【エリア別マンション価格上昇評価】大規模再開発は価格上昇を誘発しているのか?
調査の背景
昨今、中古マンション価格が高騰していると言われており、レインズタワーが発刊している首都圏中古マンションの価格推移を見ても、その価格は依然として高水準で推移しています。
しかし、価格動向をエリアごとに詳細に分析してみると、その実態は一様ではありません。首都圏を大きく「東京都23区」と「都下・神奈川県・千葉県・埼玉県」の2つのグループに分けて比較すると、明確な違いが見えてきました。
東京都23区においては、2023年以降も右肩上がりで価格が上昇しており、高値水準を維持しています。一方、都下や周辺3県では2024年中盤以降、ばらつきは見られるものの、全体としては横ばいの傾向が強く、顕著な価格上昇は見られません。
このことから、「首都圏全体で中古マンション価格が高騰している」というよりは、実際には東京都23区の一部エリアでの価格上昇が首都圏全体の価格高騰の要因となっていると推定し、調査を実施しました。
調査概要
今回の調査では、東京都23区の中でも、特に価格が大きく上昇しているエリアに焦点を当て、より詳細な分析を行いました。具体的には、2023年と比較して「価格が上昇したマンションの割合」と「平均的な価格高騰率」の2つの観点から各エリアを評価し、総合的に高評価となった地域を抽出しました。
表1:エリア別総合評価

表1では、例えば港区高輪エリアでは、対象となった64棟のマンションのうち、実に55棟で平均10%の価格上昇が見られました。高輪は棟数・上昇率ともに非常に高い水準であることがわかります。
また図1では、これらの評価結果を地図上にプロットし、各エリアの評価を以下の通りに色分けしています。
茶色プロット:評価A(上昇率・上昇棟数ともに高い)
黄色プロット:評価B(いずれかが中程度)
青色プロット:評価C(上昇傾向は限定的)
図1:東京都23区エリア別評価プロット地図

図1を見ると、皇居より南側のエリアに評価Aが集中しており、都心南部のエリアで高騰傾向が顕著であることが視覚的にも確認できます。
さらに、現在進行中の大規模な再開発プロジェクトが進んでいるエリア、例えば品川・高輪ゲートウェイ周辺・渋谷・新宿なども、広範囲にわたって評価Aとなっており、こうした都市開発がそのエリアの資産価値を押し上げていることがうかがえます。再開発による利便性やイメージ向上がマンション価格に与える影響の大きさを改めて認識できる結果となりました。
図2:品川広域圏評価プロット地図

品川広域圏
品川広域圏は、図2の品川駅を中心に新幹線や空港アクセスが充実し、再開発も活発に進行中。高層オフィスや住宅が共存し、ビジネスと居住の両面で注目を集めています。
図3:湾岸エリア評価プロット地図

湾岸エリア
図3の湾岸エリアは、東京都心の臨海部を中心に再開発が進む注目エリアです。豊洲・晴海・有明などで大規模な住宅、商業施設、交通インフラの整備が進行中で、利便性と都市機能が向上。国家戦略特区にも指定され、国際的なビジネス拠点としての期待も高まっています。
図4:渋谷駅周辺評価プロット地図

渋谷駅周辺大規模開発
渋谷駅周辺大規模開発
図4の渋谷駅周辺では「100年に一度」と称される大規模な再開発が進行中です。これまでに「渋谷ヒカリエ」「渋谷ストリーム」「渋谷スクランブルスクエア東棟」「渋谷サクラステージ」「渋谷アクシュ」が開業。2027年には「渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟」の完成が予定されています。これらのプロジェクトは、オフィス、商業施設、住宅、公共スペースを融合し、渋谷駅周辺の都市機能を大幅に向上させています。また、歩行者デッキや広場の整備により、回遊性と利便性が高まり、渋谷は国際的なビジネス・文化拠点としての地位を強化しています。
筆者プロフィール
福嶋 真司(ふくしましんじ)

マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。
現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、
顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
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会社名: マンションリサーチ株式会社
代表取締役社長: 山田力
所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
設立年月日: 2011年4月
資本金 : 1億円