【アイレップ】Google のWeb検索結果右広告枠廃止、その影響と企業が取るべき施策

2016年2月20日、Google はPCにおけるWeb検索結果の右側の広告枠を廃止した。今回の主な変更の内容や現在までの影響、今後想定しうる影響や企業の取るべき施策について、株式会社アイレップ執行役員で、第1メディアマネジメント本部を統括する芝野徹也が解説する。


――今回の変更の概略について教えてください。

Google のPCにおける検索結果画面において、従来は上下枠と右枠がありましたが、その右枠の広告掲載枠が廃止になりました(図1、2参照)。

http://www.irep.co.jp/press/whitepaper/2016/20160324_02.html
<図1:「転職」で検索した際の広告枠変更例>

http://www.irep.co.jp/press/whitepaper/2016/20160324_02.html
<図2:「ノートパソコン 通販」で検索した際の広告枠変更例>

今回の変更を時系列的に述べると、まず2016年2月20日、米Search Engine Landからのリークがあり、当社でも即座に目視確認を行ったところ、全ての環境ではないものの一定の割合で右枠の掲載枠が表示されないことを確認しました。

実際に大部分の変更がかかったのは22日の夜から23日未明にかけてだと思います。新しいルールが適用されるブラウザが一気に増え、ほぼ全てのブラウザが切り替わったと見ています。最初のトリガーは週末でしたが当社では、社長から役員、そして社員まで裏側で一体となってリサーチしましたね(笑)。

なお、商品リスト広告( PLA:Product Listing Ads )や、Hotel Price Ads などのナレッジグラフ内の広告は、引き続き右枠と上部枠にも掲載され、今回の変更の影響は受けていませんが、通常の検索連動型のテキスト広告は例外なく変更が適用されています。

今回の変更については、Google Japan でも変更が行われるだろうということは聞いていて、日本での影響範囲についてのアナウンスやアクションも想定はしていたようです。ただ、先にSearch Engine Landからのリークがあり、また同時に変更も適用されてしまったため、その大きな反響の中でオフィシャルコメントを出すタイミングが難しくなってしまったのだろうと推察しています。現時点でのGoogle Japan からの本件に関しての公式コメントは出ていませんよね。

――第一報に対しての広告主様からの問合せや混乱はありましたか?

クライアント様からの連絡はかなりありましたね。中でも、この変更によってPCでの集客が難しくなるんじゃないかという、不安を伴ったコメントは多く寄せられました。
 
当社では、まず各アカウントにおいて、上部枠・右枠それぞれの掲載が現在どれだけあり、それぞれにどんな影響が出ているかを調べて情報共有しました。そのリサーチと連携した上で、下記のようなことを検討してお伝えしました。

・これまで右枠で4位以下だったものは、掲載順位を上げるために入札強化しなければならないのか
・それとも、別の媒体機能をフル活用することで、集客の効率を維持・改善することが可能なのか
・仮に、上位表示を取りにいくために入札を強化するとしたら、どのキーワードから実施すべきか
  
――今回の変更のGoogle の意図は?

Google はPCとSPで何か異なることをするという考え方はありません。それは広告においてもオーガニックにおいても変わらないGoogle のスタンスです。従って、多くの人がコメントしている通り、同一のUXを提供したかったというのは私もあると考えています。

とはいえ、UX統一だけを純粋に狙った変更なのかというと、それはそうとは言い切れないでしょう。広告枠数は減らしましたが、この変更によりGoogle に入る収益は上がっていくと考えるのが自然です。UXが高まればAdWords の売り上げを減らしても良い、と考えてはいないと思います。では、広告主から見た時に、この変更はプラスに働くのか、マイナスに働くのかについては、もう少し慎重に情勢を見守る必要があるでしょう。端的に言えば、得する人とそうでない人に分かれてくる可能性もあると考えています。

――現在までの影響を教えてください。

当社の数千アカウントを見渡した時に、20日と23日でやはり影響は出ていました。検索におけるインプレッション数(広告表示回数)で見ると、おおよそ全体で9%くらい減少していました。クリックやコンバージョン数で見ても全体で5~7%程度下がっていました。ただ、そのことに対して事実の報告を差し上げると大概の広告主の反応としては、「影響はたしかに小さくはないけれども、逆にその程度で済んではいるのはよかった」とほっとされるケースの方が多い印象です。やはり最初に目にしたり、耳にしたニュースの衝撃が想定以上に大きかったようですね。

http://www.irep.co.jp/press_statichtml/whitepaper_sup/2016/20160324_02_2.html
<図3:掲載順位とインプレッション数の関係>

もう少し詳細に踏み込んだお話もしますね。先ほどは広告主単位での影響でしたが、キーワード単位ではどうでしょうか。当社のクライアント様の多くは、余程大きい検索ボリュームのあるキーワード以外のものは、もともと4位以下は露出量が低く、またクリック率も低かったため、今回の変更の前後で比較してもそこまで影響は顕著には見られていません。そういった意味では、右枠はもともと相対的に弱い広告スペースだったと言えます。

