【平坂純一】大学の学務の隣に結婚相談所を設置すべし

From 平坂純一(雑文家)

最後の無頼派こと、平坂でございます。
コロナ騒ぎもある段階過ぎていて、妙な慣れが生じている気がします。それは、対策に手慣れた意味と、精神的な苦痛の意味で、戦争末期の「防空頭巾とバケツリレー的」に思えます。今は首都封鎖前の「闇市」も起こっています。
先日の藤井編集長のメルマガで指摘された日本的な感性でしょうが、危機に照らした際の集団のマインドは変わらないのでしょう。

私には日本的な感性が乏しいのか、マスクなしで午後の西武線沿いを散歩していましたら、ベビーカー引いた家族連れを目にすることも増えました。春の陽気と子供の気配は幸せな気分を運んでくれて、世相の不安をしばし忘れさせてくれます。「余計なお世話」を承知で云いますと、東京の家族連れは異様に美貌を持った夫人と仕事が出来そうな少々野暮ったいサラリーマン風の旦那さんの組み合わせが多く、東京の家族は「資力」のウエイトがつよいのではなかろうか?そんな疑問が湧きます。
私の同世代から10歳上辺りの団塊Jr.世代にとって「恋愛、結婚、そして出産」は神話であり、地方を除けば、私の周りで確認することも困難です。あるいは、金持ちの特権化するそれらに「何故、この国の若者は革命運動をやらないのか?」と素朴な疑問も湧いてきます(余計ついでに、女性の美貌に惹かれて結婚する男どものエントロピーの低さも、脳みそだけで結婚している感じがして、田舎者の私には不可思議です)。

そして、去年の暮れ、ある過激な数字が発表されました。「出生数86万人に急減、初の90万人割れ 19年推計」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53727740U9A221C1MM8000/
これについて消費税や景気低迷との関連性も考えられますが、出生数は継続的な低下を辿っており、大台を割ったことで令和の出鼻を挫くようなインパクトがあります。「令和ベビー」など元号離れ激しい若者の頭にはなかったのです。

内閣府の「出生数、合計特殊出生率の推移」は傾向を図解でまとめています。
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/kokufuku/k_1/pdf/ref1.pdf
案の定、「妻の年代別、子供を作らない理由」の8割近くが「お金がない」であり、「県別出生率」の最低は東京など首都圏が並ぶ。ついでに「男性が家事を手伝わない」が諸外国との比較で見えますが、私は全力で無視します。さて、総合すると「仕事がない地方から出て来て大学は出てみたが、妻を家に置いて、子供も養うほどの稼ぎもないため共働きより他なく、社会からなんの圧力も(逆に強力な援助も)ないので、子づくりすることもない」が大多数の気分であるようです。

このメルマガの本題ですが、若い世代による「結婚ブーム」を起こしたい。来年以降の就職率は来たる恐慌により低下が懸念されます。少ないパイの小さなイスを奪い合う就職活動のほかに、結婚の選択肢もあることを大人が導く必要があります。そのために「大学の学務の隣に結婚相談窓口を設置せよ!」を提言したい。これは「共働きの減少化」も含意します。
まずは結婚せねばなりません。「会社で主任にもなったし、手取りも月25万ほどあるぞ!」そんな青年はボーナス4ヶ月分を事務室に振込、登録します。女学生もアルバイトで稼ぐには辛い程度の額で本気度をチェックする。条件に合った男女はヒマに任せて逢引されても困るので、回数を絞ること。一回性を強くするために、連絡先の交換も禁止としましょう。晴れて成婚が確定すれば、登録で振込んだ金額の手数料を引いた額を「結婚資金」として払い戻す。男性は「結婚資金を貯めた男」として胸を張れます。

私の意図は、現在の日本が「内戦状態」にあることを前提とします。長引く経済不況による貧困化と慢性的な政治の空洞。それらによって個人は「新自由主義的人間」に適応させられ、人々は過剰な競争を強いられています。文頭に示した通り、子供ある家族一つ築くのも壁が高く、その上、コロナ事変の自粛戒厳令までくれば、「嫌味な戦時下にある」と看做していいのです。SNSでは「自分の方が賢い!幸せ!豊か!」と情報戦まで展開される始末。かつての内戦と違い、物理的打撃以外のダメージで日本人は疲弊し切っています。
この企画のイメージは、戦前の東京女子高等師範学校(今のお茶の水女子)でして、学園祭の時に「パパ」を見つけた女学生は、卒業後、早々に結婚したと云います…おへちゃで気が利かなければデモシカ先生になったと山本夏彦が書いていたはず(当然、私は知りません)。戦時下であれば、尚のこと建前が厳しい時代。今を戦時下だとすれば、男権的な「結婚して父になる」理想を振りかざしながら、「今は戦時下だぞ!」とでも一喝すれば世間様にも通る筈です。

下関が生んだ大女優・田中絹代のどの映画だったか、絹代が若いビジネスガールで、ある男と逢引をしている。それを見た上司が絹代に「君は英文科の出だから、大学出の彼とも話が合うだろう」と言い放ちます。確実に令和では差別案件ですが、実際のところ「文化資本の有無」(社会学者・ブルデュー)はコミュニケーションを取る上で重要です。研究は別として、大学が労働の予備校化する今、「文化資本を得るための花嫁修業の場」として再建することも期待されるのではないか。

だいぶ「千住の飲み屋じゃないんだから」なメルマガになりましたが、若い女性などにこのネタは思いの外、受けが良く、私に資本が余っていれば展開したい事業でして賛同頂ける方おられれば有難いです。考えても見て下さい。政治主導による経済と社会の秩序を保つことが期待できないとすれば、自分たちのミクロな社会である家族の復権を企図すべきではないか。相対主義の霧の中にある一点の光があるならば、それは自分自身などではなく、私には家族にあると思えてなりません。

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