JMDC医療ビッグデータを医療機関の推奨薬選定の根拠に活用

2021-04-21 16:00

株式会社JMDC(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:松島 陽介、以下「JMDC」)と昭和大学(東京都品川区/学長:久光 正)の百 賢二 准教授(薬学部病院薬剤学講座)および佐々木 忠徳 統括薬剤部長ら(以下「昭和大」)は、2020年6月よりフォーミュラリ策定に医療ビッグデータを活用するための共同研究を進めて参りました。今回、JMDCの提供する医療ビッグデータを使って骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネート製剤(以下「BP剤」)の有効性と安全性を評価し、その結果を活用した院内フォーミュラリ策定プロセスが、日本薬学会第141年会のシンポジウム(2021年3月27日開催)にて、百 賢二 准教授より「医療ビッグデータを利用した医薬品の適正使用に関するエビデンスの構築」というタイトルで発表されました。

医療機関でデータ活用

院内フォーミュラリとは?

院内フォーミュラリとは医療機関ごとに策定される“推奨薬リスト”です。院内の医師や薬剤師等で構成される委員会などで、医薬品の有効性や安全性、費用対効果などを協議して作成され、継続的にアップデートされます。経済性を考慮することから、増大し続ける医療費抑制政策の一環として注目されています。フォーミュラリ策定には、同一カテゴリ内の医薬品の有効性・安全性の差を評価することが特に重要であり、調査結果の再現性、真正性、透明性に加え、偏りの少ない情報を用いる必要があります。

フォーミュラリ策定時に直面した課題

昭和大学では、8つの附属病院(3,200床)を有しており、統括薬剤部を中心にそれぞれの薬剤部と連携してフォーミュラリの普及等を行っています。これまで、統括薬剤部では、論文やガイドラインなどの文献をもとに医薬品の有効性や安全性、合理性を評価し、フォーミュラリを策定してきました。しかしながら、同一カテゴリ内の医薬品の真のアウトカム(対象となる薬が対象となる病気の発症を防ぐこと)を評価した文献は少なく、さらに自施設のみのデータではサンプルサイズ(患者数)が小さく、医薬品の有効性・安全性の評価に必要な十分な情報が得られないこともありました。

JMDCの医療ビッグデータを活用して医薬品の有効性・安全性を評価

JMDCと昭和大は、フォーミュラリ策定に不足している医薬品の有効性・安全性に関する情報を補完するため、共同研究を開始しました。JMDCは1,000万人以上の健康保険組合および扶養者からなるレセプトデータから、評価に必要なデータを昭和大に提供し、BP剤の有効性(骨折の有無:真のアウトカム)を評価しました。JMDCが提供した保険組合由来のレセプトデータは、患者ベースでの追跡が可能であるため、受診や治療の流れを網羅的に把握できるという特徴があります。以下に昭和大が実施した研究方法の概要と結果を記します。

研究方法

・デザイン:レトロスペクティブコホート※(スクリーニング期間 6か月、観察期間 12か月)
※後ろ向きコホート 疾病の要因と発症の関連を調べるための観察的研究の手法の一つ

・対象:JMDCより提供した組合健保加入者およびその扶養者の健康診断情報およびレセプト情報のうち、ビスフォスフォネート製剤(BP剤)投与患者約5,000名のデータ

・評価薬剤:アレンドロン酸(経口、注射)、イバンドロン酸(経口、注射)、ゾレドロン酸(注射)、ミノドロン酸(経口)、リセドロン酸(経口)、エチドロン酸(経口)

・評価項目:観察期間内に発生した骨折(橈骨、上腕骨、尺骨、大腿骨、脊椎)とそれぞれの成分の処方実態

解析結果

条件に合致する患者約5,000名のうち、BP剤の投与開始から1年間の骨折発生割合は、リセドロンが1.04%と最も少なく、アレンドロン酸の1.08%、ミノドロン酸1.24%となりました。リセドロンとアレンドロン酸の骨折発生割合はほとんど差がなく、またアレンドロン酸の処方実績が多かったことから、医療ビッグデータの解析からはアレンドロン酸を第一推奨薬としました。

昭和大学病院のBP剤のフォーミュラリ

医療ビッグデータ解析の結果から、アレンドロン酸が第一推奨と評価されました。また、従来の文献調査(システマティックレビュー)の評価においても、アレンドロン酸が第一推奨と評価されたこと、さらに合理性、経済性も含めて総合的に判断し、昭和大学病院のBP剤の第一推奨薬はアレンドロン酸とされました。

昭和大学統括薬剤部/薬学部 百 賢二 准教授からのメッセージ

医療ビッグデータの解析というと、臨床の薬剤師にとって、手の届かないもの、と認識されることも少なくありません。一方で、量的に巨大な情報を用いることで、単施設では入手不可能なほどの症例数が解析できること、希少疾患の患者情報を入手できることなど、日々の臨床業務の中で想起されたリサーチクエッションを解決に導くことも不可能ではありません。
最近では、医薬品費の抑制を目指し、フォーミュラリは解決策のひとつとして注目されています。現場の薬剤師においては、フォーミュラリ策定は病院経営だけでなく、地域医療への貢献にもつながる手法とも言え、それがゆえにデータの「再現性、真正性、透明性、偏りの少ない情報」に基づき策定する必要があります。医療ビッグデータは、偏りが少ないという観点から、フォーミュラリ策定のための新たなエビデンスの創出に応用可能なものと考えられます。

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株式会社JMDCについて

医療ビッグデータ業界のパイオニアとして2002年に設立され、「データとICTの力で持続可能なヘルスケアシステムを実現する」をミッションとしています。5億4,000万件以上のレセプトデータと2,600万件以上の健診データ(2020年3月時点)の分析に基づく保険者向け保健事業支援、医薬品の安全性評価や医療経済分析などのサービスを展開しています。また、健康度を示す指標(健康年齢)や健康増進を目的としたPHRサービス(Pep Up)などのデータを活用したプロダクト開発も進めております。

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