【名城大学】VRの全国学生コンテスト(IVRC2023)で2回目の優勝をもたらした7人の侍に迫る!
柳田研究室 チーム「まぜまぜトウモロコシ」
バーチャルリアリティ(VR)技術を使って人間と情報世界をつなぐための研究を進める理工学部情報工学科の柳田研究室。ここに所属する研究室メンバー7名からなるチーム「まぜまぜトウモロコシ」が「IVRC」というVRの全国学生コンテストに参加し、優勝を勝ち取りました。今、日本で活躍するVRの第一人者の多くは、このIVRCが輩出した人々です。この歴史と権威ある大会で優勝という栄誉を手にするまでのプロセスや勝利の決め手などを探ってみましょう。
チーム「まぜまぜトウモロコシ」が歴史あるIVRCに挑戦
IVRCの正式名は「Interverse Vertual Reality Challenge」。
これは、リアルな世界と情報世界が融合し進化していく時流の中で、バーチャルリアリティの技術によって新たな価値を生む挑戦に対して評価を与える全国学生コンテストです。「バーチャルリアリティ」という言葉生まれたころにはすでにスタートし、2023年に第31回を迎えたIVRC。この大会で名城大学は2017年に続いて2回目の優勝を果たし、押しも押されもせぬ強豪校の仲間入りを果たしました。
チーム名は、「まぜまぜトウモロコシ」。
自分たちの特色をさまざまな言語に翻訳し、アレンジした結果、この名前になったとのこと。遊び心いっぱいのチームです。
柳田教授も「レベルの高い議論を活発に交わしていることが多く、とてもにぎやかなチーム。それでいて、ギスギスした雰囲気はなく、いつも和やかな雰囲気」だと話します。IVRCの参加についても、柳田教授が指示したのではなく、学生たちの自発的な決意によるものだったそうです。制作費用の一部を、大学の学生活動支援施策である「Enjoy Leaningプロジェクト」へ応募し採択されたことも一つの要因かもしれません。
不思議で壮大な出品作「めい迷路ろ」ができるまで
出品作は、チーム名と同様に不思議な響きを持つ「めい迷路ろ」。これは、入れ子構造になっている迷路をVRで体験させるエンターテイメント性の高いシステムで、人が乗れる構造になっています。ゴーグルを着用した体験者が台に乗り、手元のコントローラーを傾けると目の前に広がる3次元の迷路を進めるようになっており、視界の傾きに応じて足元も傾くようになっている迫力と楽しさ満点の仕組みが特徴。手元と自分が見ている巨大な世界が入れ子によってリンクして、見えている世界の様子が変わっていくのです。「めい迷路ろ」というネーミングは、漢字の「迷路」を前後から平仮名の「めいろ」で挟み込むことで、この入れ子構造を象徴させたものです。
出品する作品が「めい迷路ろ」に決まるまでには、200以上のアイデアが出されたものの、教授や先輩に評価してもらった結果、ほぼ全てにダメ出しされ、最後に出したのが「めい迷路ろ」だったそうです。ただ、ダメ出しされた案も無駄になったわけではなく、その中からキラリと光る要素を見つけては、合体させたりブラッシュアップさせたりして「めい迷路ろ」の中に活かされています。
事件は夜明けの研究で起こった!?
今回のIVRCでは、東大や東工大をはじめとする難関大学から100を超える応募があり、書類審査を通過した25チームがSEED STAGE(予選)へ進出、体験審査会の難関をくぐり抜けた9チームのみがLEAP STAGE(決勝)への出場を許されました。
「まぜまぜトウモロコシ」の最大の危機は、SEED STAGEの開催される東京に作品を発送する日の夜明けごろ。
最後の最後、「めい迷路ろ」の傾斜を再現するキモの部分を仕上げる作業が残っていたのです。メンバーは最後の仕上げのために研究室に残り、全員の頭の中には「間に合わせるぞ!」という強い決意。間に合わせるためにはどうするのかを一人ひとりが考え行動しました。
そして発送の締め切りギリギリの夕方に作品が完成、急いで配送業者さんの元へ運び、間に合わせたそうです。
その翌日、チームメンバーはSEED STAGE会場(東京都八王子市)へ向かうため高速バスで移動。
ホテルに宿泊したものの、この間もわかりやすい説明のシナリオやガイド画面の準備をしていたので、大忙し。当日、会場での作品設置の際にはうまく制御できない部品が見つかり、代替品を手にいれるために奔走したメンバーもいたとのこと。そんな中でも緊張感はあれどメンバーの雰囲気が悪くなることはなく、チームで同じ目標に向かう楽しさを感じていたようです。
そして栄冠は「まぜまぜトウモロコシ」の上に輝いた
SEED STAGEに参加して感じたのは、ライバルたちのレベルの高さでした。3日間の展示を終え、「まぜまぜトウモロコシ」は決勝進出の権利とUnity賞を獲得しました。審査員からは「決勝までにどれだけ完成度を高められるかが勝負ですね」との講評があり、内心「これで完成しているんだけど…」という戸惑いもあったようです。LEAP STAGE(決勝)の舞台は2カ月後、東京お台場。
そこで、その間に開催される大学祭で一般の人の反応を見て改善を加えることにしました。
ソフトの仕掛けやハードのレベルアップをしつつ、研究室では「優勝しようぜ!」などと言い合っていたものの、この時点ではチームの誰も本心から優勝できるとは思っていませんでした。
いよいよLEAP STAGE(決勝)結果発表の日。
期待半分、いやいやまさかという思いが半分のメンバーたちは、優勝チーム名のアナウンスを聞いた瞬間に、信じられない気持ちが半分、すべての苦労が報われたという感慨が半分に変わりました。審査員からは、「構成がよくて、ギミックの配置もしっかり考えられており、基礎的な技術をベースにしながらちゃんと応用にまで発展させているところがよかった」との言葉をもらいました。「そこまで気づいてもらえるとは期待していなかったので本当にうれしかった」と、メンバーたちは口を揃えます。また、「一人では絶対にできないことが、同じ目標をもつチームなら成し遂げることができる。それを知ることができたことが最も大きな収穫だった」とも。
後輩たちには、「最初から自分で制限を設けてしまうのではなく、自由な発想でアイデアを出し、3回目の優勝を狙ってほしい」とメッセージを送ります。
2024年は名城大学で「日本バーチャルリアリティ学会大会」が開催され、柳田教授が大会長を務めます。これからますますVRが盛り上がりそうです。