【藤井聡】安倍政権「腐敗」仮説:今、日本がウソで自滅しかかっているのは、安倍政権が「腐敗」しているからではないか?
From 藤井 聡(表現者クライテリオン編集長・京都大学教授)
みなさんこんにちは、表現者クライテリオン編集長、京都大学教授の藤井聡です。
表現者クライテリオンの最新号の特集は「ウソで自滅する国家:安倍・トランプ・文在寅」(https://www.amazon.co.jp/gp/product/B084B14TY6/)では、民主制国家の政治家達のウソによって、国家が危機に瀕している-――というお話を特集していますが、中でも我が国日本の「安倍政権」に関していえば、安倍さん達のウソの背景には、重要な根源的原因があるように思います。
それが、政治的「腐敗」(コラプション)です。
腐敗の問題は、主としてジャーナリズムの問題であって、学術的研究の対象とは別ではないかと思われる方も多いかもしれませんが、実は、腐敗については、様々な研究がなされているのです。
例えば、こちらの論文には、そんな腐敗研究をレビューし、どういう要素が腐敗を導くのか、ということが学術的にとりまとめられています。
まず、学術的に「腐敗」というのは一体何かといいますと、
『公職に携わる人々が自らの私利私欲のために地位を濫用する(という政治現象)』
をいいます。
こういう腐敗が起こると、その国家の成長は著しく阻害され、国民の福利厚生は大きく低迷することになります。
したがって、学術界では、こうした腐敗の研究が様々に進められているのです。
例えば、上記の論文には、腐敗研究を総合的にレビューし、28個の腐敗の原因が実証的な検討も含めて研究されてきていることが報告されています。
その中で、とりわけ、現在の日本・安倍内閣に関連するものを列挙しますと、以下のようになります。
(9)政府の構造:一極集中化は腐敗リスクを高める。今の安倍内閣は、「官邸主導」の体制であり、自民党の他派閥からの抑制が最小化し、腐敗リスクが高まっている。しかも野党からの抑制も最小化しており、同じく腐敗リスクが高まる。現安倍内閣では、「内閣人事局」の設置に伴って官邸を「忖度」する官僚が増加したと言われている現象が、これに対応する。
(15)政治の安定性:政権が長期化すると、腐敗リスクが高まる。憲政史上最長記録を更新し続けている安倍政権は、それだけ腐敗リスクが極大化している。現安倍内閣では、「桜を見る会」の参加者数が年々拡大していったことや、上記の「忖度官僚」が初期時点ではあまり報告されなかったが、年々拡大していったことに対応する。
(16)貧困および(24)経済的繁栄:今日の日本のように、長期的なデフレが続き、経済低迷が続くと、政治的権力の経済価値が高まり、腐敗リスクが高まる。現安倍内閣においては、法人税引き下げや自由貿易協定を望む財界の声が拡大し、実現していったことが、これに対応する(もし、デフレでなく、経済環境が良好であれば、財界も官邸への要望はさして強くなった可能性が考えられる)。
(22)(公務員の)賃金:公務員賃金が高まると、公務員にとっての金銭の相対的価値が低下するため、政治的権限を活用して貨幣を獲得しようとする腐敗傾向が低減する。ただし今の日本の公務員給与は、デフレと政治的圧力故に十分に高い水準にあるとは言えず、腐敗が横行する可能性がある。現安倍内閣では、IRの賄賂事件がこれに対応する。
(23)伝播的波及効果:腐敗した者が政権内に存在しつづけた場合、腐敗が周辺に伝播していく現象。したがって、政権が長く、かつ、強い権限を持った者が腐敗していた場合、政権全体が一気に腐敗していくリスクが高まる。安倍内閣の場合、圧倒的に強力な権限を背景に「大坪氏とちゃんと付き合え」等と高圧的な態度をとる和泉補佐官が長期的に補佐官の立場に居続けることが、これに対応する。
・・・少々専門的な書き方をしましたのでわかりにくいかもしれませんが、要するに、
1) 今日のような長引く不況で民間企業が大変に困っている時代において、
2) 安倍政権のように“安倍一強”と呼ばれるほどに強く、しかも、
3) 歴史上最長と言われる程に長い政権が続くと、
4) どうしても、政治家や公務員が、国民のためじゃなくて、自分自身の利権や権限の維持のために、その政治権力を乱用してしまう腐敗リスクが高まってしまう-――
という話なわけです。
ついてはここでは、安倍政権というのは実はもはや「腐敗した政権」なのではないか、という仮説を「安倍政権腐敗」仮説と呼ぶこととしましょう。
一般に科学では、こういう仮説は、様々な「現象」を観察し、その現象が、その仮説と一致しているかどうかをとおして、その仮説が正しいかどうかを確認していきます。
一般にそういう作業は「検証」と呼ぶのですが、「安倍政権腐敗」仮説が真であるということ(あるいは蓋然性)を支持する現象(証拠)は、実にたくさんあります。
・「桜を見る会」で、公表されると都合の悪い名簿が「ない」と言い張り、ルール違反を犯してまで公文書を廃棄し隠蔽すると同時に、「反社会勢力は定義できない」と閣議決定までしてしまっている、という疑義(が存在する、という現象)。
・様々な刑事罰において、安倍政権を「守る」と目される黒川氏を、ルールを違反してまで定年を延長して検事長に据え、安倍内閣が検察から攻撃されるリスクを除去したという疑義(が存在する、という現象)。
・消費増税をしたことが原因で経済が激しく冷え込んでいるにもかかわらず、それを認めると政権にダメージが及ぶということを危惧し、「景気は緩やかに回復している」という(経済対策をせずに経済にさらなる破壊的ダメージを与えるであろう)明らかなウソを国会で答弁しているという疑義(が存在するという、現象)。
・安倍総理の国会答弁が虚偽答弁であると、内閣にダメージが及ぶということを危惧した官僚が、公文書を書き換えさせたという疑義(が存在するという、現象)。
・・・数え上げればキリがありませんが、これらの疑義の存在は、「安倍政権腐敗」仮説が真である可能性(蓋然性)を強烈に支持しているといわざるを得ません。
・・・だとすると、「代わりがいないから、まぁ安倍さんでいいや」っていう判断は、極めて危険です。
なぜなら、代わりの人はまだ「腐敗する前」の人なので、代わりの人がどんな人でも、「腐敗した一強長期政権」よりも、国益を毀損する量が圧倒的に少ないからです!
是非皆さんも、「安倍政権腐敗」仮説が真か偽か、そしてもし「真」であったとすれば、安倍政権を支持するということがどれだけ恐ろしい国益毀損をもたらすのかを、しっかりとお考えになってみてください。
そして、周りに安倍政権支持の方がおられれば是非、以上の仮説をご紹介差し上げてみてください。
追伸:
腐敗に関しては「悪い奴ほど合理的」と言われていますが・・・このたび、安倍政権の振る舞いを、合理的に説明してみました。これを読むと如何に「安倍政権腐敗」仮説が正しいかということがよくわかると思います(苦笑)。是非、ご一読ください!!
『安倍内閣がなぜかくも幼稚な「ウソ」をつくのか、「政治行動の合理的選択理論」で解説してみました。』
https://foomii.com/00178/2020022116041263906
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