【名城大学】都市情報学部「観光の資源」の講義で自治体目線の観光資源の持続可能性を学ぶ
本学と連携協定を締結している富山県氷見市の担当者2名が解説
都市情報学部の森龍太助教が担当する3年次前期開講科目「観光の資源」で、本学と連携協定を締結している富山県氷見市の職員2人が7月8日の講義でゲストスピーカーとして登壇し、受講する学生約60人に「自治体目線での観光資源の持続可能性を考える」と題して、氷見市の主な観光資源や今年1月の能登半島地震による観光への影響などについて解説しました。
住宅約6200棟が被害を受けた能登半島地震の観光への影響も
「観光と資源」では、観光資源の拡大の歴史的変遷や観光対象となる資源の特性について理解するとともに、複数のニューツーリズムの事例紹介などを通じて、持続可能で適切な観光資源の管理の一翼を担う能力の修得を目指しており、これまでにグリーンツーリズムやガストロノミーツーリズム、ヘリテージツーリズムなどのニューツーリズムの概況や観光資源の持続可能性などを学んできました。
この日の講義で登壇したのは氷見市地方創生推進課の岩坪大祐さんと商工観光課の坂下洋昭さんで、まず岩坪さんが氷見市の観光の概要として、寒ブリに代表される水産物が豊富で令和5年には観光客が年間216万人訪れたことや、北陸新幹線の延伸で交通アクセスが向上してチャンスが広がっている一方、新たな観光サービスの供給が少なく、近隣自治体などとの激しい競争が脅威になっていることなどを指摘しました。
坂下さんは氷見市の観光資源として、「寒ブリや氷見牛などのグルメ、年間100万人が訪れる『道の駅ひみ番屋街』、氷見温泉郷がメイン」と説明。さらに、体験型観光やグリーンツーリズムの例として棚田オーナー事業や地引網、網元の家「濱元家」を活用した古民家ツーリズムなども氷見市の観光資源として挙げましたが、坂下さんは「これらはまだまだ種の段階。どうやって展開していくかは手探りの状態」と明かしました。
グループワークで復興特需後の新たな観光施策を検討、提案
能登半島地震について岩坪さんは、氷見市では震度5強を観測し、液状化現象などで住宅約6200棟が被害を受けたことや、地震後に地元を離れる市民が増えることで、「地域のコミュニティが回っていかない」と危惧していることなどを紹介。さらに、生活復旧など復興事業のため市の貯金である基金を取り崩し、市の借金である市債を発行するなど、厳しい状況が続く市の財政への影響も解説しました。
観光への影響について坂下さんは「能登で観光した前後に氷見市を訪れた観光客は毎年約25万人に上っており、今後数年にわたって年20数万人の観光客減少が見込まれ、これをどうしていくかが課題」と訴えました。今後の対策として、2024年10月~12月に北陸3県の自治体や観光事業者、JRグループ6社などと広域的な観光キャンペーンを行うことや、川崎市や台湾・高雄市など縁のある都市でのPR活動に取り組んでいくことなどを挙げました。
講義の最後に「地震の復興特需が終わった中で、氷見市がとるべき新たな観光需要喚起策とは?」との課題で、学生たちはグループワークを行いました。その結果、「沿岸部の景観を生かしたマリンスポーツや花火、ナイトバブルなどのイベント」「酒造会社と連携した棚田オーナー事業で稲作からの日本酒造り」「電気自動車『ヒミカ』を活用して市内の回遊性を良くすることで今ある観光資源を生かす」といったアイデアが提案されました。