コロナ禍で変化したこと・しないこと ~生活者はどう感じ、どこに向かうのか~

都市生活者意識調査(速報版) ※首都圏約4000名の意識調査より

<ポイント>
コロナ禍は、人々の行動と価値観を大きく変化させた。生き方をも再考させた。
生活満足度は大きく低下し、この先も暫く低迷が続くと見ている。欲張らずに、ただフツーの暮らしができればよい。
命は自ら守る、生きていくための労働を再考するなど、自己防衛本能が高まっている。

<本レポートの構成>
「コロナ禍は生活をどう変えたのか…」
1.コロナ前(2019年)とコロナ後(2020年)、生活者意識の変化
2.コロナによって始まった、新たな日常・新たな気づき
3.コロナは仕事を変えた&考えさせる機会を与えた
上記の3つの視点にそって、調査結果を紹介する形でレポートいたします。

<都市生活者意識調査の実施概要の紹介>
◆公益財団法人ハイライフ研究所は、2011年より、「都市生活者意識調査」を実施いたしております。毎年、秋に調査を実施し、年内に回収集計を行い、翌年春にかけて分析を行っております。(調査結果はデータ編と分析編に分けて刊行致しております)
※調査の実施概要は最終頁に記載
◆質問内容は、固定化して毎年の変化を見極めるための基本的な質問と、その年に起きた大きな事象に関するトピックス的な質問に大別されます。この度のレポートは、これら両局面からの分析を行いました。
(基本的な質問)   生活満足度、幸せ感・幸福度、生きがい・楽しみ、人付き合い、家族、コミュニケーション、職業、収入と支出、ストレス、健康、購買行動、居住、将来と老後、他
(トピックス的な質問)新型コロナウイルスの情報を見聞きしてとった行動、コロナ禍により新たに取り組んだこと、コロナ禍による制約された暮らしの中での新たな発見・気づき、他        
◆2020年、新型コロナウイルスは都市生活者にどのように影響を及ぼしたのか、且つ2019年との行動の違い、意識の変化について注目し、新型コロナウイルス関連の調査結果に絞り、速報版という形式でレポートいたします。

1.コロナ前(2019年)とコロナ後(2020年)、生活者意識の変化

①確実に低下した生活満足度…
●全体、男女別、年代別に2019年度と比較しても、全てにおいて下回るのが2020年度。
●コロナ禍は特定の層ではなく、全てに生活満足の低下をもたらしました。

※上記の図表1 中の得点について: 生活満足度に関して、「満足(+4)」「やや満足(+3)」「やや不満(+2)」「不満(+1)」の4段階の評価の平均を示しています。 2020年度と2019年度の各々の平均の差のt検定(5%)の結果、全体、男性、女性、50代において有意でした。

②過去(1年前)との比較、未来(2、3年後)への展望
●「1年前と比較した生活水準」は同一本人における前年との比較を行っています。2020年度において前年と比べて生活水準は低下していることを実感していると言えます。その中で60代70代の高齢層は比較的スコアの差が小さいと言えます。

※上記の図表2 中の得点について: 1年前と比較した生活水準に関して、「良くなっている(+5)」「やや良くなっている(+4)」「変わっていない(+3)」「やや悪くなっている(+2)」「悪くなっている(+1)」の5段階の評価の平均を示しています。2020年度と2019年度の各々の平均の差のt検定(5%)の結果、全体合計、男性、女性、20代、30代、40代、50代において有意でした。

●「2~3年後の生活展望」においては、2020年のスコアが2019年とほぼ同じです。つまり、2020年から2~3年後となるとコロナ禍の収束していることを想定して回答されると考えられますが、コロナが終息しても生活が「今まで以上に良くなるということではない」という、冷静な見方/将来への期待の希薄さを反映しているのかもしれません。更に20代においては、2019年度よりも有意に低く、コロナ終息後に生活展望が持てると考える人が減少しています。

※上記の図表3 中の得点は、2~3年後の生活展望に関して、「良くなっていると思う(+5)」「やや良くなっていると思う(+4)」「変わらないと思う(+3)」「やや悪くなっていると思う(+2)」「悪くなっていると思う(+1)」の5段階の評価の平均を示しています。 2020年度と2019年度の各々の平均の差のt検定(5%)の結果、男性20代のみにおいて有意でした。

➂生活分野の満足度
●生活満足度の低下をさらに詳細にみると、どの領域なのかをみましょう。本調査では、「衣」「食」「住」に加えて、「買い物・消費」「仕事・学業」「遊び・余暇」「健康」「美容」「医療」「人づきあい」「学び・学習」、合計11の領域について満足度を調べています。
●下図にあるように、「遊び・余暇」が2.73→2.58に、「人づきあい」が2.70→2.63に低下しています。コロナ禍において外出の自粛やイベントの中止(無観客開催)など、日常的・非日常的に関わらず、人との接触が絶たれた影響が出ています。
●また、「健康」「医療」といった領域のスコアが低下していないのは、自らの身において被害として実感していないことに加えて、医療関係のサービス低下といったこともないことが起因していると考えられます。

