【名城大学】IT系学生団体を導く文系出身代表
多くの出会いが気付かせてくれた自分らしい生き方
高校時代に不登校となり、自分を見つめ直したことで名城大学への進学を決めたという平手さん。
大学での多くの仲間との出会いで、平手さんの人生観は大きく変わり、文系人間でまったく知らない世界だったITコミュニティ「Idea×Tech」にも参加。最終的には学生団体を立ち上げました。「そんな自分にとても驚いている」と語る平手さんを変えたのは何か?そして今の平手さん自身の生き方や考え方について語ってもらいました。
Q、映像制作を行う学生団体を立ち上げたんですよね。
はい。「Artechs(アーテックス)」という団体で、4年生の5月に立ち上げました。この学生団体では、映像の撮影や編集、3DCG、3次元グラフィックスで立体物を創り出す3Dモデリング、作曲など、それぞれが興味を持ったことを勉強し、時にはコラボしながら楽しく創作活動を行います。個人的には3DCGを使った映像制作や作曲、3Dモデリング、デザインに特に力を入れて活動していました。
Q、そのきっかけとなったのは?
2年生の時にナゴヤドーム前キャンパスの学祭実行委員会に入ったことです。せっかく委員になって活動するなら、何か役に立つことをやりたいと思い、学祭HPを作るWEB班に所属しました。パソコンに興味はありましたが知識がなかったため、詳しく知りたいという思いもあり、ここではWEBサイトの作成を学びました。
このWEB班で出会った先輩が、Idea×Tech創設メンバーのひとりだったんです。私は当時、趣味で作曲をしていたのですが、それを知ってくれていたその先輩から「Idea×Techで作成しているゲームのBGMを作らないか」と誘われ、Idea×Techにも参加するようになりました。Idea×Techで活動する中で、プログラミングだけでなく、エンタメやアートなどを複合させた映像制作にもチャレンジしたいという仲間が複数人いたことから、映像制作に特化したコミュニティ「Artechs」を立ち上げることになりました。
Q、文系でITに関する知識はなかったそうですが、Idea×Techでは実際にどのようなことを担当していたのですか?
ITに関する知識はゼロでした。プログラミングはできませんでしたし、初めてIdea×Techの集まりに参加した時はみんなが何を話しているのかまったくわからない。「こんな世界もあるんだ」とただただ感心するだけでした。
しかし、Idea×Techにはプログラミングができる人はたくさんいましたが、デザイナーを担当できる人が不足していたんです。デザインなら勉強すれば私でも役立てるのではと思いました。デザインにはもともと興味もありましたし。そこでナゴヤドーム前キャンパスからIdea×Techの活動拠点である天白キャンパスまで週に1回通い、アプリケーションのデザインを担当したり、ハッカソンに出場した際にはプレゼン資料を作ったりもしました。他にもゲームを作成するにあたって、登場する3Dのキャラクターも作りました。
そもそもITとはまったく関係ない世界で生きてきた私がIdea×Techで活動しようと思った理由のひとつに、Idea×Techの代表の存在があります。バイタリティがものすごくて、どこからこのエネルギーが湧いてくるんだろうと興味が湧きました。人としての魅力が大きく、Idea×Techに入ってからはしつこく彼について回っていましたね。
Q、ハッカソンにも出場したんですよね。
はい。「Artechs」として、仲間と一緒に4回参加しました。2023年に参加した「技育キャラバン」というハッカソンでは、名古屋の大会で優秀賞を受賞し、東京の大会にも出場。最終的には副大賞をいただきました。その時私はゲームのキャラクターの3Dモデリングとプレゼン資料作成を担当しました。評価されたポイントは、ARとVRを組み合わせたゲームとしての新しさに加え、ゲームBGMやキャラクターもオリジナルでゼロから作ったことでした。この時のメンバーは4人。2人がプログラミングとコーディング、私ともう1人がビジュアルを担当しました。
Q、Idea×Techに入ってご自身で変化を感じたことは?
