「ビル再生100の物語」テナント募集の閾値(シキイチ)とは?
ビル再生100の物語 第37話
テナワンでは、これまで多くのビルの空室対策や賃貸運営を行ってきました。
それぞれの問題を解決してきたビル再生の事例を「100の物語」としてこれから公開していきます。
シキイチ!?
閾値(シキイチ)。
なんか難しい言葉ですね。
境目となる値のことですが、ある時急に状況が好転した時などに「閾値を越えた」なんて言います。
港区の古くて小規模なオフィスでの話です。
テナント募集の最初は募集していることを仲介会社やテナントさんに知ってもらうことから始まりますよね。
でも、他のビルも早くテナントを決めようと必死な中で、これまで通りのやり方のままでは、なかなか多くの人に知ってもらうことは難しいです。
そのビルも、立地以外は取り立てて目を見張る特徴がなかったので当初は苦労しました。
小ぶりな面積で賃料が手ごろだったため、ポツポツ問合せや内見はありましたが、他と見比べられては他で決まってしまう、そんな繰り返しです。
でも実はこのビル、ある時点で大ブレイクします。
一体なにがあったのか?
「とりあえずセオリー通りから始めよう」
と、我々は露出度アップの対策から始めました。
それぞれのネット仲介サイトでの掲載条件がバラバラだったものを一件ずつ修正していき、物件の写真を取り換えてもらったり。
もちろん、募集資料も作り直してネット仲介サイト以外の仲介会社にも紹介をお願いしていきました。
しかし最初はなかなか反応がよくありませんでした。
それに、内見があってもなかなか決まりませんでした。
そこで、オーナーさんにお願いして、部屋の中のいまひとつな部分を手直しすることにしました。
マイナス部分をカバーする、それだけでも
例えば、
前のテナントが退去した後、管理人さんが自前で塗装していた壁がムラになっている部分を塗りなおしたり、
照明器具のカバーが割れている部分を交換したり、
古いままの床材を直すついでにカーペットと幅木や小物の色が合うようにカラーリングを工夫したり、
トイレにウォシュレットを付けたり、
壁のタイルを真っ白に塗装したり、
と、ひとつひとつは大したことのない内容です。
改修費用も大したことありませんが、仕上がったお部屋はまるで印象が違って見えます。
本当はもっと根本からビシっと改修した方が商品力がUPするのですが、当時は
「とりあえずマイナス部分をカバーする程度でおさめる」
ことに注力しました。
その結果…
お部屋が仕上がった後、そのことをそれぞれの仲介会社にきちんと伝えていったところ、問合せが格段に増えました。
なんと一日に5件も内見申し込みが入った時もあり、我々も対応に追われる始末。。
なぜこんなことが起こったのか?
打席数と打率の掛け合わせが、どこかで認知度の閾値(しきいち)を超えたんだと思います。
「あの物件、立地も賃料も手ごろだし、中が小奇麗なら紹介すれば決まる」
と仲介会社の担当にじわじわ認識されていって、あるところで問い合わせが殺到。
この閾値がどこなのか、最初から分かっていれば苦労はないのですが残念ながら目に見えるものではありません。
閾値を超えるまでいろいろとチューニングし続けていくしかありません。