下着のカリスマで辛口エッセイスト 鴨居羊子没後30年 悩める女性を甘やかさない「人生相談」が待望の書籍化

株式会社PHP研究所(京都市南区・代表取締役社長 清水卓智)は、2020年8月31日に『鴨居羊子の生き方百科』を発売しました。鴨居羊子は、昭和の女性下着に革命を起こした日本初の下着専門デザイナーです。カラフルで大胆でコケティッシュな下着で時代を切り拓き、プロデュースや文筆などマルチな才能を発揮しました。本書は、毎日新聞に連載された人生相談「生き方百科」に、鴨居羊子が寄せた名回答を初めて書籍化するものです。2021年の「鴨居羊子没後30年」を記念して刊行いたします。

『鴨居羊子の生き方百科』表紙
『鴨居羊子の生き方百科』表紙

没後30年を機にリバイバル

元大阪読売新聞の記者時代に外国製ガーターベルトと出合い、下着デザイナーに転身した鴨居羊子。従来の下着観と女性の身体を偏見から解放したことで「下着の革命家」と称されています。映画監督、画家、エッセイストなどとしても活躍し、司馬遼太郎、今東光、岡本太郎らとの交流も深く、作品はもちろん、その発言から暮らしぶりまで「格好いい女性の生き方」として注目されました。

鴨居羊子(1925〜1991)
鴨居羊子(1925〜1991)

本書の企画・構成を担当した作家でコピーライターの大谷峯子氏は、学生時代に友人の母親が新聞を手に「やっぱり、鴨居さんの回答は違うわあ……」と感心していたことが印象的だったといいます。その忘れられない光景の新聞記事が、毎日新聞の連載人生相談「生き方百科」でした。鴨居羊子が回答者を担当したのは1976年から1979年まで。当時の紙面をやっと探し当てたところ、真摯で時代を経ても古びないとっぽさがある内容に驚き、このたび上梓の運びとなりました。2021年の没後30年を機に刊行する本書には、184回分の記事の中から厳選した99編を収録しています。

時代を超えて「カモイズム」に寄せられる共感の声

不倫、夫の浮気、結婚、離婚、嫁姑、ママ友、貧困、将来への不安等、昭和から平成、令和へと時代は変わっても、女性の悩みは尽きないものです。鴨居羊子の生き方・考え方「カモイズム」は、年齢も立場もちがう女性たちそれぞれに受け入れられています。

高岡早紀(女優)

ドラマで鴨居さんの衣装に触れてから、その独特な感性と人生観に心が震えました。悩める方の必読書です。
(帯文より)

江國香織(作家)

この人が新聞の悩み相談欄を受け持っていたことを私は知らなかったのだが、まったくぴったりの人選だと思う。
(巻頭寄稿より)

上野千鶴子(社会学者)

専業主婦率は戦後最高となり、女は結婚しなくては生きていけず、結婚退職はあたりまえだった。今とは違う。それを前提に本書を読んでもらいたい。(中略)いったい誰が鴨居さんを回答者に起用しようと考えたのだろう? 「生き方百科」というネーミングにも、担当者の心意気があらわれているような気がする。「人生、いろいろあるよ、とらわれないで」と。
(巻末寄稿より)

『鴨居羊子の生き方百科』について

著者のこと

鴨居羊子(かもい・ようこ)
1925〜1991年。下着デザイナー、エッセイスト、画家、人形デザイナー、絵本作家、など多くの肩書を持つ。大阪府生まれ。北國毎日新聞勤務の父親の転勤で、金沢、朝鮮京城(現・ソウルで少女時代を過ごす。戦争さなかに密かにカトリックの洗礼を受ける。大阪府女子専門学校(現・大阪府立大学)国文科を卒業。