※上記の図表4 中の得点は、生活分野ごとの満足度に関して、「満足(+4)」「やや満足(+3)」「やや不満(+2)」「不満(+1)」の4段階の評価の平均を示しています。 2020年度と2019年度の各々の平均の差のt検定(5%)の結果、「遊び・余暇」「人づきあい」において有意でした。

●最も低下した「遊び・余暇」について、性別、年代別に2020年と2019年を比較すると、全てにおいて低下していることが分かります。外出の自粛やイベント鑑賞など、程度の差こそあれ、満足度は全体的に低下したと言えます。

※図表5: 全項目において、2020年度と2019年度の平均の差のt検定(5%)の結果は有意でした。

●次に「人づきあい」について、性別、年代別に2020年と2019年を比較すると、全てにおいて2020年の満足度が低下していますが、年代において50代以下は大きな差はありません。50代以下はオンラインによるコミュニケーションの機会や自粛する中での対人関係によって満足度の落ち込みが少なくなったことが想定されます。逆に60代70代においては、直接的に外出機会の制約、人とのつきあいが減少したことが満足度の低下に直結したと考えられます。

※図表6: 2020年度と2019年度の各々の平均の差のt検定(5%)の結果、「全体」「男性」「女性」「60代」「70代」において有意でした。

④「生き方や暮らし方についての考え」2020 vs 2019
●都市生活者意識調査では「生き方や暮らし方についての考え」を提示し、該当するものを選択するという質問を実施しています (複数回答) 。例年ですと大きな変化はありませんが、コロナ禍の影響による増減に注目しました。
●どの項目が増減しているかは、下表をご覧いただくとして、増減項目から下記2点を指摘します。
i. 高望みをしない生き方…そこそこの生活でいい、達成感・活動的であることの回避、家族・友人と楽しく暮らすことやその日その日を楽しく暮らすことですら多くを望み過ぎとして否定傾向にある。
ii. 迷惑をかけずに束縛されない生き方…病気などで家族の世話になりたくない、つまり周りを束縛することもなく、自分自身も干渉されたくない、自由奔放を求め、故に時間的な拘束つまり計画的に生きることも望まない。
●コロナ禍によって、周囲に迷惑を掛けたくないし、周囲からも迷惑(干渉や束縛も含め)を受けたくないという気持ちが高まっていることが増減の大きい項目の背景にありそうです。コロナ終息後に理想を追求する生き方の復活を望みます。

図表7

2.コロナによって始まった、新たな日常・新たな気づき

①新型コロナウイルスの情報を見聞きしてとった行動
●新型コロナの情報に接して取った行動について、男女別、年代別に整理したものが下表です。
●上位項目として、「マスクを必ず着用する」83.2%、「石鹸などで丁寧に手洗いをする」59.5%、「密閉空間、密集場所、密接場所を避ける」47.5%があがり、まさにこの3つは「マスク、手洗い、3密回避」に該当します。
●これら上位項目における女性や高齢者のコロナ対策が徹底されていることが分かります。高齢者は自分にとってのリスクという意識も浸透しており、そのような意識が反映されている結果と言えます。

図表8

②コロナ禍により、新たに取り組んだこと
●コロナ禍において新たに取り組んだこととしては、主に家庭内で実施できることが殆どです。
●「家の片付け、不要物の廃棄」に20.1%が取り組んでいます。男女を比較すると、女性28.3%、男性11.9%と圧倒的に女性がその中心にあったことが分かります。年代に注目すると、70代が最も高く、コロナ禍のもと、在宅率の向上によって、家庭内への関心の高まりから、身の回りの整理といった気持ちが高まったと考えられます。
●高齢者においては、テレビ視聴、 読書といった項目が全体平均を大きく上回っています。
●逆に20代に注目すると、ネット系の動画・DVD・ゲーム・ビデオ通話といったデジタル系が全体平均を大きく上回ります。
テレビやネット視聴、料理に読書、オンラインでの仕事や飲み会など、様々です。
●また、外出自粛による運動不足の解消やストレスの解消といったことが起因してか、「ウォーキング、ジョギング、エクササイズ、体操などの運動」に18.6%の人が新たに取り組んでいます。特に70代は24.9%と高く、健康維持への関心の高まりも伺えます。
●「特に挑戦したり、取り組んだことはない」と回答した人が、全体の42.3%。男女を比較すると、男性47.7%と高く、女性は36.8%でした。

図表9

➂気持ちや考え方の変化
●上位2項目、「何よりも心身ともに健康であることを心掛けるようになった」42.1%、「自分の命は自分でまもらなくてはならないことを実感した」32.2%は、いずれも健康に関するものでコロナ禍による影響を強く受けています。他の項目にも共通することとして、女性、そして高齢者の回答率がどの項目においても高い傾向にあります。
●第3番目に高い、「人と会うことの大切さを改めて感じた」29.7%は女性が高い傾向は同じですが、年代間格差は大きくありません。どの年代にも共通して、リアルに自由に人と会えることの大切さを見直すきっかけに繋がったようです。
●年代間格差の少ないものとして、「家族との関係を今まで以上に大切にするようになった」19.9%があります。どの年代においても、ほぼ2割前後のスコアです。同居、別居を問わず、家族を思う時間は確実に増えたのではないでしょうか。

