『戦時版よみうり』の閲覧開始について

約1300ページの紙面イメージをデータベース化

2025-06-26 12:00

　太平洋戦争末期に読売新聞社が発行していた「戦時版よみうり」が、本紙記事データベースサービス「ヨミダス」で読むことができるようになりました。戦況が悪化する中、「生産戦士」「産業戦士」と呼ばれた勤労者に向けて、分かりやすく、コンパクトに報道することを編集方針とし、刻々と変わる戦局や国際情勢だけでなく、空襲から身を守る方法や冬用下着の縫い方まで、生活に密着した記事を豊富に載せているのが特徴です。工場や鉱山、農山漁村などの生産現場をはじめ、食糧事情や疎開といった当時の生活ぶりも知ることができ、歴史研究の資料としても活用が期待されます。

4ページ建てのタブロイド判

　「戦時版よみうり」は、読売新聞社が1944年3月1日から1945年3月31日までの約1年間、本紙とは別に発行していたタブロイド判の日刊新聞です。発行部数は11万部という記録が残っています。4ページ建てでスタートしましたが、次第に用紙確保が困難となり、1944年11月1日以降は、紀元節などごく一部の例外を除いて表と裏の2ページ建てでした。

勤労者に「生産増強」呼びかけ

　創刊1週間前の1944年2月23日付の本紙に、「戦時版よみうり」の創刊を発表する社告が掲載されています。それによると、「工場、鉱山、農山漁村等の生産戦士を中心とする国民大衆に（中略）戦意昂揚と生産増強の促進に資し、戦時下の新聞使命の飛躍を期さんとするものであります」と、その狙いが記されています。

　一面は戦況報道が目立ちますが、二面以降は生活情報や読者投稿を掲載し、連載小説や四コマ漫画など娯楽情報も載せていました。主なターゲット層は地方の勤労者で、全国各地の食糧事情や職場の団結の様子も短信の形で取り上げられています。敗戦寸前の状況下、国民が知らされていた戦況や国家総動員の実態も詳細に分かる、貴重な歴史研究資料にもなっています。

5年前に「発見」、全号そろう

　「戦時版よみうり」は、読売新聞社内でも忘れられた存在でした。1945年の空襲で本社の社屋が焼け落ち、所蔵していた新聞や資料の大半が失われたことが背景にあります。戦後、読売新聞社は各地で保存されていた紙面を収集し、本紙の復元に至りましたが、「戦時版よみうり」は、わずか4か月分しか本社に残っていませんでした。

　転機となったのは2020年11月です。近現代史の研究者から、県立長野図書館（長野市）に大量の「戦時版よみうり」が保存されているとの情報が寄せられたのです。調べたところ、図書館の所蔵分と読売新聞社に残っていた分を合わせると、ほぼすべての号がそろうことが判明。これを機に見つかった全号をデータベース化して「ヨミダス」で閲覧できるようにすることを決め、約1,300ページに上る紙面を画像データとして登録。1万5,000本を超す記事や広告に様々なキーワードを付けて、検索ができるようにしました。

閲覧はヨミダスで

　「戦時版よみうり」はヨミダスを導入している図書館のうち、「戦時版よみうり」をオプション契約した図書館で閲覧できます。提供開始は今年8月以降となります。利用時は、検索画面で日付を指定できるほか、地名や人物名などのキーワードで自由に記事を検索することが可能です。紙面イメージが表示されたら、ボタン一つで次のページに移ったり、翌日紙面を表示させたりすることもできます。

　ヨミダスは、1874年（明治7年）の本紙創刊号から最新号まで約150年分、1,900万本以上の読売新聞記事が検索・閲覧できる、読売新聞社が誇るデータベースサービスです。創刊号から現在までの全期間が検索できるプランと、「平成・令和」（1986年～現在）のみ検索できるプランをご用意しています。英字紙「The Japan News」や、現代の国内外のキーパーソン約2万3,000人の人物データも収録されています。