鬼才テレンス・マリック監督作。壮大な自然と戦場の対比、兵士の内面を描写した異色の戦争映画。「シン・レッド・ライン」 12月4日(土)よる7時~BS12 トゥエルビで放送
全国無料放送のBS12 トゥエルビ(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:須磨直樹)は12月4日(土)よる7時より『シン・レッド・ライン』(1998年・米)を放送します。
1.映画『シン・レッド・ライン』
「地獄の逃避行」「天国の日々」の鬼才テレンス・マリック監督が、ガダルカナル島の戦いを題材に映像美をもって戦場の兵士の内面を描写した異色の戦争映画。キャストには、ショーン・ペンをはじめハリウッドスターが名を連ねた。
第49回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞、第71回アカデミー賞7部門ノミネート。(英語・日本語字幕)
■監督・脚本:テレンス・マリック
■出演:ショーン・ペン、エイドリアン・ブロディ、ジム・カヴィーゼル、ベン・チャップリン、ジョージ・クルーニー、ジョン・キューザック、ウディ・ハレルソン、ジョン・トラボルタ、ジャレッド・レト、ジョン・C・ライリー ほか
■コピーライト:©1998 TWENTIETH CENTURY FOX
■番組HP:https://www.twellv.co.jp/program/drama/doyou-youga/archive-doyou-youga/doyou-youga-168/
2.みどころ(映画評論家・立花 珠樹 氏)
■戦場に勝者はいない
幻の巨匠の20年ぶりの作品
ガダルカナル島は南太平洋ソロモン諸島にある火山島だ。太平洋戦争中に日米激戦の地となり、ここで日本軍が敗退したことが、戦局の大きな転機になった。
テレンス・マリック監督『シン・レッド・ライン』は、ガダルカナル島の戦いの戦端を開いた奇襲攻撃に参加した米軍部隊の兵士たちを通し、戦場の過酷な実態を描いた大作だ。
マリックは1943年、米イリノイ州生まれ。高い評価を受けた『地獄の逃避行』(73年)、『天国の日々』(78年)の2本を監督した後、公の場から姿を消し、『シン・レッド・ライン』で約20年ぶりに監督復帰するまでは、幻の巨匠と呼ばれていた。
まず伝えたいのは、この作品は「戦争映画」というイメージを裏切るほど、静かな印象を心に残すことだ。肉弾相打つ激しい戦闘シーンや、銃撃を受けて負傷し死亡する、目を背けたくなる場面もある。だが、そうした場面と同じくらいの重みで、植物や鳥など美しい自然や生き物や、島の住民たちの平和な暮らしが映し出される。そして、何人もの兵士たちの内面の声が重なり、戦争という巨大な悪は不可避なものなのか、死が身近に迫る世界で生きる意味は何なのか、と哲学的な問いが観客に投げ掛けられる。
ショーン・ペン、ニック・ノルティ、ジョージ・クルーニーら出演を熱望した大物俳優たちを配しながら、中心となる二等兵の役には、当時は無名だったジム・カヴィーゼルを起用。「戦争の英雄たちの物語」になりそうな素材を、無名の兵士たちの悲しみを感じさせる作品にしたのが、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した理由でもあるだろう。
ガダルカナル島の戦いでの死者は、日本軍が約1万9000人、米軍が約7000人。約80年前、いずれの母国からも遠く離れた小さな島で、これほど多くの命が失われたのだ。日本人としては、映画の中の「敵」が日本軍であるのはつらいことだが、勝者の側が作った映画からも、勝利の喜びはみじんも感じられない。最前線の戦場に勝者などいない、という沈鬱なメッセージが伝わってくる。
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