兄を戦場で、父も戦後に亡くしたため、新聞社に勤務し、明治生まれの厳格な母と、画学生の弟(のちに画家の玲)を支える。大阪読売新聞記者時代に、舶来のピンクのガーターベルトとの出合いから、下着デザイナーを志し、1955年、チュニック制作室(のち、チュニック株式会社)を創業。司馬遼太郎、今東光、岡本太郎などとの交流と時に協力を得て、各地で下着ショーを開催。また1958年、映画『女は下着で作られる』を監督。カラフルで大胆でコケティッシュな下着で、従来の下着観と女性の身体を、偏見から解放、「下着の革命家」となった。また、料理、フラメンコなど、その興味と情熱の対象は多岐にわたり、動物、ことに犬や猫への愛情は、多くのエッセイや絵画に描かれている。

『下着ぶんか論』(凡凡社)、『わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい』(三一書房/旺文社文庫/ちくま文庫)、『のら猫トラトラ』(人文書院/旺文社文庫)など、著書多数。没後も熱烈なファンは多く、『鴨居羊子コレクション』(国書刊行会)などの出版、岡本太郎美術館ほかでの展覧会、TVドラマや芝居に描かれるなど、再評価が高まっている。

相談と回答の一例

14歳から75歳まで、老若男女の「対女性」「男女関係」の相談と回答を収録。中学生にも容赦なく、年長者に媚びることもない「鴨居羊子節」は、歯に衣着せずブレることがありません。

Q.別れようとも思うのですが、子供を継母に育てさせるのがいやで、ふんぎりがつきません。

A.あなたの弱さを見ぬいて、アグラをかいてしまったご主人は、あなたが強くなってもあなた見直す力をもう見失っています。勇気をもって、子供とともに自立する決心をすることです。

Q.友人にライバル意識をもち、自分中心でないと気がすみません。広い心の人になりたい。

A.自慢するのが好きで、自己中心でない人間がありましょうか? 世界の中心は自分だという自負があればこそ、母は子を育て、芸術家はものをつくり得るのです。

Q.冷たい家族に囲まれ、私に万一のことがあったら、一体だれが死に水をとってくれるのか。

A.「死に水云々」といった生きる戦いを捨てた言葉に、自分をも、家族をもおとしこまないように。くれぐれも申しますが、自分を思い入れよろしく、悲劇の主人公に仕立ててしまわないように。

Q.他人と比較ばかりしているひがみっぽい自分がいやでたまりません。

A.……こんな私でも、学校時代は成績も上位で、先生方には優等生で通っていたのです。以前が以前ですから、この苦しみに耐えられず……とは恐れ入りました。自己分析をしているようなふりをして、自慢とうぬぼれがぬけぬけと続くのは、鼻もちなりませんよ。

Q.あまりのスピード結婚に不安なのです

A.いずれにせよ、あなたはこの結婚を承諾なさったはずです。そうだとしたら、なぜもう少し交際できたら人柄がわかるとおっしゃるのですか。

Q.同僚にいやなうわさをたてられます

A.どんな抗議をしたらよろしいか? というオンネンめいた考えを、ポンとすて去ることが第一。(中略)どんな女の人にも必要なのは、自己の心の中に「遊びの別世界」を一つでも多くつくることです。

Q.結婚後、夫の態度が急変した

A.私達はみんな、何かかにか気に入らぬ中で生きているのです。でも、その中で闘って、自分のいいと思う方向へ動いてゆく、自分を築いてゆくのが人生だと思うのです。

※本書は、毎日新聞に連載された人生相談のコラム「生き方百科」のうち、鴨居羊子が回答者として担当した1976〜1979年までの掲載分からセレクトしたものです。一部に現在では一般的でない表現がありますが、著者の表現を尊重し、できるかぎり原文のままとしました。

書誌情報

タイトル:鴨居羊子の生き方百科
著者:鴨居羊子
判型:四六判並製
定価:1,600円+税
発売日:2020年8月31日
ISBN:978-4-569-84745-0
発行所:PHPエディターズ・グループ
発売元:PHP研究所


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