第9回 新千歳空港国際アニメーション映画祭 コンペティション受賞13作品を発表。機械学習によるプロセスをコメディにした作品が受賞

コンピュータシミュレーションによるエラーや失敗プロセスを作品にするユニークな手法を評価

11月3日(木・祝)から、新千歳空港ターミナルビルで4日間に渡り開催された「第9回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」。3年ぶりに有観客および実地開催でのトークなど、約60本のプログラムを実施し多くのお客様にご来場いただきました。
 6日(日)、本年のコンペティション授賞式を新千歳空港ポルトムホールで行いました。短編・長編含め95の国と地域から応募された2,100作品から、一次審査によって76作品がコンペティションに選出され、長編・短編アニメーションのグランプリを含む13の受賞作品を決定しました。

授賞式集合写真

コンペティション短編部門

コンペティション短編部門グランプリ

『Backflip』(ドイツ、フランス)
Nikita Diakur(ニキータ・ディアクル) 氏

 コンペティション短編部門グランプリは、Nikita Diakur(ニキータ・ディアクル) 氏『Backflip』(ドイツ、フランス)が受賞しました。
 自分の体で後方宙返りを習得するのは危ないからと自身のアバターを使い機械学習によるシミュレーション成功するまでのプロセスを作品にした本作。審査員のTOCHKAナガタ氏は「まるで赤ちゃんのようにいとおしく、その成長をアニマ(魂=アニメーションの語源)が吹き込まれた瞬間に立ち会ったような感覚を覚えた」、Yoshi Sodeoka氏は「テクノロジーはしばしばばかげていて不完全だが、それには魅力的なものがある。この素晴らしい短編映画で完璧なコメディーを作った」と評しました。ニキータ・ディアクル氏には、受賞メダルと賞金100万円が贈呈されました。
 ニキータ・ディアクル氏は、受賞についてアバターで動画コメントを寄せ、日本語で「とても光栄です、ありがとうございました」とコメントし、そのユニークなコメント動画で会場には温かい笑いが起こりました。

日本グランプリ

日本グランプリは、開催国である日本のアニメーション作家や日本で制作された作品が世界に飛躍できるよう、コンペティション出品作品の中で該当する作品から、総合的に最も優れた作品に贈られるものです。受賞したのは、鈴木 竜也(りゅうや) 氏『無法の愛』(日本)です。
 縦長画面からスタートする本作、審査員の小瀬村氏は「縦スクロールでの動きや縦構図の使い方が新鮮」、中盤で画面が縦長から横長に回転する展開は「視聴者にさらに世界観に引き込むアプローチです。これは思わず「巧い!」と声が出た(TOCHKA)」「スマートフォン世代の最高の短編映画の1つ(Sodeoka)」と評しました。
 鈴木氏は受賞について「全く予想外だった。とにかく面白いもの、エッジの効いているものをと思って作った挑戦的なものだったのでエンターテイメントとして受け入れられていること大変嬉しく思う。」とコメントしました。

『無法の愛』(日本)
鈴木 竜也(りゅうや) 氏

コンペティション長編部門

コンペティション長編部門グランプリ

コンペティション長編部門グランプリは、ラトビア、アメリカ、ルクセンブルクの作家 Signe Baumane(シグネ・バウマネ)氏の『マイ・ラブ・アフェア・ウィズ・マリッジ』が受賞しました。
 審査員の柳川あかり氏は、「クリエイティブで知的な女性が、ジェンダーロールとアイデンティティの葛藤に少女時代から悩みながらも自分なりの答えを見つけていく物語」と作品についてまとめ、「主観的に語られると思ったら否や、体や脳で起こっていることを分析し科学的に解説したりと、視点が寄ったり引いたりするテンポが小気味よく引き込まれていきました」と評しました。受賞についてシグネさんは幼少期にサハリンから日本を見ていたことに触れ「日本で私のアニメーション作品が評価されたことは大変名誉であり光栄です」とコメントしました。シグネ・バウマネさんには受賞メダルと賞金30万円が贈呈されます。

『マイ・ラブ・アフェア・ウィズ・マリッジ』ポスタービジュアル
Signe Baumane(シグネ・バウマネ)氏

審査員特別賞

さらに、審査員特別賞に、アメリカの作家 Jonni Phillips(ジョニ・フィリップス)氏の『バーバー・ウェストチェスター』が受賞しました。「答えを求める切実な思い出研ぎ澄まされる今この時代の気分を写しながらも、楽しませる工夫と独自性の追求を高度に融合させた、”規格外”の映画である」と審査員長の渡辺歩氏から評されました。

(ほか、各賞についての審査員によるコメント全文は、本映画祭の公式サイトでご覧いただけます)

実地開催の本来の姿を取り戻した4日間。さらに有料ライブも配信中、有料オンデマンド配信は11日から

 授賞式の総評で、審査委員長を務めた渡辺 歩氏は、「次回は第10回、非常にメモリアルな回に呼ばれたこと感謝申し上げたい。審査員をワクワクだけで引き受けてしまったが、どの作品も激る思いでつくられていて、感動に触れた数日間だった。賞の行方は決まったが、それが価値の全てではない。重要なのは、私たち見る側が向き合い価値について語ることだと思う。この映画祭が、”アニメーションのエアポート”として、次の場所へこの結果を発信し、さらなる議論を世界に促していくことが重要だと思う。長・短編全て作品がそれだけの価値があると思う。アニメーションの作り手として価値と向き合い、価値の探究に飛び立つことが重要だと思うし、その気持ちを新たにした。」と熱い気持ちと共に本映画祭を振り返りました。
 小出実行委員長は、「昨年に増して、実地開催の本来の姿を取り戻した4日間だった。コロナ禍に始まったオンライン配信も映画祭の枠を広げるものになり、明日以降もオンラインでお楽しみいただきたい。」と締めくくりました。
 本年映画祭のトーク&一部上映プログラム(計20本)は、有料ライブ配信プログラム・有料オンデマンド配信プログラムとして期間限定で視聴いただけるほか、無料配信プログラムは公式YouTubeチャンネルでご覧いただけます。詳細は、映画祭公式サイト(https://airport-anifes.jp/)をご確認ください。

新千歳空港国際アニメーション映画祭 について

新千歳空港国際アニメーション映画祭は、北海道と世界を結ぶゲートウェイである新千歳空港ターミナルビル(北海道千歳市)を会場とした、アニメーション専門の国際映画祭です。第9回目の開催となった今年も、国内外の話題作など招待作品の上映はもちろん、アニメーションの“いま”を多角的にお届けするプログラムを展開し、来場者へ最新情報と国際的な出会いを共有できる場を提供します。

■実施概要
名称:第9回 新千歳空港国際アニメーション映画祭
開催日程:2022年11月3日~2022年11月6日
会場:新千歳空港ターミナルビル(新千歳空港シアターほか)
公式サイト:https://airport-anifes.jp/

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