ベトナム進出前に知っておきたい不祥事発生のリスク~AAA Consulting~

2022-05-20 00:00

ベトナムでは近年経済成長を継続的に遂げている。そしてアジア諸国の中でも、海外進出先としてベトナムは高い人気を誇っているのが現状だ。一方で、日本との文化や環境の違いもあり、企業内での不正や不祥事が発生するリスクも低いとは言えない。

ベトナムの進出後に不正のトラブルに巻き込まれないためにも、今回は、ベトナムへの進出を検討している経営者や企業担当者向けにコンサルティングを行うベトナム進出の専門家である「AAA Consulting」代表の今森さんに話を聞く。

ベトナム法人での不正が発覚しにくい環境

多くのケースでは、ベトナムで法人を設立後、複数の業務を一人ないしごく少人数で担っている場合が少なくありません。

そのため、不祥事を行った者自身がその発覚を防ぐために隠蔽工作を行い得る環境が生まれやすい環境があるのです。

不正が生じやすい具体的な原因

1, 経営合理化に伴い、人材や予算が不足していて、監視体制が行き届かない
2, 管理部門の人材不足
3, 特定の役職員へ権限が集中しているケースが多い
4, 特定の役職員が長期間にわたって同じ業務に携わっていることが多い
5, モニタリング機能がない

親会社による不正管理は可能か?

例えば、日本の親会社によって、ベトナム子会社の不正行為などについてモニタリングし、未然に防ぎたいと思っていても、物理的な距離や言語的な問題などから完璧に監視することが難しかったり、親会社のルールをベトナムでの法人に共通して適用することは、社会背景や文化などの違いから困難だという事情があります。

また、日本人の会社に対する忠誠心や倫理観、コンプライアンスに対する高い意識をベトナム子会社の役職員に期待することができない現状や、法律やこれまでの取引慣行などの違いによって、当人が不正であるという自覚をしていないケースもあります。

そのため、まず大事なのは、「不正行為」について概念を明確にし、現地従業員に対してしっかりと教育をおこなっていくことが必要です。

ベトナム進出前に知っておくべき不祥事の早期発見・防止のための取り組み

まず不祥事を未然に防ぐためには、職場内で不正に対する正しい知識と共通認識をもたせる必要があります。

①不正に対する共通認識を高める

まずは、役職員が不正に対する意識を高められるような取り組みをしていくことをおすすめします。
・不祥事についての正確な洗い出しと問題点の把握
・役職員に対する教育・研修
・報告や情報共有の体制を整える
・職場内のコミュニケーションを円滑にする

②親会社によるモニタリング体制を整える

親会社による定期的な監査は、不正を未然に防ぐためにも効果的です。
・毎年、テーマを設定してリスクが高いと思われる子会社などに内部監査を実施
・事業内容や人員配置・組織構成など多角的な視点から不正リスクをチェックする
・専門性のある部署や役員が直接関わるプロジェクトなどであっても監査対象とし例外をつくらない
・抜き打ちで監査を実施
・弁護士やコンサルタントなど外部の専門家を活用
・モニタリングの結果を教育・研修でフィードバック
・モニタリング制度を常にアップデートする

③内部通報制度を適用する

内部通報制度を整備していて、実際に通報がないから不正がないというわけではないですが、制度を活性化できれば、不祥事を未然に防ぐことができるだけでなく、潜在する不祥事の早期発見につなげることもできます。

不正のトライアングルとは?

不祥事について、「不正のトライアングル」という考え方があります。不正は、下記3つのリスク要因が全て揃ったときに発生するという考え方です。

①動機

役職員自身が、不正行為を行うに至るための主観的な事情などです。
例:役職員が個人で抱える借金の返済に苦しみ、なんとかして借金を返済する方法を探したいという状況にあった。

②機会

不正行為ができるような客観的な環境です。
例:所属企業において、他者にばれずに多額の現金を容易に手にできる立場にあった

③正当化

不正行為をしてもよいと自分自身に許可するための主観的な事情などです。
例:一時的に借用し、後日返済するつもりだったら問題ないはずと感じた。

上記のような状況に役職員が置かれた場合、不正行為が起こるリスクは一段と高くなってしまいます。逆に、この「動機」「機会」「正当化」を排除できれば、リスク要因を減らすことができるのです。

不正防止のための防止策は?

上記でお伝えしたように、「動機」「機会」「正当化」について、未然に排除することが、不正防止にとても大切になってきます。

そのためには、やはり教育や研修などによる役職員の意識を高めることはもちろん、社内的な処分についても認識をしっかりとしてもらうことが効果的です。

また、人事ローテーションがないと、不祥事の発見が遅れる可能性が高まってしまうため、組織体制の整備や再構築なども重要です。

また、日本のようなコンプライアンスに対する高い意識は期待せず、しっかりと社内規定やマニュアルなどを整備しておくことをおすすめします。

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