新型コロナウイルス対策はもちろんですが… 冬場は食中毒にも気を付けましょう!

突然ですが、「1年で食中毒が多いのは何月でしょうか?」
夏場に食中毒が増えることはよく知られています。確かに、高温や多湿な環境においては細菌が増えやすいため、梅雨時期(5月~6月)と夏季(7月~9月)は細菌性の食中毒が多くなる傾向にあります。
しかし、一口に「食中毒」といっても、さまざまな原因があります。患者数でいえば、細菌性のものは4,739人と、全体の36.4%程度(人数比、以下同じ)しかなく、もっとも多い原因であるウイルス性のものは7,031人と、全体の患者数の過半数(54.0%)を占めます。ウイルス性の食中毒の中でも代表的な「ノロウイルス」は、冬季(12月~3月)に多く発生するので、これからの季節は特に注意が必要です。

食中毒の原因物質別患者数
原因物質別・月別 食中毒発生件数

◆ノロウイルスの大きな特徴

食中毒の原因物質として多いのは「アニサキス」(328件)、「カンピロバクター」(286件)であり、ノロウイルスは212件と3位ですが、食中毒の患者数は、2位のカンピロバクター(1,937人)、3位のウエルシュ菌(1,166人)を大きく引き離して、6,889人と1位です。ノロウイルスは、少量(10個程度)で感染する、長期間の免疫が取得できない、ウイルスの種類が多く繰り返し感染する、症状消失後もウイルスを排出するといった特徴を有しており、感染力が非常に強いことが知られています。潜伏期間は24~48時間とされ、感染症状の出ない人もいますが、嘔吐、吐き気、下痢、腹痛、発熱などの症状が見られます。

◆日常の予防について

シダックスグループが受託運営する社員食堂や病院内食堂などのフードサービスの現場では、さまざまな予防方法を実践していますが、ご家庭でもすぐに取り入れていただける予防策があります。それは、「正しい手洗い」「消毒」と「食材の十分な加熱」です。

〇正しい手洗い

新型コロナウイルスの流行により、「正しい手洗い」はさまざまな形で報道されていますが、手洗いは衛生の基本ともいえる行為ですので、改めてご紹介します。

 手を十分に濡らした後、石鹸をよく泡立てて、指の1本1本、指の付け根、手首などをくまなく洗うほか、手を握った(じゃんけんの「グー」)状態で、指の第1関節と第2関節のしわの間なども丁寧に洗います。爪の周囲などは、ブラシで洗うことも効果的です。
また、昨今ではすっかり常識となりましたが、洗浄後にタオルなどで水気を拭いた後、アルコールで消毒をしましょう。その際には、ボトルに記載されている推奨される使用量を守ること。また、手洗い同様に、手のひらだけではなく、指の間や爪の周りなどに、まんべんなく摺り込むように使うことが肝要です。

正しい手洗いの手順(シダックス作成)

〇調理器具などの消毒

まな板などの調理器具を、200ppm(0.02%)に希釈した市販の次亜塩素酸ナトリウム溶液に5分間浸すなどの方法で、消毒を行いましょう。

〇食材の加熱

食材をよく加熱することもノロウイルスの予防につながります。食材の中心温度が75℃以上で1分以上加熱すればほとんどの食中毒菌を死滅させることができるとされていますが、体内にノロウイルスを持っている可能性がある二枚貝については、85~90℃で90秒以上加熱してから召し上がることをお奨めします。「“加熱用”と表示されていたカキをフライにして食べたが当たってしまった」という話も稀に聞きますが、加熱時間・温度には十分注意してください。

◆職場での予防について

最近は在宅勤務を取り入れる企業が多くなってきていますが、体調が優れないときは出勤しないこともウイルスを「持ち込まない」「拡げない」ようにする大切な予防策です。体調不良者は食中毒菌やウイルスを保有している可能性があり、出勤することで人から人へ感染が拡がります。症状が治まるまでは自宅での療養をお奨めします。

衛生に配慮することは、食中毒だけではなく、さまざまな病気からご自身や周囲の人を守ることにつながります。気温の低下にともなって、新型コロナウイルスだけではなくインフルエンザなども拡大が懸念されています。ぜひお気を付けください。


お話を聞いた人
シダックス株式会社 品質管理室 室長
迎 英子(むかえ えいこ)

1996年、甲子園大学栄養学部栄養学科卒業。同年、シダックスグループに入社。エリアマネジャーとして約30の社員食堂の運営を担当した後、2007年に現品質管理室の立ち上げとともに異動。営業店舗への衛生教育・衛生巡回指導を担当。2015年より品質管理室の室長として、当社の基準の制定等、衛生管理基準の基盤を構築している。管理栄養士。

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