国際航空に伴うCO2排出量の推定と新たな変化要因分析手法の開発に成功 -国際航空とCO2排出量の関係性の「見える化」に貢献-
九州大学大学院経済学府博士課程1年の鬼頭 みなみ大学院生、同大学院経済学研究院の加河 茂美主幹教授、近畿大学経済学部の永島 史弥講師および国立環境研究所の南斉 規介室長の研究グループは、日本の航空会社が運航する国際線に付随して生じるCO2排出量を推計し、国際線の排出量が航空部門の排出量に与える影響と、その増減に影響を与える要因を分析しました。
分析では、運航に付随して生じる排出量のうち特に排出量の多かった飛行時の排出量の増減を、機材燃費、総便数、乗客1人当たり飛行距離、1便当たり乗客数の4つの要因に分解することで、どの要因が排出量の変化に大きな影響を与えているかを明らかにしています。その結果、燃費の良い新規機材の導入によるCO2排出量削減効果が最も大きく、2005~2015年の10年間で270万トン削減されていました。その一方で、総便数の増加と乗客1人当たり飛行距離の増加により、10年間におけるCO2排出量は530万トン増加していました。この結果から燃費の良い機材の導入によるCO2排出量削減効果は限定的であり、燃費の良い機材の導入はCO2排出量削減政策としては不十分であるということが明らかにされました。
本研究成果は、航空産業におけるCO2排出量削減策の効果の検証を行う上で重要なアプローチとして活用が期待されます。本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(17J03544, 20H00081)の支援を受けました。本研究成果は、6月19日(金)付のEnvironmental Research Letters誌(2019 Impact Factor:6.096)にアクセプト公開されました。
【研究者からひとこと】
コロナウイルスが世界的に蔓延している今日、航空産業を取り巻く環境が急激に変化しています。ウィズコロナ社会、ポストコロナ社会における航空需要の急激な変化に伴うCO2排出量のモニタリングは重要であります。本成果は、特に国際航空とCO2排出量の関係性を「見える化」に貢献するものです。
【関連リンク】
経済学部 経済学科 特任講師 永島 史弥 (ナガシマ フミヤ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2323-nagashima-fumiya.html