京都大学とダイキン工業の包括連携協定
新常態時代を見据えた研究開発テーマの再構築
国立大学法人京都大学(以下、京都大学)とダイキン工業株式会社(以下、ダイキン工業)は、2013年に締結した「組織対応型包括連携協定」における新たな共同研究開発テーマとして、「ヘルスケア」「環境」「エネルギー」「アジア、アフリカの空調文化」などの観点から見直し、工学中心から医学、農学、地域研究まで取り組み範囲を広げた5つの協創プログラムを軸に再構築します。
本プログラム推進を主な目的として、2021年4月1日からの10年総額で50億円をめどに投資額を設定します。ただし、両者合意の下、魅力あるテーマが設定できれば、上限を設けることなく、必要に応じて投資額を増加させるという柔軟な体制で成果創出に取り組みます。
京都大学とダイキン工業は2013年に「組織対応型包括連携協定」を締結し、空間(空気、環境)とエネルギー分野における10年後、20年後を見据えたテーマの創出、イノベーションの実現に向け文理の枠を超えた協業・交流を行い、信頼関係を深めてきました。
コロナ禍をきっかけに世界的に空気や健康といった関心が高まるなか、京都大学からダイキン工業に対し、Well-being(より良く生きられる社会)の実現と教育・啓蒙に向けた、新たな視点での産学連携、共同研究の組成を提案しました。
こうした背景から、コロナ禍による新常態の時代に両組織に共通する問題意識を踏まえて、共同研究テーマを見直しました。ヘルスケア領域では、京都大学が2007年から取り組む「ながはま0次コホート事業」(以下、ながはまコホート)のプラットフォームを活用した研究を行います。同事業は、滋賀県長浜市に住む健康な老若男女1万人の健康情報を分析し病気の予防につなげ、“医学の発展”や“市民の健康づくり”をめざすものです。空気・空間のあらゆる課題と医療データの関連性をさまざまな角度で分析していきます。例えば、空気中のカビやアレルギー物質とゲノムなどの人体情報との関係性を解き明かし、呼吸器疾患を未然に予防できる空気・空間のソリューションを生み出すなどの成果が期待できます。そのほか、今後、空調機の普及が加速するアジア・アフリカにおける空調文化の浸透など、5つの協創プログラムを設定することで合意しました。
① 空気・換気、ヘルスケア領域での新価値創造に向けたながはまコホートの活用(医工連携)
② 先端技術の共同研究(エネルギー・材料・建築・コールドチェーン)
③ 京都大学スマートテクノキャンパスプロジェクトへの参画による空調周辺での価値創造
④ アジア・アフリカ地域研究部局との連携による未来空調コンセプト創出
⑤ 京都大学発ベンチャーとの提携・連携
これらの協創プログラムには本連携の特徴でもある「文理融合」の姿勢で取り組みます。生み出した成果は、産業技術として確立し社会実装することをめざします。
1. 5つの協創プログラムの概要
京都大学オープンイノベーション機構(以下、OI機構)と、ダイキン工業テクノロジー・イノベーションセンター(以下、TIC)戦略室を窓口に、5つの協創プログラムを軸に包括連携をスタートします。
① 空気・換気、ヘルスケア領域での新価値創造に向けたながはまコホートの活用(医工連携)
京都大学の「ながはまコホート事業」は、滋賀県長浜市に住む1万人から血液や尿の成分、環境・生活習慣のさまざまな健康情報などを集めて解析することで、病気の原因や老化のメカニズムの解明につなげるものです。加齢に伴う疾患リスクの高まりや医療費の増加は、日本だけでなく、高齢化が進展する欧米、中国などでも顕在化しています。個人の生体情報に基づいた健康な空気・空間を作ることで未病の予防が可能になれば、Well-being(より良く生きる)社会の実現に一歩近づくことができます。今回のプログラムでは、1万人のデータをもとに空気・空間と人の生体情報との因果関係の解明に取り組みます。建物におけるカビやアレルギーの健康への影響に関するデータを集め、医学的な裏付けをもとに人の健康・快適に関する空気・空間の実現をめざします。
② 先端技術の共同研究(エネルギー・材料・建築・コールドチェーン)
京都大学の基盤技術を活用し、エネルギー、材料、建築、コールドチェーンの4分野のブレイクスルーにつなげます。京都大学OI機構は、産官学連携本部、学術研究支援室(KURA)や京大オリジナル、TLO京都、京都大学イノベーションキャピタルなどのグループ会社と連携し、京都大学が保有する技術シーズ群および研究者群との幅広のマッチングをはかります。京都大学の研究者とダイキン工業の技術者の議論を通じた、共通認識、信頼関係の醸成と相乗効果のある共同研究シナリオの策定、テーマの創出を行います。
③ 京都大学スマートテクノキャンパスプロジェクトへの参画による空調周辺での価値創造
