エリアや時間を指定したネットワークスライシングの実証実験に成功
~世界初!ハイブリッドクラウド構成で構築した5GCと5G SA無線基地局を利用~
株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)、日本電気株式会社(以下、NEC)、Sandvineは、ハイブリッドクラウド構成(※1)で構築した5Gコアネットワーク(以下、5GC)とドコモが提供する5G SAの商用無線基地局を利用し、エリアや時間を指定してネットワークスライスを提供する技術(以下、本技術)の実現に向けた実証実験に成功しました。本技術の実証実験成功は世界初(※2)です。
- 背景・目的
クラウドサービス、AI、IoTなどの利用拡大に伴い、扱う情報量の増加やリアルタイム性が必要な処理など、お客さまの利用用途が多様化しています。自動運転やドローン、ロボット制御など、今後活用が見込まれる領域への対応を含めたお客さまのさまざまなご要望にお応えするため、利用用途に応じたネットワークスライシングの提供をめざし、本技術の研究開発を進めています。
本技術の活用により、イベント会場や災害地域など通信トラフィックが集中する特定スポットで日時を指定して利用用途に応じた最適なネットワークを提供するなど、お客さまの多様なご要望に対応するネットワークを早期に提供することをめざします。また、QoS/QoE(※3)を可視化することで、提供するネットワーク品質の監視が可能となります。
- 実証実験の概要
具体的な実証実験内容は、以下の4点です。
(1) オンデマンドかつ即時対応を実現するネットワークスライス生成技術実証
オーケストレーションプラットフォームであるQmonus(R)(クモナス)(※4)より、ハイブリッドクラウド構成で構築した5GCに対してオンデマンドで利用エリアや時間を指定したネットワークスライスを生成すること
(2) 5Gネットワーク上でのネットワークスライス接続技術実証
ハイブリッドクラウド上の5GCで生成したネットワークスライスと商用環境の5G SAの無線基地局を接続した実通信が利用可能であること
(3) ネットワークスライスを活用した、高精度の映像処理ユースケース実証
ユーザー通信処理装置(以下、UPF)であるARM-Powered UPF(※5)および UPF on Outposts(※6)とインクルーシブコアアーキテクチャ(※7)の要素技術であるISAP(※8)を活用したGPUアクセラレーション機能(※9)を連携することで、高速かつ高精度にAI映像解析ができること
(4) ネットワークスライスの品質監視技術実証
トラフィック、及びアプリケーション識別・制御ソリューション(※10)を活用し、ネットワークスライスごとにQoS/QoEなどのネットワーク品質監視ができること
図.実証実験の構成
利用エリアや時間などの利用用途に応じたネットワークスライスをオンデマンドで生成し、そのネットワークスライスが5Gネットワーク上で利用可能であることをユースケース含めて商用の無線基地局環境で確認しました。
- 今後について
実証実験の中で、ハイブリッドクラウド環境上の5GC、従来のCPUと比較し消費電力を抑えたARM-Powered UPF および UPF on Outpostsを活用しています。これによりネットワークの迅速な構築や分散設置に加え、環境負荷低減が期待されます。
ドコモ、NTT Com、NEC、Sandvineは本技術の導入に向けた検討を進めるとともに、今後も多様化するネットワーク需要へ柔軟に対応するため、5G時代に求められるネットワークスライシングを活用したネットワークの研究開発およびサービス提供を推進してまいります。
なお、「次世代クラウドスライシング」の取り組みは、2024 年1 月17 日(水)からドコモが開催する「docomo Open House 24」へ出展します。
( https://docomo-openhouse24.smktg.jp/public/application/add/32 )
(※1):ドコモがサービス提供を行う5GCとパブリッククラウド上に構築した実験環境5GCを連携した5Gコアネットワーク
https://www.docomo.ne.jp/binary/pdf/corporate/technology/rd/topics/2021/topics_220301_02.pdf
(※2):2024年1月15日時点、ドコモ調べ
(※3):Quality of Service(QoS):ネットワーク上のサービス品質。スループット、レイテンシ、ジッタ等を数値化
Quality of Experience (QoE): ユーザーが体感するサービス品質。実際にサービスを利用した際の体感品質を主観/客観評価の手法によって数値化
(※4):NTT Comが提供するクラウドネイティブアプリケーションおよび強化された配信と運用のためのPlatform-as-a-Serviceテクノロジー
https://sandbox-portal.qmonus.ntt.com/
(※5):ARM-Powered UPF:省電力化を実現したHPE ProLiant RL300 Gen11を用いた高速・低遅延ユーザーデータ伝送可能なARMアーキテクチャ対応UPF
(※6):UPF on Outposts: AWSサービスをローカル・セキュア・低遅延で利用可能なOutpostsサーバー上でキャリアグレードのUPFを構築した融合ソリューション
(※7):日本電信電話株式会社が推進する、6G・IOWN時代を見据えた多面的な融合と協調を実現するための基幹となるネットワークアーキテクチャ
https://www.rd.ntt/ns/inclusivecore.html
(※8):インクルーシブコアを実現する要素技術の一つであり、端末とクラウドでのサービス情報処理を協調させ高速化する技術
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/10/25/pdf/231025aa.pdf
(※9):端末からサービス(本実証ではAIを用いた映像解析)を利用する際の通信開始時に、当該のサービスに専用のGPUを即座に割り当て、GPUにより高速・高精度なAI処理を行う機能
(※10):通信ネットワークに流れているトラフィックのネットワークスライス情報を識別し、スライスごと、加入者ごと、アプリケーションごとのQoS/QoEなどネットワーク品質の数値化、品質監視を行う機能
*「Qmonus(R)」はNTTコミュニケーションズ株式会社の登録商標です。