近畿大学発ディープテックスタートアップ※1 が次世代の畜産業創出に挑戦 世界初の「AIビーフ技術」で肉用牛の個体差を可視化

2025-01-10 15:00
AIビーフ技術の概要

近畿大学生物理工学部(和歌山県紀の川市)遺伝子工学科教授 松本和也は、肉用牛の将来の肉質等を採血検査によって可視化できる「AIビーフ技術」を開発し、この技術を用いた枝肉※2 形質予測診断サービスを提供する、株式会社ビーフソムリエ(本社:東京都品川区、代表取締役社長:松岡俊樹)が令和6年(2024年)12月に設立されました。
※1:特定の自然科学分野での研究を通じて得られた科学的な発見に基づく技術で、社会課題の解決など社会にインパクトを与える潜在的技術を開発、活用する新規事業会社。
※2:家畜の頭部・内臓や四肢の先端を取り除いた部分の骨付きの肉。

【本件のポイント】
●近畿大学生物理工学部の研究成果である「AIビーフ技術」で、出荷の1年以上前に枝肉形質を予測できるサービスを提供する、株式会社ビーフソムリエを設立
●肉用牛の肥育状態を分子レベルで計測・可視化できるので、肥育途中での肉質改善や飼料コストの削減を可能とする
●肉用牛の生産効率向上や牧場の経営安定化、次世代の畜産業創出への貢献をめざす

【本件の内容】
近畿大学生物理工学部の松本研究室は、約20年間にわたり畜産業界の肉用牛に関する研究を行っており、令和4年(2022年)に「AIビーフ技術」を世界で初めて開発しました。この技術は、肥育中の牛からわずかな量の血液を採取し、血液中の135種類のタンパク質の情報をAIで分析することで、出荷時期のサシ※3 の状態や、枝肉の重量、口溶けや風味に影響するオレイン酸の含有量などを予測することができます。その後、事業化に向けた取り組みを行い、このたび、肉用牛の枝肉形質の生体予測診断プラットフォームを活用したサービスを提供する、株式会社ビーフソムリエを設立しました。社名は、印象的で分かりやすく、美味しい牛肉というイメージに繋げる目的で、「ビーフソムリエ」と名付けられました。
畜産飼料の海外依存が極めて高い日本では、近年の物価高や円安状態により肉用牛の生産コストが増加して牧場の経営を圧迫しています。さらに、肉用牛特有の個体差(成長のばらつき)があるため、同じコストをかけた牛でも出荷時の単価が異なることも経営圧迫の要因となっています。この成長のばらつきを均一化させるために、出荷の1年以上前の段階で将来の肥育状態を分子レベルで計測・可視化することができるAIビーフ技術を用いることで、肥育途中での肉質改善が可能となります。結果として、次世代の畜産業創出に貢献します。
なお、同社は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム(START)プロジェクト推進型起業実証支援を経て、JSTのSTART事業にて事業プロモーターを務めた元インキュベイトファンド株式会社 仁木隆大氏が代表パートナーを務めるAbelia Capital(東京都港区)からシードラウンド※4 における資金調達を実施しました。
※3:牛肉の赤身肉の間に、白い脂肪が網の目のように入っている状態。脂肪交雑。
※4:創業前または創業後間もない企業が行う資金調達のこと。

【ビーフソムリエの事業内容】
<肉用牛を飼育する生産者等に向けて>
出荷の1年以上前に将来の枝肉形質を調べることができるため、効率的な牛群管理に利用可能で、生産性の向上や経営の安定化に繋がります。また、ブランド牛の特徴をデータから可視化することができるため、他のブランド牛との差別化を図ることができ、品評会等に出品する個体の選択にも役立ちます。飼料会社においては、新しい飼料開発や開発した飼料の販売促進のためのデータとして活用できます。さらに、獣医師においては、科学的根拠に基づいたコンサルティングが可能となります。

<肉牛を取扱う店舗等に向けて>
食肉卸では仕入れ予測からの仕入れ値や量の最適化を行うことができ、食品小売では肉のデータに基づいたブランドの創出やマーケティングにも利用可能です。銀行など金融機関においては、子牛の融資モデルへの活用も考えられます。

【企業概要】
会社名 :株式会社ビーフソムリエ
所在地 :東京都品川区南品川2-2-5 リードシー南品川ビル2F Bizcomfort品川大井町No.34
代表者 :代表取締役社長 松岡俊樹
事業内容:AIビーフ技術を用いた肉用牛の枝肉形質の生体予測診断プラットフォームを
     活用したサービスの提供
設立  :令和6年(2024年)12月
資本金 :2,100万円
ホームページ:https://b-som.com/

【プロフィール】
松本和也(まつもとかずや)
株式会社ビーフソムリエ 社外取締役
所属:近畿大学生物理工学部遺伝子工学科
   近畿大学生物理工学研究科
職位:教授/大学院部長/先端技術総合研究所所長
学位:京都大学大学院農学研究科(農学博士)

松岡俊樹(まつおかとしき)
株式会社ビーフソムリエ 代表取締役社長
近畿大学大学院生物理工学研究科修了 博士(工学)
グロービス経営大学院 MBA取得
経歴:米国ミシガン大学に留学後、大学発ベンチャーに入社。
   外資大手ライフサイエンス企業を経て、外資系の日本法人設立メンバーとして、
   ラボマネージャー、事業所所長、営業部長兼サイエンティフィックアドバイザー等を歴任。

【投資家からのコメント】
Abelia Capital 代表パートナー 仁木隆大氏
このたびは、近畿大学発スタートアップである株式会社ビーフソムリエに投資させていただくことになりました。創業研究者である近畿大学生物理工学部の松本教授とは3年越しの協業となり、今回このような形となり大変嬉しい限りです。「近大といえばマグロ!」そんなイメージを持っている方も多いかと思いますが、近大には牛にも可能性を秘めた技術があります。今回のコア技術となるAIビーフ技術は、畜産業界において長年ブラックボックス化していた育成中の牛の肥育状況を可視化し、肉牛育成、取引に大きな革新を起こし得る技術です。
AIビーフ技術が、畜産を変革し、食肉の未来を良くしていくことを応援します!

【関連リンク】
生物理工学部 遺伝子工学科 教授 松本和也(マツモトカズヤ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/488-matsumoto-kazuya.html

生物理工学部
https://www.kindai.ac.jp/bost/

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