大豆イソフラボンによるナマズのメス化に成功 女性ホルモンを使わないメス化の実用へ

新宮実験場で飼育研究しているナマズ
新宮実験場で飼育研究しているナマズ

近畿大学水産研究所新宮実験場(和歌山県新宮市)准教授の稻野 俊直(いねの としなお)の研究グループは、大豆イソフラボンを用いたナマズの全メス化に日本で初めて成功しました。
ナマズ養殖においてメスの単性養殖が実現すれば、性差による成長のバラつきを低減することで生産効率を高め、利用が難しい小型のオスの廃棄ロスを削減できます。また、女性ホルモンを使わない全メス化が可能になったことでより安全な、メスの価値が高い他の養殖魚への応用も期待されます。

【本件のポイント】
●大豆イソフラボンによるナマズの全メス化は日本初
●大豆イソフラボンの成分であるゲニステインを溶解した飼育水で飼育することで、全メス化に成功
●成長が早いメスだけを養殖することで、利用の難しかった小型のオスの廃棄ロスを削減

【本件の背景】
ナマズ(Silurus asotus)は、日本を含む東アジアに広く分布し、古くから養殖が行われ、食されてきました。しかし、ナマズ養殖ではメスが1年未満で出荷サイズに達するのに対して、オスは出荷サイズ前に成長が停滞するため養殖期間が長くなります。養殖場によっては性比がオスに偏り、生産効率が低下する事例もありました。そこで、近畿大学水産研究所新宮実験場では、成長の早いメスだけを養殖するための技術開発を目的として、令和2年(2020年)9月から、大豆イソフラボンを用いたナマズ稚魚のメス化研究を行ってきました。

【本件の内容】
ふ化直後のナマズの稚魚150尾ずつを5つの実験区に分け、大豆イソフラボンの成分の一つであるゲニステインを溶解した飼育水で15日間飼育しました。16日目からはゲニステインを含まない飼育水で150日目まで飼育し、生存していた全てのナマズを解剖して生殖腺を調べました。

1μg/Lマイクログラムパーリットル 1μgは百万分の1g
1μg/Lマイクログラムパーリットル 1μgは百万分の1g

結果、メスの割合は、ゲニステイン400μg/L以上の濃度の実験区及び女性ホルモンの実験区では100%でした。
大豆イソフラボンは生物の体内で女性ホルモンと同様の作用を持つ植物エストロゲンと呼ばれる成分の一つで、既にサプリメントとして市販されています。ナマズを含む養殖魚を大豆イソフラボンに浸漬して全メス化に成功した事例は他にありません。大豆イソフラボンによるナマズの全メス化に成功したことで、メスの価値が高い他の養殖魚への応用が期待できることから、今後は、新宮実験場で研究しているチョウザメでも大豆イソフラボンによるメス化の研究に取り組みたいと考えています。

【関連リンク】
水産研究所 准教授 稻野 俊直(イネノ トシナオ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/2074-ineno-toshinao.html

近畿大学水産研究所
https://www.flku.jp/


AIが記事を作成しています