SVPジャパン ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)についてインサイト 3/28公開

~国内市場の現状と将来展望~

Ⅰ. 市場の定義

 低炭素社会の実現に向けて、電力を効率良く使用するためのエネルギーマネジメントシステムの重要性が高まっているが、一般家庭における電気の使用量の把握や効率化を目的としたものがHEMSである。
HEMSの基本システムは、情報収集装置、HEMS対応の住宅分電盤、電力測定装置、及び専用モニターで構成され、ガスや水道メーターとも接続可能。高機能版では、家電製品の遠隔操作や太陽光発電・蓄電システムの制御が可能で、省エネルギーと環境対策への貢献が期待されています。

Ⅱ. 市場動向

 HEMS市場は、ECHONET Lite通信規格策定後、参入企業の増加と共に展開が本格化しました。しかし、高い導入費用と認知度の低さが普及の障壁となっており、2020年は新型コロナウイルスの影響でさらに市場が縮小しました。その後は、着工件数の回復と共に市場も上向きになってきており、ZEH※1の普及推進や卒FIT※2住宅へのHEMS導入の可能性拡大が、中長期的な市場成長を支える要因と見られます。

※1 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス):エネルギー収支をゼロ以下に実現する家。
 つまり、太陽光発電などによる創エネや高機能機器による省エネなどを組み合わせて、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家のこと。

※2 FIT(フィード・イン・タリフ):再生可能エネルギーの固定価格買取制度。再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間、一定価格で買い取ることを国が約束する制度。
 卒FIT:FITにおける買取期間が終了すること。

Ⅲ. 市場規模・予測

 2022年のHEMS市場は、65億円、約10万セットの出荷を記録。新型コロナの影響で一時的に縮小しましたが、市場は回復傾向にあります。ZEHの普及や卒FIT住宅へのHEMS導入拡大が見込まれる中、2023年から2025年にかけて市場は年率5~10%の成長が予測され、2025年には80億円、年間13万セットに達すると見られています。

Ⅳ. マーケットシェア

 HEMS市場は、パナソニック、シャープ、京セラのの寡占状態で、3社で市場の大部分を占めています。
特に、パナソニックが50%以上のシェアを占めており、HEMS対応製品とグループのパナソニック ホームズが強みとなっております。
 シャープと京セラは自社の太陽光発電の関連システムとしてHEMSの利用を提案しています。シャープは、自社のスマート家電と連携させたHEMSの展開にも力を入れています。

Ⅴ. 参入企業の動向

 パナソニックは、HEMS製品・サービスの「AiSEG2(アイセグツー)」を中心に展開し、自社製品の連携強化と機能向上を図っています。また、HEMSをベースにした「スマートHEMSサービス」の開発にも力を入れており、専用アプリを使用した省エネの支援や家電の遠隔制御などの機能を提供しています。
 シャープは、キッチン家電やエアコンなどのスマート家電と太陽光発電・蓄電システムを連携させるシステムとしてHEMSを販売。連携した機器の遠隔操作や家族の見守りサービスなどは、「COCORO HOME」という専用アプリで利用することができます。また、「COCORO ENERGY」サービスを通じて、AIが電気消費パターンと天気予報を基に蓄電量を最適化し、システムの運用効率を高めています。
 京セラは太陽光発電・蓄電システムの関連製品としてHEMSをラインナップしています。また、エネゲートとメディオテックは、電気使用量の可視化を核にした製品を、デンソーはHEMSと電気自動車の連携製品を市場に供給しています。各社はHEMSを通じて、住宅のエネルギー効率化やスマートホーム化を推進しており、今後も技術革新やサービス展開を通じて市場競争が激化することが予想されます。

Ⅵ. 業界構造

 HEMSは、新築の住宅への導入で、積水ハウス、大和ハウス工業、パナソニック ホームズなどの大手ハウスメーカー向けの直販が中心となっています。
 既設の住宅向けでは、太陽光発電・蓄電システムを取り扱う住宅設備機器販売・施工店のルートが中心となっています。

■SVPジャパンについて

「成功に導くビジネスの知を、もっと身近に」をミッションとした、会員制ビジネス情報提供サービスプロバイダー。
会員企業には、ビジネス公開情報に基づくクイックリサーチ、カスタムメイド型プロジェクトリサーチを提供。日本は1974年に創業し、現在世界40カ国に渡るネットワークのメンバーとして、大手企業を中心とした会員企業の意思決定を情報力でサポートしています。
 2021年には事業継承のため、経営体制を一新し、ガバナンスの強化、情報提供サービスの拡大、そして進化することを目指し、第二の創業をスタートしています。

《会社概要》
社名: 株式会社SVPジャパン
代表取締役: 橋本 雅
所在地: 東京都中央区日本橋蛎殻町1-38-9 宮前ビル2F
設立年月日: 1974年7月1日
事業内容: 会員制のビジネス情報提供サービス
URL: https://www.svpjapan.com/

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