【倉敷芸術科学大学】少年時代に発見した化石、時を超え40年後に自ら研究
「人魚のミイラ」の研究で話題の生命科学部・加藤敬史教授
2023年3月4日(土)から長崎県の西海市崎戸歴史民俗資料館にて長崎県西海市で発見された約3,300万年前のカイギュウ(海棲哺乳類)化石が展示が始まります。
この年代の化石は太平洋へ進出したカイギュウとしては日本最古のものであり、それだけでも歴史的に重要な意味を持つものです。
ただ、この化石にはもう一つの”時を超えたストーリー”があるのです。
時を超えて再び出会った少年と化石
1980年、当時中学生だった加藤少年は夏のキャンプに来ていた長崎県西海市崎戸の海岸である化石を発見しました。それは大きな石の表面に白い骨が沢山ついた状態の物。西海市の崎戸歴史民俗資料館に運ばれ展示されました。しかしながら資料館に化石の専門家はいなかったため、化石のクリーニングは行われず長らく正体不明のままでした。
それから約40年後。加藤少年は化石哺乳類の専門家となり加藤教授として倉敷芸術科学大学で教鞭をふるっていました。
一方、西海市は事業としてこの化石を調べることになり、西海市教育委員会が日本の哺乳類化石に詳しい福井県立恐竜博物館に連絡。そして”あの人”ならこの付近の化石に詳しいのではないかと福井県立恐竜博物館が連絡したのが加藤教授。話を聞いた加藤教授は「それを見つけたのは私です」と。
不思議な縁でつながった結果、化石の研究チームに加藤教授も参加することとなりました。
化石を含む岩石と地質の調査が進み、周囲の砂岩を除去するにしたがって、これが約3,300万年前の重要なカイギュウの化石であると判明し、研究チームはその重要性をアメリカ古脊椎動物学会(2019年)と日本古生物学会(2022年)で発表。
そしてこの度、化石の周りの石を取り除いた化石丸裸の状態で展示巡回も決定しました。
白いカーブした肋骨が沢山埋まっていて、それが踊っているように見えた
加藤敬史教授は当時を思い出しながらこう話します。
父の同僚と西海市の崎戸島に、夏のキャンプに来ていました。中学1年生の時です。
その年に一緒に来ていた子供たちとはあまり親しくなかったので、海水浴場から離れた岩場で一人で化石を探して遊んでいました。海岸には貝の化石が沢山ありました。その海岸に転がっていた大きな石の表面に白い骨が沢山ついていました。
大型の生物の化石ということはすぐにわかりましたので、一部を持ち帰り、夏休みが終わってから理科の先生に見せたところ、これは大発見!確認に行こうということになりました。それから、長崎県地学会と、佐賀大学の先生、崎戸町役場の方と岩を海岸から回収しました。新聞にも掲載され、夏のキャンプで見つけた化石がこんなに騒動になるとは思っていませんでした。
当時は特に根拠も無く「クジラの化石」と言われていたのを覚えています。高校に進学してからもフェリーに乗って時々崎戸町役場に展示されている化石を見に行っていました。(化石は最初崎戸町役場の玄関ロビーに展示されていて、その後、崎戸歴史民俗資料館に移されました)
当時どのような気持ちだったかというのは、さすがにもう大分記憶も薄れています。1トンくらいあろうかという黄褐色の砂岩の表面に、白いカーブした肋骨が沢山埋まっていて、それが踊っているように見えたのをかすかに覚えています。とても興奮したんだろうと思うのですが、そのあたりはもう記憶にありません。
化石が「クジラ」でないことは、大学時代に研究室の指導教官から海牛化石のクリーニングをするように命じられていたとき、海牛類のもつ特徴的な肋骨の構造で気がついていましたが、海生哺乳類については私の専門から外れるので、「たぶん、海牛のなかまなんだろうな〜」くらいの認識で、この標本について研究するタイミングがありませんでした。
発見から40年以上たって、皆さんと研究を進めて、この標本が海牛の進化の重要な時期の化石で、太平洋では最古の海牛化石であることがわかり、当時の気持ちも思い出しながら、あらためて興味深く思っています。
日本最古カイギュウ実物化石の展示巡回予定
●西海市崎戸歴史民俗資料館(長崎県西海市大瀬戸町瀬戸樫浦郷2278番地2)
期間:2023年3月4日(土)~4月30日(日)
休館:祝日および月曜日
時間:9:00~16:30
料金:無料
●長崎市恐竜博物館(長崎県長崎市野母町568-1)
期間:2023年5月3日(水)~6月30日(金)
休館:月曜日
時間:9:00~17:00
料金:一般500円、小中学生・未就学児200円
倉敷芸術科学大学Webサイト
倉敷芸術科学大学
https://www.kusa.ac.jp/
お問い合わせ先
倉敷芸術科学大学
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