【名城大学】富士山女子駅伝で5連覇 5年連続〝2冠〟の偉業

2022全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)が12月30日に開催され、名城大学女子駅伝部は5年連続5回目の優勝を目指して臨んだ。10月に実施された全日本大学女子駅伝で6連覇を果たし、今年度も駅伝2冠を狙う。今大会に勝てば、5年連続での2大駅伝制覇となる。チームの指揮を執る米田勝朗監督は前日の会見で「目標は当然、優勝。力をしっかり出し切って、最高の走りをしてほしい」と、期待とともに自信をにじませた。コースは前回までと同様、静岡県富士宮市の富士山本宮浅間大社前をスタート、同富士市の富士総合運動公園陸上競技場をフィニッシュ地点とする富士山麓コースの7区43.4km。全日本大学選抜チーム、静岡県学生選抜チームを含む24チームが参加した。午前10時のスタート時の気温は9度。穏やかなコンディションの下、選手たちがスタートした。

柳樂、石松、米澤の1年生トリオが早くも独走体制築く

名城大学は1区から3区までルーキーが並ぶオーダー。4.1kmの1区にはU20世界選手権1500m日本代表の柳樂あずみ選手が任された。今回出場したメンバー7人の中でただ1人、全日本大学女子駅伝を走っていない選手だが、チーム随一のスピードランナーで実力は十分。最初の1kmが3分22秒とややスローペースでの幕開けとなったが、中盤で飛び出た柳樂選手が2位に9秒差をつけてトップで中継所へ。12分46秒の区間賞で名城大での全国駅伝デビューを飾った。「トラックで磨いたスピードを生かして、最後に他の選手を振り切れました。区間賞が獲得できてうれしいです」と自身の成績を喜んだ。
前半の重要区間、2区(6.8km)は石松愛朱加選手が務めた。この区間では日本体育大学のエース・山﨑りさ選手(2年)が後方から追い上げ、一時3秒ほどの差にまで迫られたが、4.5km付近でスピードを切り替え、もう一度突き放す力走。一旦縮まった差を逆に広げ、中継所では2位日本体育大学に10秒差をつけてトップでタスキをつないだ。「6.8kmという長い距離が前日まですごく不安だったんですが、(柳樂)あずみがトップで来てくれて(気持ち的にも)すごく背中を押されました。(日体大・山﨑に)後ろに追いつかれてきたときも『絶対上り(坂)で離してやる』という気持ちで、次の走者に1秒でも前で渡せるように走れたと思います」と石松選手。この区間では北川星瑠選手(大阪芸術大3年)、村松灯選手(立命館大2年)が順位を大幅に押し上げ、それぞれ区間1、2位。石松選手はこれに続く21分19秒の区間3位だった。

3.3kmの3区を担ったのは米澤奈々香選手。高校時代から世代のトップで活躍し、全日本大学女子駅伝でも1区区間賞。2023年2月の世界クロカンU20の日本代表に選出されている力のあるランナーで、距離の長い2区を走る構想が米田監督の頭にあったが、今大会前に右脚の付け根に張りを感じており、大事に至らないよう最短区間のこの区間への起用となった。「大会直前に脚を痛めて、少し不安のスタートとなりましたが、1、2区ですごい勢いでつないでくれたので、その勢いを落とさず絶対に離して先輩につなげようと思いました」という言葉通り、他を寄せ付けない圧巻の走り。従来の区間記録を4秒塗り替える10分03秒の区間新を樹立して、2位との差を43秒に拡大した。

4区増渕も区間賞でリード拡大 5区山本、6区小林の4年生コンビにつなぐ

4区(4.4km)は増渕祐香選手(3年)が任された。堂々と先頭を疾走し、14分09秒で区間賞獲得。4区終了時点で2位の日体大に1分02秒の大量リードを作ったが「自分の役割は、後半区間で楽に走ってもらえるよう差を広げることだと思っていました。自分としてはもう少し差をつけて渡したくて、少し悔しさが残ります」と自身により高いレベルを求めた。「先輩は走りでも、陸上に対する姿勢でも 引っ張ってくれたから、感謝の気持ちをもって、笑顔で渡しました」と熱い想いをタスキに込めて次のランナーへ渡した。

