リスクモンスター、第1回「債権・動産譲渡登記分析」レポート発表 ~事業会社の登記設定が倒産確率に大きく影響~
法人会員向けに与信管理ASPクラウドサービスを提供するリスクモンスター株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:藤本 太一、以下リスモン)は、第1回「債権・動産譲渡登記分析」レポートを発表いたしました。
債権・動産譲渡登記制度は、法人が行う債権・動産の譲渡について、第三者対抗要件を備えるための制度です。
今回、これらの債権・動産譲渡登記設定が倒産確率にどのように影響しているかを分析したところ、譲渡人および譲受人が事業会社であった場合に倒産確率が高まるとの結果を得ました。対法人の与信管理において、事業会社の登記設定は重要な参考情報となります。
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債権・動産譲渡登記の概要
債権譲渡とは、譲渡人(債務者)が第三者(第三債務者)に対して有する債権について、譲受人(債権者)に譲渡することにより、債権者が債務者に代わり第三債務者から債権を回収する権利を得る制度です。たとえば、A社がB社に対して有する債権をC社に譲渡することで、C社はA社に代わってB社からの回収が可能となります。
動産譲渡とは、譲渡人が所有する在庫や機械設備等の動産を譲受人に譲渡することにより、資金調達や債務弁済の担保とする際に設定されるものです。動産譲渡担保においては、譲渡後も譲渡人が占有・使用を可能とする方法が一般的です。
債権(動産)譲渡登記制度は、法人が行う債権(動産)の譲渡について、第三者対抗要件を備えるための制度です。債権(動産)の譲渡について、第三者に対抗するためには、原則として確定日付のある証書によって債務者に対する通知を行うか、債務者の承諾を得なければなりませんが、債権(動産)譲渡登記を行うことによって第三者に対抗することが可能となります。
[分析結果]
(1)債権・動産譲渡登記の設定件数推移
2012年から2021年まで直近10年間の債権・動産譲渡登記件数の推移において、債権譲渡登記件数は、3万件台で安定的に推移しており、今後も継続的な利用が見込まれ、動産譲渡登記は、直近では7~8千件台で推移し、2012年から利用が倍増しています。(図表A)
本レポートでは、リスモンが入手した2022年1月以降の債権・動産譲渡登記データ118,450件に対して独自データベースの企業情報を紐付し分析を実施しました。
(2)譲渡人属性分析 ~小規模事業者の登記設定割合が高い~
債権譲渡登記は、債権回収やファクタリングなどの金融取引で用いられることが多く、銀行とその他金融業を除いた事業会社(以下、事業会社)の割合は全体件数の約3分の1となっています。
一方、動産譲渡登記は在庫商品や機械設備などの現物資産を対象としているため、事業会社の利用が全体件数の94.1%を占めています。事業会社が譲渡人となっている46,167件(企業数5,318社)を対象として集計を行いました。(図表B)
譲渡人の事業会社(5,318社)について、売上高規模別の企業数割合を集計したところ、債権譲渡・動産譲渡ともに売上高「1億円以上~5億円未満」の企業数が最多となりました。登記件数割合では、債権譲渡において売上高「100億円以上」の企業が6割超を占め、動産譲渡においては売上高「10億円以上30億円未満」が最多となっています。
登記件数としては、債権譲渡をファイナンスサイクルに組込み、繰り返し利用する大規模企業が多いことで売上高「100億円以上」が最多となっているものの、企業数としては売上高5億円未満の企業数が5割超となっており、大規模企業を除くと債務の弁済や資金調達を要する小規模企業が譲渡人となるケースが多いといえます。(図表C)
譲渡人の業種について集計したところ、債権譲渡における企業数としては「卸売業、小売業」(企業数割合27.3%)、建設業(同22.5%)、製造業(同17.8%)の順となり、件数としては、「卸売業、小売業」(同26.2%)、「建設業」(同23.0%)、「不動産業、「物品賃貸業」(同10.8%)の順となりました。「建設業」は、企業数こそ多いものの、1社あたりの登記回数は少ないといえます。
動産譲渡登記件数においては、「卸売業、小売業」(同20.9%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(同14.0%)、建設業(同12.7%)の順となりました。在庫商品を利用しやすい「卸売業、小売業」やインフラ関連企業が多く、機械設備を利用しやすい「電気・ガス・熱供給・水道業」の件数が多くなっています。(図表D)
(3)譲渡人倒産分析 ~登記件数は少なくとも倒産確率に顕著に表れる~
