堺屋太一の「幻の歴史小説」7回忌の節目に書籍化 囲碁の天才から見た信長を描く『戦国千手読み』1/31発売
株式会社PHP研究所(京都市南区・代表取締役社長 瀬津要)は、2025年1月31日に『戦国千手読み』(堺屋太一 著/税込2,970円)を発売します。本書は、堺屋太一氏の7回忌という節目に先立ち、執筆から30年が経過した「幻の原稿」を初めて書籍化するものです。1970年の大阪万博を企画した官僚で、のちに作家に転身した著者が、織田信長に囲碁をもって仕え、のちに〈本因坊算砂〉として本因坊家の祖となる若年僧・日海を主人公に、「囲碁の天才」という今までにない視点から、信長の天下布武を描いています。戦国ファンから囲碁好きまでが楽しめる歴史小説です。
万博開催年の発刊を「著者は予想していたのかも」
本作品の初出は今から30年前に遡ります。月刊誌「小説歴史街道」(現在休刊)で1994年1月号から1995年6月号まで連載され、完結後すぐに単行本化する予定でした。しかし、NHK大河ドラマ「秀吉」の原作者として多忙を極めていた堺屋氏から、刊行延期の申し出があったのです。その後、発刊の機会を逸し続けたまま迎えた2019年2月、著者が帰らぬ人となりました。連載中の堺屋太一氏が本作にかけた思いをよく知る編集者が、単行本『戦国千手読み』を読者の元に届けたい一心で、制作を始めたのが昨年のことです。
2025年2月は堺屋太一氏の7回忌にあたり、4月には生前の堺屋氏が格別の思いを抱いていた関西・大阪万博の開催を控えています。またとないタイミングでの発刊となったことについて、本書の編集担当者は、『知価革命』『平成三十年』など、その「未来を予見する力」でベストセラーを生み出し続けた堺屋氏が、ここまで予想していたような気がすると述べています。
主人公と著者の共通点
本作の主人公である日海は、実在した囲碁の名人です。「本能寺の変」の前夜に信長の御前で並べた棋譜を史実に残す日海は、作中で「未来の記憶を持つ人物」として描かれ、信長のために「戦車」や「連射式銃」を開発したり、20世紀に起こる戦争の戦術を盤上で示唆したりと活躍。碁石を置いて自陣を広げる囲碁の手順そのままに、自らの一手で信長の版図拡大を助けます。ところが、信長は自ら悪手を重ね、天下統一目前で人生の「投了」へと追い込まれていくのです。未来の記憶を持つ主人公に、小説や評論で数々の未来予測を的中させてきた著者の姿が重なります。
あらすじと読みどころ
【あらすじ】
天下布武へと邁進する信長だったが、強敵・武田や一揆、謀反など、難しい局面が続いていた。若くして信長に見いだされた日海は、囲碁を通して、さまざまな献策をしていく。そして、本能寺の変の前夜、日海が信長の前で行なった対局で、不吉の前兆ともいわれる「三コウ」が起こるのだが……。
全18章の各章末には、コラム「実録・本因坊算砂」を収録。執筆の着想を得た史実や創作手順を余さず明かします。本文とコラムを交互に読み進めると、まるで日海と著者が打ち交わす対局を観ているかのようで、戦国ファンはもちろん囲碁好きの心も躍らせる構成となっています。
著者について
堺屋太一(さかいや たいち)
1935年、大阪府生まれ。東京大学経済学部卒。60年、通商産業省(現経済産業省)入省。70年、日本で初となる万国博覧会開催を成功させる。75年、『油断!』で作家デビューを果たし、翌年、『団塊の世代』を発表。78年、通産省を退官し、執筆活動に専念。98年7月より経済企画庁長官、2000年12月より内閣特別顧問を務める。東京大学先端科学技術研究センター客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。10年、上海万国博覧会日本産業館代表兼総合プロデューサーとして大成功を収める。13年8月、内閣官房参与に就任。19年、逝去。主な著書に、『全一冊 豊臣秀長』『鬼と人と』『秀吉』『峠の群像』『日本を創った12人』などがある。
書誌情報
書名:戦国千手読み 小説・本因坊算砂
著者:堺屋太一
発売日:2025年1月31日
判型:四六判上製
ページ数:496ページ
定価:2,970円(税込)
ISBN:978-4-569-85855-5
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