短鎖脂肪酸で腸内環境を整える免疫力向上のススメ~腸のバリアにほころび 「リーキーガット」に要注意~

監修:大野 博司 先生

2024-09-04 11:00

暑さによる免疫力低下が気になる季節。かつてない猛暑やエアコンによる急激な気温の変化は、疲労感や食欲不振といったいわゆる夏バテの症状を引き起こすだけでなく、体内では免疫力も低下させます。 その結果、体内に侵入したさまざまなウイルスが増殖して感染が進むのを防ぐことができず、体調を崩しがちになります。こうした免疫力低下が身体に与える影響について、いくつかご紹介します。

①倦怠感
免疫力と疲労は密接にかかわっています。仕事などが立て込んで、忙しさのあまり休む暇もない状況が続くと精神的緊張が「疲労」として脳に伝わり、自律神経が乱れて、免疫機能まで低下します。

イメージ 倦怠感

②アレルギー
疲労やストレスが原因で免疫力のバランスが崩れると体内を守るNK細胞の働きが弱り、アトピー、ぜん息、花粉症などのアレルギー症状を引き起こすことがあります。腸には免疫細胞が多く存在するため、腸内環境を整えることで免疫力が自然とアップします。

イメージ アレルギー

③リーキーガット
リーキーガット症候群とは、免疫力の低下により腸壁バリアが壊れて隙間ができ、腸内にとどめられるべき細菌や食物成分が体内に入り込んでしまう現象です。この状態が続くと、下痢や便秘、疲労感、肌荒れ、アレルギーをはじめとする諸症状が現れ、持病の進行を早めます。

イメージ リーキーガット

「リーキーガット(漏れやすい腸)症候群」原因と対策

腸壁バリアが壊れる主な原因は、ストレスや偏った食生活による自律神経の乱れと、それに伴う免疫システムの悪化といわれています。運動などでストレスを解消し、バランスの良い食事を心がけ、心身ともに健康を維持し、自律神経を整えることが重要です。加えて、免疫の要であり免疫細胞が集まる腸内環境をサポートすることも、免疫システムの改善につながります。

バリア機能が正常の場合
リーキーガットの場合

「短鎖脂肪酸」が免疫システムをパワーアップ!

ビフィズス菌などの腸内細菌が腸で作りだす「短鎖脂肪酸」が、免疫システムの鍵といわれています。私たちの周りには、数多くのウイルスや細菌などの異物が存在します。そして私たちの身体には、体内に⼊ってきたそれらの異物を排除するために働く免疫システムがあります。

そのひとつが免疫グロブリンです。異物に対する抗体タンパク質の総称で、主に5種類に分類されます。その中でもIgA(アイジーエー)は、そのほとんどが腸管などの粘膜組織に存在していて、体外に分泌され、粘膜の表⾯でウイルスや細菌などの病原体の毒素を中和して体内への侵⼊を防いでくれます。

例えば「短鎖脂肪酸」の⼀種「酢酸」の働きのひとつとして、IgAの働きをサポートし、⼤腸への病原体の侵⼊を防ぐ役割を果たしています。つまり、「酢酸」によって免疫システムがパワーアップされるのです。

健康な人の腸内では、腸内細菌が十分な量の「短鎖脂肪酸」を産出しています。しかし病気や体調不良が続くと、腸内環境が乱れて、「短鎖脂肪酸」の産生量が減少することがあります。
「短鎖脂肪酸」をつくるためには、腸内環境を整えて元気にし、ビフィズス菌や乳酸菌などをはじめ有用菌と、そのエサになる水溶性食物繊維やオリゴ糖を一緒に摂ることです。これにより腸内細菌のバランスは良くなり、「短鎖脂肪酸」の産生が促進されます。

「短鎖脂肪酸」を増やすためには

「短鎖脂肪酸」を増やすためには

ビフィズス菌とは

主に大腸にすみつく腸内細菌の一種。赤ちゃんのときは腸内に多く存在していますが、加齢とともにその割合が減少するといわれています。ヨーグルトなどの発酵食品、整腸剤、サプリメントなどに含まれています。

ビフィズス菌のエサとなる食材
●水溶性食物繊維(根菜類、きのこ類、海藻類など)
●オリゴ糖、玉ねぎ、ごぼう、大豆など
●レジスタントスターチ(冷ごはん、冷やし芋など)

【終わりに】
腸管表面は、食物抗原や食物が媒介する病原体、常在微生物など、多様な抗原に常時さらされています。腸管上皮細胞は独自のバリア機能を発達させ、潜在的に有害な抗原の体内への移行を防いでいます。しかし、上皮バリアが破壊されると、リーキーガット症候群(LGS)を引き起こします。腸内の菌の多様性を保つことが重要です。
腸内環境は乱れやすいものです。大崩れしないよう日頃から腸によいとされる食事を心掛けましょう。腸内環境を整えて、「短鎖脂肪酸」を絶やさずつくり続けることが、免疫細胞のバランス調整につながり、健康を維持する鍵になります(大野 博司先生)。

【監修】

理科学研究所 生命医科学研究センター
粘膜システム研究チーム チームリーダー
大野 博司(おおの ひろし)先生

1958年東京都生まれ。1991年千葉大学大学院医学研究科修了、医学博士。その後、千葉大学医学部助手、同助教授、金沢大学がん研究所教授、理化学研究所免疫・アレルギー総合研究センターチームリーダーを歴任。2013年理化学研究所統合生命医科学研究センターグループディレクター、千葉大学客員教授。専門は腸管免疫学。

大野 博司(おおの ひろし)先生
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