別にみると、不安を感じている人の割合が最も高かったのは30代で91.5%でした。
では、どのようなことを不安に感じているのでしょうか。
ネット受注をするフリーランスとして働く上で不安に思うことがある人(809名)に、不安に思っていることを聞いたところ、「収入が不安定、低い」(48.2%)が最も高く、次いで、「納期や技術的になど無理な注文を受ける可能性がある」(22.7%)、「報酬がきちんと支払われるかわからない」(22.1%)、「報酬額や条件がクラウド・ソーシング事業者や発注者に一方的に変更される可能性がある」(21.1%)、「仕事がない場合、失業手当のような保障がない」(20.4%)となりました。収入が不安定であること以外に、無理難題ともとれる注文をされることや報酬の支払いに対して不安を抱いている人が多いようです。
◆「事業者や発注者とのトラブル時の取り扱いを決めずに受注」クラウド・ソーシング非利用者の60.4%
全回答者(1,000名)に、インターネット上のサービスを介して受注した仕事をする際の条件について、クラウド・ソーシング事業者や発注者と約束を取り交わしているか質問しました。
まず、業務内容や契約、トラブル発生時の取り扱いについてみると、「取り交わしていない」と回答した人の割合は、<業務内容>では20.3%、<契約期間、納期>では22.7%、<契約途中での契約解除の方法>では31.6%、<契約途中での契約解除時の補償の有無>では37.0%、<クラウド・ワーキング事業者や発注者とのトラブルの場合の取り扱い>では36.3%となりました。
クラウド・ソーシング事業者の利用状況別にみると、クラウド・ソーシング事業者を利用していない人では、「取り交わしていない」と回答した人の割合は、<契約途中での契約解除の方法>では50.5%、<契約途中での契約解除時の補償の有無>では56.0%、<クラウド・ワーキング事業者や発注者とのトラブルの取り扱い>では60.4%と、いずれも半数以上となりました。クラウド・ソーシング事業者を利用せずにインターネット経由で仕事を受注しているフリーランスでは、契約途中での契約解除やトラブル発生時の取り扱いについて、約束を取り交わしていない人が多いようです。
報酬の支払いや経費負担についてみると、「取り交わしていない」と回答した人の割合は、<報酬額、報酬決定方法>では19.2%、<報酬の支払い期日>では19.4%、<報酬の支払い方法(一括、分割、前金など)>では19.3%、<経費の負担>では31.3%となりました。
すべての項目において、「業務開始前に書面で」と回答した人の割合は半数未満となっています。多くの人が、事前に書面で約束の内容を確認せず、約束が不十分なまま仕事を受注しているという実態が明らかとなりました。
では、業務内容や契約、トラブル発生時の取り扱いなど、仕事を受ける際に取り交わされる約束の内容はどのように決定されたのでしょうか。
全回答者(1,000名)に、仕事を受ける際に取り交わされる約束の内容の決め方を聞いたところ、「自身と発注者の双方で協議の上、決定した」(35.3%)が最も高くなりましたが、「発注者が一方的に決定した」(20.8%)というケースも少なくないことがわかりました。
◆「報酬の支払いについてクラウド・ソーシング事業者とやり取りをする」クラウド・ソーシング利用者の51.9%
受注した仕事をする際、仕事の詳細や遂行に関して、誰から指示や命令を受けたり、誰とやり取りをしたりしているのでしょうか。
クラウド・ソーシング事業者を利用している人(707名)に、受注した仕事をする際、誰から指示や命令を受けたり、誰とやり取りをしたりしているか聞いたところ、<報酬の支払い>では「クラウド・ソーシング事業者」が51.9%で、「発注者」(38.9%)よりも高くなりました。一方、報酬の支払い以外の内容については「クラウド・ソーシング事業者」と比べて「発注者」のほうが高く、「発注者」と回答した人の割合は、<仕事の内容・範囲の指示>では47.2%、<仕事を行う日・時間の指示>では47.5%、<仕事の納期の指示>では49.5%、<仕事を行う場所の指示>では41.7%、<仕事終了の報告>では44.7%でした。
◆「ネット受注をするフリーランスとして働く中でトラブルを経験したことがある」遭遇率は50.6%
◆経験したトラブルTOP2は「不当に低い報酬額の決定」「納期や技術的になど無理な注文」
続いて、全回答者(1,000名)に、ネット受注をするフリーランスとして働く中で経験したトラブルについて質問しました。
まず、トラブルになった経験があるかどうかをみると、「トラブルになった経験がある」は50.6%、「トラブルの経験はない」は49.4%で、両者が拮抗する結果となりました。
世代別にみると、トラブルになった経験がある人の割合は若い世代ほど高く、最も高くなった20代では71.3%でした。
クラウド・ソーシング事業者の利用状況別にみると、トラブルになった経験がある人の割合は、クラウド・ソーシング事業者の利用者では55.6%と、半数以上の人に何らかのトラブルの経験があるようです。
では、どのようなトラブルを経験した人が多いのでしょうか。
トラブルになった経験がある人(506名)に、トラブルの内容を聞いたところ、「不当に低い報酬額の決定」(24.9%)や「納期や技術的になど無理な注文」(24.1%)が高く、次いで、「報酬の支払いの遅延」(20.9%)、「報酬の不払い、過少払い」(20.8%)、「一方的な報酬額の引き下げ」(19.0%)となりました。対価として見合わない額を提示されたり、無理難題を押しつけられたりしたというケースが多いようです。
