NTTデータ経営研究所が 「地域における外国人との関わりに対する意識調査」を実施
~外国人との関わりを日常生活の延長線上に創出することが関係構築のカギに~
株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:山口 重樹、以下 当社)は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本 良江)が提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に「地域における外国人との関わりに対する意識調査」(以下 本調査)を実施しました。
本調査では、日本に居住する外国人が増加している背景を踏まえ、10代以上の国内在住の日本人を対象に、「外国人住民との関わりに対する実態」と「今後関わっていくことに対する意識」について調査を行いました。調査の結果、以下のことが明らかとなりました。
主なポイント
- 外国人住民との関わり:5人に1人は日常的な関わりを持っており、地域との関わりが深い人ほど関係を構築している。日常生活を通じたきっかけが多い傾向に。
- 外国人住民の増加に伴う期待と不安:外国人住民との関わりに「多様性社会の実現」を期待する人が多い。一方で、外国人と関わる経験を持つ人ほど、期待だけでなく不安も抱いている傾向に。
- 外国人住民と関わることへの意向:外国人かどうかに関わらず、近隣住民と関わることに消極的な傾向。趣味・SNS・近所づきあい・地域活動といった日常生活の延長線上に外国人住民との関係構築の可能性を見いだせる。
調査概要
調査期間 : 2024年1月5日~2024年1月10日
調査方法 : 非公開型インターネットアンケート
(NTTコム リサーチ クローズド調査)
調査対象 : 10代以上の日本国内在住の日本人
調査機関 : 株式会社NTTデータ経営研究所
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
有効回答者数 : 1,088人
調査結果(調査レポート): https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/research/240523
背景
1990年に入管法が改正されて以降、日本の在留資格を保有する外国人の数は、1990年の1,075,317人から2023年末には3,410,992人[1]と、急激に増加しています。また、国立社会保障・人口問題研究所によると、総人口は2020年の1億2,615万人から2070年には約3割減少し8,700万人となり、このうち10.8%を外国人が占めると推計されています[2]。
今後、外国人住民の増加に伴い、これまで以上に外国人と日本人の関わりが増えることが予測され、双方が同じ地域で安心して暮らしていくための工夫が求められるようになります。
当社では、このような背景を踏まえ「日本人側の外国人住民との関わりに関する実態」と「今後外国人住民と関わっていくことに対する意識」について調査・分析し、地域における外国人住民との共生社会構築の可能性について考察した調査レポートを公開しました。
[1]「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表」(出入国在留管理庁)
( https://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_touroku.html )
[2]「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)
( https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp )
調査結果ハイライト
- 外国人住民との関わり:5人に1人は日常的な関わりを持っており、地域との関わりが深い人ほど関係を構築している。日常生活を通じたきっかけが多い傾向に。
日常的な外国人住民との関わりを調査したところ、3人に1人が自身の身の回りで外国人住民の増加を実感しており、5人に1人は外国人住民と日常的な関わりを持っていることが分かりました。中でも、近隣住民と親しい人や地域の活動に参加する人の方が、そうでない人に比べて、日常的に関係を構築している傾向があることが分かりました(図1)。
外国人住民と関わることになったきっかけは、「近隣で顔見知りから」「職場」の順に多く、「国際交流イベント」「ボランティア活動」「言語交換・語学教室」といった外国人の参加が前提としたきっかけよりも、日常生活を通じた関係構築の方が多い傾向にあることが分かりました(図2)。
- 外国人住民の増加に伴う期待と不安:外国人住民との関わりに「多様性社会の実現」を期待する人が多い。一方で、外国人と関わる経験を持つ人ほど、期待だけでなく不安も抱いている傾向に。
今後、日本に住む外国人が増えることについての期待として「多様性社会の実現につながる」とする回答が最も多く、不安の観点では「治安への影響」に対する回答が最も多い結果となりました(図3)。
外国人住民が増加することに対して「多様性社会の実現につながる」と期待している人に着目すると、地域との関わりが深い人や外国人住民との日常的な関わりがある人の方が多いことが分かりました。また、「治安への影響」に不安があると回答した人でも同様の結果であったことから、地域との関わりが深い人や外国人住民との日常的な関わりがある人の方が、期待だけでなく不安も感じている傾向にあることが分かりました(図表4)(図表5)。
- 外国人住民と関わることへの意向:外国人かどうかに関わらず、近隣住民と関わることに消極的な傾向。趣味・SNS・近所づきあい・地域活動といった日常生活の延長線上に外国人住民との関係構築の可能性を見いだせる。
外国人住民と関わりを持ちたくないと回答した人は全体の半数以上となりました。外国人住民と関わることに対して消極的な理由を聞いたところ、「外国人かどうかに関係なく近隣住民と関わりたくない」と回答した人が最も多く、外国人に関わらず近隣住民との関わりに対して消極的である傾向がうかがえる結果となりました(図6)。
外国人住民と関わりを持つことができそうな場面については、「個人的な友人」「近所づきあい」「趣味をテーマにした集まり」といった日常生活を通じた場面が多く挙げられ、「ボランティア等による外国人住民の支援」「言語交換・語学教室」「国際交流イベント」など、外国人が参加することを前提とした場面の回答は比較的少ない結果となりました(図7)。
結論
近年の外国人住民の増加を背景に、3人に1人が外国人住民の増加やその影響を実感しており、5人に1人は外国人住民と日常的な関わりを持っていることが明らかとなりました。特に、近隣住民と親しい人や地域の活動に参加する人の方が、そうでない人に比べて、日常的な関係を構築しており、外国人住民と関わることになったきっかけとして、「国際交流イベント」「ボランティア活動」「言語交換・語学教室」といった外国人との交流を目的としたきっかけより、日常生活を通じた関係構築の方が多い傾向にあることが明らかになりました。さらに、外国人住民と関わりを持つことができそうな場面として、「個人的な友人」「近所づきあい」「趣味をテーマにした集まり」といった日常生活を通じた場面が多く挙げられ、「ボランティア等による外国人住民の支援」「言語交換・語学教室」「国際交流イベント」などの回答は比較的少ない結果となりました。
これらの調査結果から、外国人住民との関わりを持つきっかけを日常生活の中で生むことがカギになると考えられます。さらに、日常生活のなかでも、属性によって、地縁的なつながりや趣味を通じたつながりなど、きっかけの意向が異なる傾向にあることから、外国人住民との共生社会の実現に向けて活動する各団体は、こうした日本人側の意識を念頭に施策を検討することが重要になります。
また、すでに外国人と日常的な関わりをもつ人は、そうでない人に比べて、外国人住民の増加に伴う影響に不安を抱いていることが明らかになりました。単に関わりを創出するだけでは不安を助長する恐れもあることから、不安の要因や不安を抱くようになるまでのプロセスを明らかにしたうえで、適切な施策を講じることが求められます。
当社では、本調査を通じて得た知見やノウハウを生かし、外国人と日本人の双方が同じ地域で安心して暮らしていける共生社会の実現に寄与するべく、自治体や各種団体における課題解決の支援や各種コンサルティングサービスに取り組んでまいります。