CO2排出ゼロや最先端のスマートシティでの空調の効率的な運用の検証を行います。京都大学の複数のキャンパスを一つの街に見立て、最先端のセンサーと電力需給調整(デマンドレスポンス)に対応できる空調機を用い、エネルギーの需給バランスをデータサイエンス技術により最適化し、居住空間の空気質および快適性を向上させながら、実証試験を通じてバーチャルスマートシティの高効率運用の達成をめざします。
④ アジア・アフリカ地域研究部局との連携による未来空調コンセプト創出
2050年にはアジア、アフリカを中心に空調機の需要が3倍になると予測(出典:IEA The Future of Cooling)されています。同地域では、経済成長が続き、中間所得者層が増え市場が拡大しています。京都大学のアジア・アフリカ地域研究部局が強みとするフィールドワークの経験や知見を活用して、現地の気候・文化・歴史観などに基づいた、商品開発、ビジネスモデルの検証などで現地に根付いた空調文化のコンセプト、エアコン普及のロードマップを立案します。
⑤ 京都大学発ベンチャーとの提携・連携
ヘルスケア、材料、エネルギー領域を中心に京都大学発ベンチャーとの提携・連携を推進します。また、ダイキン工業、京都大学のほかベンチャーキャピタルとも連携したファンドの設立などの連携手法も検討し、技術シーズの芽を育て、いち早い事業化につなげます。
2. 本連携の推進体制
1 ) 京都大学とダイキン工業の産学連携のイノベーションの考え方
京都大学は、1897年の創立以来、「自由の学風」を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、開かれた大学として、地球社会の調和ある共存に貢献してきました。イノベーションの創出と社会貢献を積極的に進めるとともに、海外の研究大学とのアライアンスや国内外企業との協創を強化しています。地球規模で事業を展開し、環境貢献に近いポジションにいるダイキン工業との包括連携を通じて、「Well-beingに満ちた次世代社会の創造」という理念の下で、京都大学が重視する学問の源流を開拓する基礎研究、人類の将来にとっての学理の探究の成果を社会に展開するものと期待しています。また、京都大学は、産学連携共同研究の革新的なあり方・方法論の確立、ベンチャー活力を活用した産学連携の新しいエコシステムの開発、京都大学が有する優れた研究成果のグローバル発信と若手研究者の育成など、これからの多様な産学連携のあり方に関する検討とその構築も進めていきます。
ダイキン工業は、グローバルに事業展開する空調メーカーとして、空調ビジネスの未来を見据えて新技術やサービスソリューションを展開し、新たなビジネスモデルの構築を急ぎ、オープンイノベーションを掲げ積極的な産学連携を行ってきました。京都大学との包括連携では空調や化学事業の本質的課題に取り組みつつ、空調事業の未来を見据えて医学・工学(医工連携)により「ヘルスケア」領域での取り組みを加速させます。
2 ) 「組織」対「組織」の人材交流・人材育成
京都大学の多様な分野の教員・研究者、ベンチャーの起業家、およびダイキン工業の様々な部門の社員が自由に往来・交流し、経験や知見を共有し、信頼関係を醸成することにより「組織」対「組織」の人材交流・人材育成を進化・深化させます。また、ダイキン工業が150 カ国に展開するグローバルビジネスの最前線や100カ所を超える生産・開発拠点の社員と、京都大学の教員・研究者が交流し、若手を中心とした人材育成にも取り組みます。
3 ) 運営組織
本包括連携の進め方等について協議を行うとともに、進捗を確認する機関として「京都大学-ダイキン包括連携協議会」を設置します。この包括連携運営協議会の下、運営委員会を設置して、本包括連携の定常的な運営・管理を行います。さらに、定例のテーマ創出会議を共催し、研究テーマを立案し推進します。京都大学吉田キャンパスにあるダイキン駐在事務所を拡張し、TICからキーとなる人材(基幹職)を派遣します。
■上記内容についてのお問合せ先
京都大学 オープンイノベーション機構 [担当:庄境・嶋]
〒606-8501 京都市左京区吉田本町 TEL (075)753-7763(直通)
ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター 戦略室 [担当:武田・粟飯原]
〒566-8585 大阪府摂津市西一津屋 1-1 TEL (06)6195-7051
■報道機関からのお問合せ先
京都大学 研究推進部 産官学連携課 [担当:井上・森川]
〒606-8501 京都市左京区吉田本町 TEL (075)753-7767(直通)
ダイキン工業株式会社 コーポレートコミュニケーション室
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