――全体傾向としては、影響は軽微だったと言えるのですね。

一般的に考えると、上枠の3位、あるいは4位に入るための競争は激化する訳ですからCPCの高騰はありえるでしょう。

確かに、変更後の最初の一週間は、広告掲載を担保するために安全策として入札を強化する広告主もいたこともあり、CPCの高騰は事実起きています。しかしこれは永遠に上がり続ける類のものではありません。入札を強化するといっても、これまでのビジネスのルールが変わるわけではないので、変動幅はあくまでビジネスで許容されるレベルに留まるでしょう。

――今後の影響と今日の取るべき施策について教えてください。

Google の変更は後戻りはできないので、新しいルールの中で、どうこれまでの成果を継続できるか、また増やしていくことができるかを考えることが重要です。そのためのノウハウは代理店に依るところも大きいでしょう。

特に気を付けた方が良いのは、量販店型のECサイトなどです。同じ商品の取り扱い先が複数存在するような、競合性の高いビジネスは影響が大きくなります。不動産、人材なども該当するでしょう。

ビジネスの方針によって、大きく二つの施策が取れると考えています。機会拡大を狙う攻めの戦略と成果維持を目標とする守りの戦略です。

■機会拡大のための施策

右枠が廃止されたことにより、今後は、上位4位までの広告にクリックが集中する可能性があります。そのため、うまくやれば集客増につなげられます。

その手法としては、次のようなものが考えられます。

・サイトリンク・コールアウト・スニペットなどの広告表示オプションを駆使し、占有面積を高めるという手法はオススメです。サイトリンクとコールアウトを8本以上掲載すれば、表示面積が上がるため、CTRが上がる可能性があります。

・検索広告向けリマーケティング( RLSA )を活用する施策も有効です。CPAの高いキーワードに対して、訪問ユーザーやフォーム到達ユーザーのみ絞り込んで上位表示させるように入札を強化するといいでしょう。

・曜日や時間帯、エリアなど、獲得見込みのあるターゲティングだけ上位表示させる入札強化施策なども攻めの施策の一手となり得るでしょう。

・検索連動型のテキスト広告が右枠に掲載されなくなったことで、商品リスト広告や、Hotel Price Adsなどのナレッジパネル内に掲載される広告の相対価値は上昇します。これらの広告はもちろん、CriteoやGDR などを併用するのもお勧めです。

■成果維持のための施策

一方、5位以下のクリック数の低下が想定されます。各キーワードごとの成果を確認し、CPA許容範囲内であれば、入札を強化するのも一手でしょう。当社では、Hagakure という媒体評価アルゴリズムを意識した強いアカウント構造を作るための施策の取組みが大幅に進んでいます。そのようなアカウントの最適化により、低いCPCでも上位表示掲載を目指す提案をしています。

また、今回の変更により同業他社の順位状況が大きく変わる可能性もあります。メインキーワードをオークション分析レポートでモニタリングし、適切な入札を実施することが重要です。

いずれの場合も、キーワードによって入札強度を変えるなど、今まで以上に細かな運用が重要な要素となってきます。全体の入札強化も必要ですが一律に高くするのではなく、訪問ユーザー、到達ユーザーを鑑みて入札強化を考慮する。自分たちのビジネスに適合する入札を見極め、複数の施策を併用することがあらゆる想定事象への対応策となるでしょう。

――SEOについては何か変わるのでしょうか?

変わります。まず、今回の変更によって、オーガニックがファーストビューに入ってこなくなるケースが多くなってきます。従って、ペイドとオーガニックのバランスは明らかに変化します。ただし、だからといってSERPsが広告一辺倒になり、オーガニック対策が必要なくなるという訳ではなく、新しい画面においてどの位置でオーガニックが出るか、ということが益々企業にとって重要になってくると解釈した方が良いでしょう。

広告色が強くなる一方で、Google は検索品質評価ガイドラインを公開するなど、SEOの重要性も引き続き説いています。Google は今もコンテンツのクオリティは重視しているのです。私たちも様々なサービス強化をしていますが、ユーザーにとって有益なコンテンツを拡充していくコンテンツマーケティングの重要性は益々高まっています。また、高度化スニペットや検索結果画面における占有面積を上げるためには、オーガニックの掲載順位がこれまで以上に重要になってくることも意味しています。

――リスティング広告は今後どうなるのでしょう?