クラウド・ソーシング事業者や発注者と約束を取り交わしていたにも関わらず、トラブルを経験したという人はどのくらいいるのでしょうか。ここで、経験したトラブルとして上位2位に挙がった<不当に低い報酬額の決定>と<納期や技術的になど無理な注文>について、約束の取り交わし方によってトラブルの遭遇率にどのくらい差があるのかみてみました。
「報酬額、報酬決定方法」について約束を取り交わしている人が<不当に低い報酬額の決定>というトラブルを経験した人の割合は、クラウド・ソーシング事業者利用者中、業務開始前に書面で約束を取り交わしている人では8.4%だったのに対し、業務開始前に口頭で約束を取り交わしている人では24.2%、業務終了後に書面で約束を取り交わしている人では20.2%、業務終了後に口頭で約束を取り交わしている人では32.3%でした。業務開始前にきちんと書面のかたちで報酬に関する内容を明確にしておくことで、報酬額を不当に低くされるといったトラブルを避けることができているようです。
<納期や技術的になど無理な注文>というトラブルに関しても、トラブルを経験した人の割合は、クラウド・ソーシング事業者利用者中、「業務内容」について業務開始前に書面で約束を取り交わしている人では8.9%、「契約期間、納期」について業務開始前に書面で約束を取り交わしている人では8.6%と、どちらもそれ以外の約束の取り交わし方をしている人よりも低くなりました。
◆経験したトラブルへの対処方法 報酬の支払いの遅延に対しては「発注者に直接交渉」が最多
経験したトラブルに対しては、どのような対処をした人が多いのでしょうか。
提示したトラブルをそれぞれ経験した人に、トラブルを経験した際にどのような対処をしたか聞いたところ、<不当に低い報酬額の決定>と<一方的な報酬額の引き下げ>では「第三者(行政機関、労働組合など)に相談した」(それぞれ31.7%、42.7%)、<報酬の不払い、過少払い>では「クラウド・ソーシング事業者に連絡・交渉した」(36.2%)、<納期や技術的になど無理な注文>と<報酬の支払いの遅延>では「発注者に直接交渉した」(それぞれ32.8%、57.5%)が最も高くなりました。
◆ネット受注をするフリーランスとして働く上で最も受けたい保護の内容 1位「最低報酬額」
ネット受注をするフリーランスとして働く上で、どのような保護を受けたいか、最も優先度の高いものを聞いたところ、受けたいと思う保護の中では、「最低報酬額(最低賃金)」(16.5%)が最も高く、以降、「労働安全衛生法に基づく危険または健康障害を防止するための措置」(11.3%)、「報酬の受け取り確保」(10.1%)、「契約期間途中の一方的な理由による解約の制限」「一日あたりの最長作業時間・拘束時間の上限設定」(いずれも9.0%)が続きました。報酬に対する手当や補償が期待されていることがわかりました。
ネット受注をするフリーランスの満足度
◆ネット受注をするフリーランスの満足度 総合満足度は48.6%、収入満足度では「不満」が「満足」を上回る
◆自身と同じ働き方をする人たちとつながるネットワーク 「現在はないが、必要だと思う」54.3%
ネット受注をするフリーランスとしての働き方については、どのくらい満足しているのでしょうか。
全回答者(1,000名)に、ネット受注をするフリーランスとしての働き方の満足度を聞いたところ、<全体としての満足度>については、「大いに満足している」は11.1%、「やや満足している」は37.5%で、合計した『満足(計)』は48.6%、「やや不満である」は9.2%、「大いに不満である」は3.7%で、合計した『不満(計)』は12.9%となりました。『満足(計)』が『不満(計)』を大きく上回っており、納得して今の働き方をしている人が多いようです。
世代別にみると、『満足(計)』と回答した人の割合は、20代(53.5%)と50代(51.4%)で半数以上となりました。
具体的な内容について満足度(『満足(計)』と回答した人の割合、以下同じ)をみると、<労働時間>では46.2%、<自由に使える時間、休日>では52.9%となりました。自身の裁量で仕事を進められるためか、自由時間や休日の確保の仕方など、時間の使い方に満足している人が多いことがわかりました。
収入についての満足度をみると、<収入・報酬額の多さ>では『満足(計)』は27.8%、『不満(計)』は31.3%、<収入・報酬の安定度合い>では『満足(計)』は29.7%、『不満(計)』は31.7%と、どちらも『不満(計)』が『満足(計)』を上回りました。
仕事上の責任や裁量、やりがいなどについての満足度をみると、<仕事上の責任>では43.7%、<仕事の裁量度合い>では44.7%、<仕事のやりがい>では48.7%、<仕事に関わる能力や知識を高める機会>では40.7%、<人間関係>では43.2%と、いずれも半数に届かない結果となりました。
最後に、全回答者(1,000名)に、同じような働き方をする人たちと情報交換・共有ができるネットワークはあるか、また、必要だと思うか聞いたところ、「ネットワークがある」は27.9%、「ネットワークはないが、必要だと思う」は54.3%となりました。現時点ではネットワークはないものの、必要性を感じている人は多いようです。