参加当初は本当に未知の世界でした。3年生でIdea×Techに入り、翌年にはハッカソンで優秀賞まで取ってしまうとは夢にも思っていませんでした。ただ、知らないことを知るのは何よりも楽しかったです。「こんな世界もあるんだ」「プログラミング言語ってこんなにたくさんあるんだ」など新しい発見の連続で、自分の学部にいるだけでは一切関わることのない世界にとにかくワクワクしていました。さらに、ここで活動している仲間が皆アクティブで魅力的なんです。無知な私にもわかるように好きな技術について熱心に語ってくれたり、今まで自分の周りにはいなかったような人がたくさんいたことも楽しかったですね。
変化と言えば、そもそも私は学生団体を立ち上げるような性格の人間ではなかったんです。今、自分がこうして代表をやっていること自体、大きな変化だと思います。ただここに至るまでは、Idea×Techの仲間たちの影響がとても大きく、実は「Artechs」の代表もIdea×Techの代表からの声がけで務めることになったんです。自分ひとりだったら「団体を立ち上げよう!」という思いにはならなかったのではと思います。それだけ大きな影響を受けていたんです。
Q、入学当初は何か活動していたのですか?
1年生の時はコロナ禍でした。入学式はなく、授業もオンラインでした。ただ、それが私にはかえってよかったんです。実は高校を中退しています。中学受験を経て進学校に通っていました。真面目な性格なので、きちんと勉強をして成績も良いほうだったんですが、そういう自分とは別にものづくりが好きな自分もいて、「クリエイティブなことをやりたい」という思いを持ち続けていて、ある日突然学校に行けなくなってしまったんです。“やりたいこと”と“やらなければいけないこと”のバランスが取れなくなってしまったんだと思います。高校に行かなくなってから、映画や作曲の世界にのめりこみ、朝からパソコンで曲を作るようになりました。自由にやりたいことができる楽しさを感じ、心がどんどん元気になっていきました。その後、高卒認定を取得。そこから自分自身を見つめる意味でも心理学が学びたいと思って大学進学を希望。予備校に通い、選んだのが名城大学でした。そんな経緯もあり、ゆるりと大学生活が始まり、“やるべきこと”に縛られなかったことで、2年生からの活動もスムーズに始められたんだと思っています。
Q、名城大学を選んでよかったと思うことは?
とにかく人との出会いがあったことですね。学祭実行委員会の仲間然り、Idea×Techの仲間も然りですが、常に刺激をくれる人たちとの出会いで、視野が一気に広がりました。それもこれも元を正せば、名城大学が総合大学だからなんですよね。今振り返ると、4年生の1年間は本当に楽しく充実していました。これまでで、一番自分らしく過ごせたんじゃないかと思っています。
Q、今後の目標を聞かせてください。
実は、就職活動はしていません。周りが就職活動をしている中、そうでない道に進もうとしていることを不安に感じることもありました。そんなときに、私が専攻した社会学において、「社会の当たり前を疑う」という視点を学びました。そこから、今後の進路選択において、就職という形だけに捉われなくてもいいと思えるようになり、気持ちが軽くなりました。もちろん両親を心配させてしまってはいますが、“そうじゃない道”があってもいいと応援してくれてもいます。
今は不登校時代にお世話になった方と一緒に、学習支援事業の立ち上げに関わらせていただいています。そこでは、自由に活動させてもらっていて、自分のできるクリエイティブを発揮できることがやりがいです。卒業後は、この活動を継続しつつ、さらにクリエイティブを発揮できる環境を模索しようと思っています。これからも多方面において創作活動には関わっていきたいですし、多くの人が楽しいと思えることや、ワクワクしてくれるようなものを創造できる人間になれたら、これ以上の幸せはないと思っています。
人間学部 人間学科4年 平手 梨穂(ひらて りほ)さん
愛知県出身。幼いころから何かを作ることが好きで、テレビでも工作番組が大好きだった。想像の世界に浸ることが多く、家族からは“妄想族”と呼ばれていた。中高一貫の進学校に進学するものの、高校1年生の夏から不登校に。そのまま中退。創作活動を始めるようになり、大学での学生団体立ち上げに繋がっている。