GSアライアンスが、生分解性樹脂と ヒドロキシアパタイト複合体を用いて、人工骨や、再生医療における 細胞の足場材料にも応用できる可能性のある材料を 3Dプリンターで印刷

脱炭素、カーボンニュートラル社会構築のための、環境、エネルギー分野向けの最先端技術を研究開発するGSアライアンス株式会社は、同社で開発している生分解性樹脂や、合成しているヒドロキシアパタイト複合体を用いて、人工骨や、再生医療分野における、細胞を培養する足場材料にも応用できる可能性のある材料を、2022年10月21日(金)に3Dプリンターで印刷することに成功しました。

PLA/ヒドロキシアパタイト複合材料を用いて3Dプリンターで印刷したおもちゃの骨の形状

人間の社会生活においては、骨腫瘍、骨肉腫、骨髄炎、人工関節のゆるみ、骨折など様々な原因により骨が失われることがあります(骨欠損)。この骨欠損の修復に対して、亡くなられたドナーからの同骨種を用いることも可能ですが、ウイルス感染などの懸念や、宗教上などの理由などからハードルが高くなっています。一方で、自家骨移植と呼ばれる、自分の腸骨や腓骨から採取した骨を患部へ移植する方法などがありますが、採取量に限界があり、採取した部位に痛みが高い確率で発生することも知られています。そこでこれらの代替えとして骨補填材や、人工骨の研究開発が行われており、その使用頻度、期待は年々高まっています。初期の人工骨は強靭さを求めてチタンなどの金属やセラミックスなどで作られていました。しかしながら、硬いがゆえに骨組織となじみにくい、子供には長期にわたっての使用が難しいなどの問題ありました。

この問題に対して1980年代から、新素材としてヒドロキシアパタイト(骨の無機成分であり、生体親和性が高く、コラーゲンなどのタンパク質の吸着特性を有するバイオセラミック材料)を使用した人工骨や、β-TCP(リン酸三カルシウム)を使用した吸収置換型人工骨が開発されたことにより、人工骨への需要、期待は一気に高まりました。それでも、移植先に加工して移植するには、硬く形状が合わせにくいなどの課題があり、これに対して、粉末、ブロック、軽石状のものなど様々な形の材料が開発されましたが、実際の手術には使用しにくいなどの問題点がありました。自分の骨に近い組織構造を再現するためには、高い精度で正確な3次元造形する必要があります。この点3Dプリンターを用いると、任意の3次元形状を造形でき、患者様一人一人異なる形状に合わせた、複雑な形状の人工骨造形などを可能とする、オーダーメード医療のための3Dプリンター用材料としての展開も期待できます。また、生体内分解吸収性高分子であるポリ乳酸(PLA)は、生体内吸収性骨接合材などとして手術に既に応用されています。

これらの背景から、同社の森 良平博士(工学)、田中 大貴研究員、岩林 弘久研究員は、この度、ヒドロキシアパタイトとPLAを主材料として複合化させた、3Dプリンターで印刷できる材料を開発しました。そして、印刷により、簡易的なおもちゃの骨、骨を固定するなども可能になりえるスクリューのような構造のものも造形しました。

PLA/ヒドロキシアパタイト複合材料を用いて3Dプリンターで印刷した、骨の固定などにも使用できる可能性のあるスクリューの形状

また、近年再生医療分野において、組織再生のための人工の足場材料に関する研究が盛んに行われています。上述したようにPLAは生分解性、生体適合性を有していますが、細胞応答性を持たないため細胞の接着や増殖には適していません。ここでも、ヒドロキシアパタイトの、骨や細胞との接合性、密着性や再生能を向上できる特性を用いて、複合化させた本材料が応用できる可能性があります。

GSアライアンスでは、今後も、β-TCP(リン酸三カルシウム:ヒドロキシアパタイトより、さらに骨置換性が高い)や、コラーゲンなどの他のバイオマスマテリアルも用いた、より高機能を有する類似材料を検討していき、最終的な目標としては、生体内で分解吸収されると同時に骨組織によって置換されるような人工骨充填材、また再生医療に適した材料を開発することを目指します。

会社概要

商号   : GSアライアンス株式会社
代表者  : 代表取締役 森 良平博士(工学)
本社所在地: 〒666-0015 兵庫県川西市小花2-22-11
事業内容 : カーボンニュートラル、脱炭素、SDGs課題に取り組む環境、
       エネルギー分野の最先端技術の研究開発
       (国連のスタートアップ企業支援プログラム
       UNOPS GIC KOBEに2020年に採択)
URL    : https://www.gsalliance.co.jp/

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