ここはマーケットの中にいる人も勘違いをしているので、きちんと訂正をしておいた方がいいと思いますが、最近、「サーチはもう伸びていない市場なのでは」という声を耳にすることがあります。それは、一部の媒体の開示情報に影響を受けている訳ですが、Google を中心としたマーケット全体としては全く逆で、全プロダクトの中で今年もサーチが一番伸びています。今回の変更にあたっても、新しいUXによる更なるエクスペリエンスの向上に伴い市場をより大きくしていこう、という背景があると受け止めて貰って良いと思います。広告主の皆様も、この変更を適切に活かせる代理店であればデメリットではなく、プラスに転換できると思っていただいて大丈夫です。

今回の変更、いきなりのリークから発覚したので確かに反響も大きかったのですが、実は私自身も当社の仲間たちもあまり驚いてはいませんでした。2013年のエンハンストキャンペーンから大きな流れは感じていましたので、ついにやったか、来るべきときが来た、くらいの気持ちでした。

これまでは、PC、SPの広告掲載枠の出方が異なったので管理時にPCを軸にするかSPを軸にするかで考え方を変えなければならなかったのが、この変更により少なくともGoogle の中は、同じ論理で考えれば良くなった。要するに今回はこれが大きな変更なわけです。それは先ほども言ったように、エンハンストキャンペーンにもいえる、Google の一貫した方向性です。
 
それからもう一つ今回とても面白い発見がありました。それは、お客様の問い合わせを多く受けたことで気付かされたことなのですが、「お客様自身のビジネスがSPにシフトしていることに気付いていない」ということです。当社のお客様は、Google でいうと7:3の割合でスマホ経由の集客にシフトしています。これは、スマホシフトというより、スマホメインと言ってもいい割合です。実際はSPがメインリーチになっているにも関わらず、それに気付かずに、今回の(PC側での)変更を、恐ろしく大きな機会損失につながる事件だと直感的に思ってしまった広告主様が多くいらっしゃいました。ただサーチ広告の主流軸はSPに既に移っています。となれば、むしろ今回の変更のようにSPに適合した広告にした方が良いのは自然の流れといえます。

――ユーザーのスマホシフトがそこまで進んでいたのですね。

かつてスマホはPCに比べ、ユーザビリティが低く情報量が弱いと言われていました。スマホだとコンバージョンしない、スマホはPCより劣後するものと言われていた。今はコンバージョンもスマホになっており、これはほぼ全ての業種において共通の傾向です。スマホシフトは、スマホメインまで来ているので、スマホメインストリームに寄せているだけといえます。これはGoogle の広告回りだけじゃないSEOにおけるAMP やApp Indexing の変更などの実施からも読み取ることができます。スマホメインとなる、今まさに私たちはその入り口に立っていると言えます。
 
最後に、今回はGoogle の変更の話でしたが、日本にはYahoo! JAPANというもう一つの大きなプラットフォームがあることを忘れてはいけません。Yahoo! JAPANはYahoo! JAPANで独自のサーチの戦略がある。一つの物差しで見るのではなく、今後益々Google とYahoo! JAPANで独自の運用戦略を取ることが必要とされていくでしょう。当社ではYahoo! JAPANのサーチの中でどのように最適な運用を導いていくかについてもメソッド開発しています。

日々Google もYahoo! JAPANも変化している。Google とYahoo! JAPANを大雑把に一括りのものと捉えるのではなく、個々のプラットフォームに向き合っていく重要性が高まっています。今回のような変更は今後もありうることです。この変化に柔軟に向き合うことで、ユーザーにとっても広告主にとっても新たなサーチの世界が拡がっていると思います。

「Search is not dead」ということです。


■芝野徹也(しばのてつや)プロフィール
株式会社アイレップ 執行役員 第1メディアマネジメント本部 本部長

大学卒業後、前職を経て、2006年に株式会社アイレップ入社。SEMコンサルタントとして、中小企業から大手企業まで幅広くSEM案件を担当。リスティング広告プラットフォーム変革(Panama、Ver3等)時は、オペレーション標準策定・業務システム等を構築し、現在の「リスティングに強いアイレップ」の礎を築いた立役者。2012年、アイレップ子会社 株式会社ロカリオの設立に参画し、2014年よりアイレップ執行役員就任。アドテクノロジーを活用した広告運用施策とR&Dを率いるエヴァンジェリストとして広告運用戦略を一手に統括する。


※本内容は「Web担当者Forum」へ寄稿した内容(「グーグル右広告枠廃止で、リスティング担当者とSEO担当者が今考えなければいけないことhttp://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2016/03/18/22400」)をまとめたものです。


以上


■株式会社アイレップ について
アイレップは広告主のマーケティング成果を最大化するデジタルマーケティングエージェンシーです。国内圧倒的ナンバーワンのSEM領域に、データを起点とした新たな広告事業・ソリューション事業を加えることで、「ユーザーへの最適な情報流通により、国内外のクライアント企業の成果を最大化へと導くエージェンシー」の立場を確固たるものにしていきます。
━━ 会社概要 ━━
【社名】 :株式会社アイレップ
【所在地】:東京都千代田区永田町2丁目11番1号 山王パークタワー7F
【URL】 :http://www.irep.co.jp/
【代表者】:紺野俊介
【設立年月】:1997年11月
【資本金】:5億5,064万円 (2015年12月末現在)
【事業内容】:
・広告代理事業
・ソリューション事業
・ツール事業
・その他(デジタルメディア事業等)

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