図表10

④コロナ禍による制約された暮らしの中での新たな発見・気づき
●コロナは我々に大きな生活上の制約を強いたわけですが、その中での気づき、前向きな意識などを聞いています。
●他の項目を引き離して、1位にあがったのが「自由に外出できることのありがたさを改めて感じた」39.6%です。女性や70代では5割に達しています。まさに最大の制約は自由に外出できないことだったようです。
●続いて、健康や家族との絆、リアルな会話などがあがっています。
●注目したい項目として、「趣味をもつことの重要性を感じた」が17.3%です。70代は22.6%と少し抜き出ていますが、他は男女差も年代的にも70代の次は20代の21.7%ですから、年齢的な偏りはなさそうです。コロナによって外出自粛の制約の中で趣味を持って、時間を有意義に使うことや、ネットなども含め何らかの形で繋がるために趣味が意味を持つといったこともあるでしょう。コロナ禍による制約の副産物としては、価値のある発見と言えるかもしれません。

図表11

  1. コロナは仕事を変えた&考えさせる機会を与えた

①仕事関連における変化
●コロナ禍によって、仕事環境に大きな影響を受けた人は少なくありません。すでに報道されているように、倒産した会社や解雇せざるを得ない状況に追い込まれたり、逆にリスク下において多忙を極めたり、在宅時間の増加によって家族との関係や生活を見直し、そして仕事、働き方についても見直すということもあります。リーマンショックと比較されることも多い仕事や経済環境ですが、コロナ禍でどのような変化が生じたのかについて調査しました。
●全体の24.9%(4021名中の1000名)が、「考え始める」ということも含め、仕事/働き方について何らかの行動を起こしています。下のグラフは、年代ごとに起こした行動を足しあげた棒グラフです。必要に迫られて検討している人、時間が出来たことで検討し始めた人…若い年代ほど、アクションを起こしています。
●実際に、退職や副業・起業といった具体的な変化を起こしている人は、各々数パーセントです。最もアクションを起こしている、20代では退職した人が2.8%、副業や起業や転職などをした人は6.1%にのぼります。
●さらに、「具体的に検討し始めた」、「仕事を見直す/考え始めた」は、それぞれ20%を超えています。例えば、退職して転職したというように、選択肢の回答には重複分がありますので、グラフの足しあげた数字には人数の重なりがあります。(但し、「何もしていない」を選択した割合を全体から差し引くと20代は40%が行動を起こしていることになります)
●コロナ禍において、様々な事情で仕事や働き方を検討し始めた、そのような機会を提供することになったことは事実であり、特に若い年代においてその現象は顕著に表れました。
※次項にて、その要因についての調査結果を記載しています。

図表12

《上記図表12: 4つの項目に含まれる回答選択肢》
【退職した】=「仕事を自ら辞めた」「勤務先都合により退職をした」
【具体的な変化を起こした】=「副業を始めた」「転職した」「起業した」「仕事に就いた」「部署異動した」「地方転勤した」
【具体的に検討し始めた】=以下を具体的に検討し始めた→「副業」「転職」「起業」「就職」「部署異動」「地方転勤」「退職」
【仕事を見直す/考え始めた】=「具体的ではないが、将来の仕事や収入を見直そうと考えるようになった」

②仕事関連における変化の要因
●仕事や働き方を見直す要因は、「収入が減ったから」30.9%、「仕事のやりがいを感じづらくなったから」19.8%を超えて「生活をこれまで以上に重視したいと思うようになったから」がトップで、40.2%です。やりがいや収入の低下よりも生活を重視する気持ちが見つめ直す機会に繋がったようです。

図表13

➂地方移住への関心の高まり
●満員電車の回避や密を避けて地方に行くことも話題に上りましたが、地方移住への関心の高まりについて調査しました。
●20代では、男女ともに20%強が地方移住への関心を示しています。40代になると男性は19.6%ですが、女性は10.4%と約半分へと減少します。結婚や子供の有無による影響も考えられます。

上記図表14: 地方移住への関心を5段階(「関心が高くなった」「やや関心が高くなった」「変わらない」「関心がやや低くなった」「関心が低くなった」)で回答を求め、表中の数値は「関心が高くなった」と「やや関心が高くなった」(トップ2ボックス)の比率を示したものです。

調査概要

①調査時期
●2020年度  2020年10月21日~11月10日
●2019年度  2019年10月11日~11月 8日
②調査地域と対象者
東京30km圏内に在住の満18歳~79歳一般男女  
性・年代は東京都の構成比に準じて構成(調査人数は図表15参照)
➂調査方法
インターネット調査
④調査機関
株式会社インテージ

図表15: 20代は18歳から29歳です。作表、作図上のレイアウト調整の為、20代と簡略化して記載しています。

調査概要お問い合わせなどについて

 公益財団法人 ハイライフ研究所 
公式Web-site  https://www.hilife.or.jp/

【本件に関するお問い合わせ】
 公益財団法人ハイライフ研究所 事務局長:鈴木淑仁(すずき・としひと) info@hilife.or.jp

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