観光客のがっかりランキング上位に挙がる高山ラーメン
昭和初期頃の味というイメージの強い高山ラーメン。有名だが他の地域には広がらず、観光客はその知名度高いラーメンを楽しみに行列するラーメン店へ訪問するが期待ハズレだった、という声もしばしば聞こえる。
お店によって違いはあるが、基本的には寸胴に材料を入れてスープを煮込み、タレを使わずに寸胴からそのままスープを入れる煮干しの苦い味がする、かなりやわい茹で加減の極細縮れ麺のイメージである。
筆者は以前から進化しない地域のご当地ラーメン文化に違和感を持っていた。ラーメンほど進化し続ける高度な食べ物は珍しいと思うのだが、歴史や地域性に甘えたままで本当に大丈夫なのだろうか、と。
寸胴で朝から夜まで煮込みっぱなしなのでどんどん味は濃くなり、苦みは強くなる。化学調味料満載で昭和の味のまま止まっている。
人気店で並んでいる店は店内にやっと入れたと思うと席は全然空いていて、客引きの為にわざと行列を作っている。
結果、高山を訪れる観光客が唯一がっかりするのがラーメンだったりする。
観光地としては国内トップレベルの人気と裏打ちされた素晴らしい文化レベル
高山という街は近隣に大きな都市も無く、戦国時代など歴史的にそれほど大きな舞台となった訳でも無いが観光地として昔から有名で、インバウンド上昇率では国内トップの人気ぶりだ。
インバウンドのみならず、国内旅行者からも高山観光は評判高い。何故なら、地域性が良いからだ。
昔から観光慣れしていて、街の人が観光客に慣れていて、商売人としてとても上手なのだ。
どこのお店へ行っても、まるで友達の紹介で人に会ったかのように気さくに話し掛けてくれて距離感が近い。
外国人にも小さな店のおじいちゃんやおばあちゃんが英語で対応する。
かしこまらず、温和で人柄の良さが伝わるような地元の人に出会う事で多くの観光客が国内外問わず感動する。
古い町並みなど保護された区域では見どころ多く、小さな街なのに食文化が豊かで美味しい物が多い。
それ故に有名な高山ラーメンを食べに行こうと張り切った結果、他の高山の文化が素晴らしいのに、あれ？となってしまう事が多いようだ。
新たな高山の文化創造を目指す飛騨牛骨高山ラーメン祭
そこで昨年より高山の名産品を使って新たな高山ラーメンを作ろう、という動きがラーメン業界に伝わってきていた。
高山の食材といえばなんと言っても王道の飛騨牛。その飛騨牛の牛骨を豚骨ラーメンの豚骨の代わりに贅沢に100%使って炊き上げ、今までの高山ラーメンとは全く違う高山のラーメンを作ろうと、マーケティングのプロ、飲食業界、ラーメン界でトップクラスの専門家や有名店の主が集まって研究していた。
そこで生まれたのが飛騨牛骨高山ラーメン祭のラーメンの味である。
スープは白湯と清湯の２種類。トッピングで辛味噌で好きなスープをピリ辛みそ味に出来る。
白湯スープは牛骨の濃厚な旨味とマイルドさを活かしながら重たくならないよう、すっきりしたホタテ貝柱を中心に魚介類でタレを組み合わせている。
清湯スープは時間を掛けて丁寧にじっくり濁らないよう澄みながら飛騨牛の旨味を抽出したスープ。高山名産の飛騨山椒の風味が食欲をそそる。
途中で味変でテーブル上の飛騨山椒の粉を振りかけると驚く程、相性が良い。高山名物の保谷七味唐辛子も風味高く食欲をそそる。
イメージを覆す新しい味が観光地で受け入れられるだろうか
実は高山にも現代の基準で照らし合わせても美味しいラーメン店は幾つかあるのだが、先鋭的である為に「これは高山ラーメンではない」と書かれ、レビューサイトで予想外に低い評価をされていたりする。
しかし文化とは、連綿と受け継がれるものと、進化するべきものがある。ラーメン自体、歴史的にそんなに古い物ではない訳で、昭和のラーメンから脱却して高山が誇る食材を上手く活かした飛騨牛骨高山ラーメン祭のラーメンが受け入れられる事を期待する。
そもそも、高山ラーメンも古くから食す地元の人曰く「昔は縮れ麺じゃなかったし、スープの味もかなり変わってきている」との事。
観光ラーメンからの脱却した店を望む地元住民も多いし、観光客も「こういう物だよね」と妥協して味わう時代は終わった。
是非、美味しいご当地ラーメンとして新しいチャレンジをする、飛騨牛骨高山ラーメン祭へ一度足を運んで頂きたい。筆者のオススメは白湯スープだ。
問い合わせ先
飛騨牛骨高山ラーメン祭
【住所】岐阜県高山市片原町４
TEL:０５２-２２８-９４４２ （株式会社SSY）
https://www.ramenmatsuri.jp
