ベトナムに進出する際に事前に知っておきたい会社設立の基礎知識#2 法人設立の具体的な流れ
アジア諸国の中でも企業の海外進出先として注目され続けるベトナム。
そんなベトナムに進出を検討する企業には、どのような事業形態の選択肢があるのかなどについて、前回、ベトナムの税務申告や駐在員の所得税申告支援、法人設立サポートなどを行う専門家である「AAA Consulting」代表の今森さんに詳しく聞いた。
今回は、法人を設立する場合の具体的な手順や期間などを詳しく聞く。
ベトナムで法人設立する際の3つの形態とは
ベトナムへ日本企業が現地法人を設立する際は、「出資者1人の有限会社」「出資者2人以上の有限会社」または「出資者3人以上の株式会社」という3つの会社形態があります。
「出資者1人の有限会社」では、個人起業でも法人の場合でも設立が可能です。もし、日本法人があり、ベトナムにビジネス拡大のために日本法人が出資して法人をベトナムに設立する場合は、外資100%の子会社となります。
株式会社は、有限会社と比較すると、管理運営のためのコストが高く、出資者も3名以上必要で経営判断のスピードが遅くなってしまうことを懸念する企業も多いのが現状です。
現地法人を設立・登記する手順
ベトナムに現地法人を設立するには、ある程度の期間が必要です。手続きに時間がかかるため、最低でも3ヶ月はみておく必要があります。
現地法人設立までのステップを順にみてみましょう。
ステップ1:リサーチ
まずは、最新の規制やルールなどを調査した上で、企業のニーズにあった会社形態を決定します。ベトナムには、様々な外資規制などがあり、ルールも度々変更になります。事前に最新の規制などについてリサーチをしておくことが大切です。
ステップ2:会社登記に必要な書類の整備
会社登記に必要な情報や書類を整備します。書類はベトナムの公証役場での公証が必要となります。
ステップ3:会社名の決定と書類の作成
会社名を決定し、登記に必要な書類の作成を準備します。定款に会社名を記載する必要があるため、予めベトナム国内企業の法人登記情報を確認して、似ている商号などがないかどうかチェックする必要があります
ステップ4:住所登録・オフィス契約
住所の登録やオフィスの契約を進めます。ベトナムでは会社設立の際、オフィス住所が必ず必要なため、ベトナムでの会社設立手続きの前に、オフィスの賃貸契約を交わしておかなければなりません。
ステップ5:投資登録証明書や企業登録証明書取得申請
投資登録証明書や企業登録証明書の取得申請を進めます。ベトナムでは、以前、投資証明書のみを取得すれば良かったのですが、現在は、投資登録証明書と、企業登録証明書の2種類の証明書を取得する必要があります。
投資登録証明書は、申請後おおよそ3週間~6週間ほどで証明書を所得できます。また、企業登録証明書については、約1週間ほどで取得可能です。
ステップ6:企業登録証明書の掲載
企業登録証明書が取得できたら、国家情報WEBサイトへ企業登録証明書の掲載をします。発行日から30日以内にベトナム国家ビジネス登録パネルウェブサイトへの登録を当局に依頼する必要があります。
ステップ7:法人銀行口座開設
法人銀行口座の開設をします。ベトナムに会社設立をしたら、2種類の法人口座を開設する必要があります。1つ目は資本金を払い込むための資本金口座で、2つ目は通常の支払い業務などに使う口座です。
現地法人設立の際の資本金について
ベトナムでの会社設立する際の最低資本金は業種により条件が変わってきます。
基本的には多くの業種では規定はありませんが、保険業・銀行業などは特別に最低資本金が定められています。
また、法律に明記はされていませんが、資本金が少ないと担当者の裁量で非承認にされてしまう可能性があるので注意が必要です。
想定外の非承認を避けるためにも、10,000USドル以上の資本金を用意した上で設立の手続きをすすめるのがよいと思います。
撤退についての注意点
現地法人設立について詳しくご説明してきましたが、念の為知識として知っておきたいのが撤退の際の手続きです。
ベトナムでは、撤退の際に税務調査によって指摘を受け、罰金の未払いや税金未払いについて詳細に調査の上、ペナルティ料を払わされるリスクがあります。
日本の場合は、法人税や所得税などの未払いに罰金は発生しませんが、ベトナムの場合は発生します。この税務調査にかなり時間がかかるため、撤退には期間として1年〜2年かかる場合も少なくありませんので注意が必要です。
今回、2回にわたってベトナムでの会社設立について専門家に話を聞いてきた。ベトナムの会社設立手続きは非常に複雑で手間がかかるため、専門家に頼らずに手続きをするのは、かなり難しいという印象だ。
これからベトナムでの会社設立を検討している企業は、トラブルに巻き込まれるリスクを回避するためにも、事前にしっかりと調査し、現地の会社設立代行業者やコンサルタントに依頼した方がよさそうだ。