事業会社に債権譲渡登記が設定されている場合の倒産確率(3.96%)は、事業会社全体における倒産確率(0.16%)の約25倍と非常に高くなっており、動産譲渡登記が設定されている場合の倒産確率(1.32%)においても、事業会社全体の約8倍と高い水準となっています。一方、金融業においては倒産がほとんど発生しておらず、譲渡登記の設定有無が倒産確率に影響していないことがうかがえるため、譲渡登記設定情報は、事業会社に対する与信管理上で重要な情報となることが分かります。(図表E)
事業会社における売上高規模別の倒産確率を集計したところ、「債権譲渡登記設定あり(以下、債権譲渡人)」では、売上高「5億円以上10億円未満」(倒産確率7.7%)が最も高く、次いで「10億円以上30億円未満」(同6.9%)なりました。売上高30億円を超えると倒産確率が4%未満に低下しており、大規模企業における倒産リスクの低い様子が表れています。
「動産譲渡登記設定あり(以下、動産譲渡人)」においては、「10億円以上30億円未満」(倒産確率4.4%)が最も高く、次いで「100億円以上」(同2.7%)なっています。債権譲渡人と傾向が異なり、売上高規模が大きい企業においても2%前後の倒産確率が生じています。(図表F)
業種別に債権譲渡人の倒産確率を集計したところ、「運輸業、郵便業」(倒産確率9.7%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(同9.1%)、「宿泊、飲食サービス業」(同8.1%)の順となりました。上位3業種とも図表Dのとおり登記企業数は少ないものの、倒産確率が高いことから当該業種の債権譲渡人に対しては、特に注意が必要といえます。
動産譲渡人の倒産確率においては、「農業・林業」(同7.9%)、「情報通信業」(同6.9%)、「宿泊、飲食サービス業」(同4.8%)の順となりました。動産譲渡においては倒産が発生していない業種が多い中、上位3業種は突出して倒産確率が高いため、注意が必要といえます。(図表G)
(4)譲受人分析 ~貸金業・ファクタリング業・事業会社の場合に倒産確率が高まる~
事業会社が譲渡人として設定された46,167件に対し、相手方となる譲受人を集計したところ、企業数としては「銀行業」(企業数割合39.9%)が最も多く、「貸金業、ファクタリング業」(同4.5%)と「その他金融業」(同22.7%)を合わせた金融業全体で67.1%を占めました。登記件数においても、銀行業が45.5%となり、金融業が全体の約7割を占める結果となっています。(図表H)
譲渡人の倒産198件(重複込み)について、相手方となる譲受人の分布を集計したところ、倒産企業に対する譲受人は、「事業会社」および「貸金業、ファクタリング業」がそれぞれ4割程度となっており、譲受人が事業会社やファクタリング業であった場合、譲渡人の倒産リスクが高まる傾向がうかがえます。倒産確率においても、事業会社とファクタリング業が譲受人であった場合、それぞれ8%前後と高い倒産確率となっており、譲渡人の倒産リスクが高いことが分かります。(図表I)
※ 本編はダイジェスト版です。詳細な内容は、以下掲載サイトよりご覧いただけます。
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不動産、会社・法人の登記情報はもちろんのこと、
今後活用が広がっていくと思われる動産・債権譲渡に関する
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リスモン調べとは
リスモンが独自に調査するレポートのことです。これまでリスモンでは企業活動関連の調査として他にも「100年後も生き残ると思う日本企業調査」「環境への配慮が感じられる企業調査」や「この企業に勤める人と結婚したいアンケート調査」などを発表しております。
今後も「企業活動」に関するさまざまな切り口の調査を実施することで、企業格付の更新に役立てていくとともに、情報発信を行うことで新しい調査ターゲットの創出、新サービスの開発などに取り組んでまいります。
掲載サイトはこちら: http://www.riskmonster.co.jp/rm-research/
■リスモンの概要(東京証券取引所スタンダード市場上場 証券コード:3768)
2000年9月設立。同年12月よりインターネットを活用した与信管理業務のアウトソーシングサービス、ASPクラウドサービス事業を開始しました。以来、法人会員向けビジネスを要として、教育関連事業(定額制の社員研修サービス「サイバックスUniv.」)やビジネスポータルサイト事業(グループウェアサービス等)、BPOサービス事業、海外事業(利墨(上海)商務信息咨詢有限公司)にサービス分野を拡大し、包括的な戦略で事業を展開しております。
リスモングループ法人会員数は、2022年9月末時点で13,826(内、与信管理サービス等7,230、ビジネスポータルサイト等3,127、教育事業その他3,469)となっております。
ホームページ: https://www.riskmonster.co.jp/