暑さで「ぼーっとする」のは危険なサイン

暑熱環境下における運動時のアイススラリー飲用が注意力の低下を抑制

大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区 社長:上原 茂](以下、当社)は、広島大学長谷川博教授との共同研究で、暑熱環境下での「アイススラリー」の飲用による身体内部からの冷却が、暑さによる注意力の低下を抑制することをヒト試験において確認しました。本研究成果は2023年7月4日~7日にフランスで開催された、世界最大規模の国際学会である欧州スポーツ科学学会「ECSS Paris 2023」にて発表いたしました。

アイススラリーとは

近年、暑熱環境対策としてアイススラリーが注目されています。アイススラリーは液体と微細な氷の粒からなるシャーベット状の飲料であり、飲用によって身体を内部から効率的に冷却できます。

暑熱環境下における運動後のアイススラリー飲用による身体冷却イメージ (撮影協力:広島大学 長谷川博教授)
暑熱環境下における運動後のアイススラリー飲用による身体冷却イメージ (撮影協力:広島大学 長谷川博教授)

研究成果

本研究では、暑熱環境下における運動時のアイススラリーの飲用が、深部体温の上昇抑制及び注意力の維持をもたらすことを確認しました(図1,2)※1。
注意力、判断力をはじめとする認知機能は深部体温と密接な関わりがあります。暑熱環境下における運動時には深部体温及び皮膚温が上昇し、さらにその熱を熱放散によって体外に逃がそうとして血液が身体の末梢へと流れます。これにより脳への血液の供給が減少し、その結果認知機能が低下すると考えられています。

一般的には「深部体温が39℃以上」になると認知機能が低下すると報告されています。
本研究でも対照群では運動後に深部体温が39℃を超えた一方で、アイススラリーの飲用によって深部体温の上昇が緩和され、注意力が維持されることが分かりました。

図1 運動時のアイススラリー飲用による 深部体温(直腸温度)変化 (ECSS Paris 2023発表内容より改変)
図1 運動時のアイススラリー飲用による 深部体温(直腸温度)変化 (ECSS Paris 2023発表内容より改変)
図2 運動時のアイススラリー飲用による 注意力(実行機能)低下抑制 (ECSS Paris 2023発表内容より改変)
図2 運動時のアイススラリー飲用による 注意力(実行機能)低下抑制 (ECSS Paris 2023発表内容より改変)

当社はこれまでに、暑熱環境下でのアイススラリーの飲用が運動後パフォーマンスの向上に有効であること等を発表しております※2。さらに今回、運動時のアイススラリーの飲用が、深部体温の上昇抑制と注意力の維持に有効であることが明らかになったことから、夏場のスポーツシーンにはアイススラリーが効果的だと考えられます。
また、アイススラリーの飲用による認知機能テストの結果から、暑熱環境下での運動や作業時における時間の管理、課題の遂行、情報処理速度や反応速度の維持にもアイススラリーが有効であることが期待できます。
暑さで頭が「ぼーっとする」症状は、熱中症の初期段階で見られることもあり、作業時には効率の低下だけでなく事故に発展するリスクも指摘されています。夏場屋外の作業時にも、アイススラリーの飲用は有用であると考えられます。
当社は引き続き、運動パフォーマンスや暑熱環境に関する研究を進め、生活者の皆さまの健康づくりに貢献してまいります。

※1 試験概要
対象者:運動習慣のある成人男性10名
試験デザイン:ランダム化非盲検クロスオーバー試験
試験食:32℃の飲料(対照)または-4℃の飲料(アイススラリー)
暑熱負荷条件:室温32℃、相対湿度60%の環境制御実験室
運動負荷条件:ウォームアップ後、50%Wattmaxで20分間の自転車運動を3回実施し、その後80%Wattmaxでの自転車運動を疲労困憊まで実施
摂取条件:ウォームアップ後に試験食4 g/kg体重を飲用し、3回の運動後にそれぞれ2 g/kg体重を飲用(計10 g/kg体重)
認知機能評価:コグニトラックス内の注意シフトテストのスコアでの評価
統計解析:Bonferroni法

※2 参照ニュースリリース:
身体内部からの冷却による『運動パフォーマンス向上効果』及び『睡眠の質改善効果』をヒト試験で確認(https://www.taisho.co.jp/company/news/2022/20220630001037.html
「爽快にリカバリー!」アイススラリーで運動後の体温と心拍数の回復が促進されることを確認
https://www.taisho.co.jp/company/news/2023/20230523001304.html


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