10.5kmの5区は各チームのエースが集まる最長区間。名城大は今季学生長距離界のトップアスリートに成長した山本有真選手(4年)がこの区間を担当した。米田監督は「後ろを引き連れる展開にしたくないので、山本が走る時点で単独走が理想。最低でも10秒から15秒離してくれていれば」と前日の会見で話していたが、目論見以上の大差でタスキを受けた山本選手はのびのびとハイペースを刻む。34分05秒で走破し、見事区間賞に輝いた。「今年は沿道の応援が本当にすごくて、名城大学への応援が絶えませんでした。7kmから9kmくらいはきついのかな、と思っていたんですが、おかげさまでずっと楽しみながら走ることができました」。富士山女子駅伝では4年連続で区間賞を獲得する大活躍で名城大での駅伝を終えた。
6区(6.0km)は今年度のキャプテン・小林成美選手(4年)が務めた。富士山女子駅伝では1年生の時にこの区間、2、3年時には最終7区を走っていずれも区間賞で名城大の優勝に大いに貢献してきた小林選手。「過去に7区も経験して、どれだけきついかわかっているので、1秒でも早く(タスキを)渡したいと思って走りました」と、最後の駅伝でもチームメイトへの強い想いで区間3位の19分56秒で走り切った。「名城大での最後の走りになるので、もっと上を目指した走りで納得いくようにしたかったのですが、うまくいかず終わりました」。今大会での自身の走りには満足しなかったが、4年間さまざまな苦難に見舞われながらも奮闘し、最上級生になってからはキャプテンとして常に先頭に立ってきた小林選手。米田監督にも「うちのエースは小林です」と言わしめるチームの大黒柱だった。これまで共に女子駅伝部を牽引してきた山本選手とのタスキ渡しでは、山本選手から「今までありがとう。がんばってね」と言葉を受け、「感動的なことを言われ、これから走るのにうるっときちゃうよと思いましたが、切り替えて走りました」と笑顔で振り返った。

谷本が笑顔でフィニッシュ 後続に3分以上の大差

アンカーの7区は、3km過ぎから厳しい上りが続く8.3kmの最大の難関区間。谷本七星選手(2年)が初めてこの区間に挑んだ。過酷な上りコースの想像以上の厳しさに表情は険しくなったが、力強く前へ前へと足を進める。競技場にどのチームよりも先に姿を現すと、会場全体から大きな拍手で迎えられた。「競技場に入った瞬間、鳥肌が立つぐらい感動して(チームの)みんなの姿が見えた時に今まで出たこともなかったような力が出ました。最後の(トラック)1周は自分の力をしっかり出し切ることができました」。満面の笑みで、右手を広げた『5連覇』のサインを掲げてフィニッシュテープを切った。個人成績は29分38秒で、区間賞も獲得した。
総合タイムは2時間21分56秒で、2位の大阪学大には3分11秒差の大差をつける圧勝だった。2大駅伝では4大会連続で1区から先頭を譲らないレースを展開。2020年の富士山女子駅伝2区でトップを奪って以来、32区間連続で首位をキープしている。今大会でも、1年生ながらプレッシャーのかかる1区を任された柳樂選手がチームを勇気付けるスタートを切り、そのままの勢いで各選手が駆け抜けた。

米田監督は「今回、名城大学のプライドを守ってくれたのは2区の石松」と難局面を乗り切った1年生を高く評した。「プレッシャーをかけることになるかもしれませんが、こういった(連続で首位を走る)記録が続いていることをあえて伝えていました。そういうプレッシャーを感じながら戦わなくてはいけないチームなので、1年生でも自覚を持ってやってもらいたいと思っていました。差を詰められた時にはもしかしたら逆転されて中継所で2番でのタスキ渡しになるかな、と思いましたが、気持ちが最後の切り替えの部分で出てくれたと思います」と、米田監督。「記録はいつかは途切れることになるのかもしれませんが、今回の大会でも先輩たちがつないでくれた伝統を守ってくれた。これはすごいことだと思います。みんな強い。強いということはこれまでしっかりやるべきことをやってきたということです」と、力を尽くした選手たちに賛辞を送った。

チームを牽引した4年生 4年間〝無敗〟を守る

今年度も最上級生が重要な役割を果たし、女王の座を譲らなかった名城大学。小林選手、山本選手は2大駅伝すべてに出場し、全大会で勝利を収めて卒業することになる。また、直近3年間は2大駅伝出走が叶わなかったものの、小林選手・山本選手とともに4年間競技に励んできた荒井優奈選手も「私たち4年生が感じた責任があったように、後輩もその責任はどんどん大きくなってくるのかもしれせんが、がんばってほしいです」と後輩たちにエールを送る。4年間主務を務め上げた市川千聖さんも、選手とともにチームを作り上げてきた重要な存在。この奇特な主務には記念のタスキがチームからプレゼントされた。
来年度最上級生となる増渕選手は、「先輩がいなくなることで寂しいという気持ちはあるのですが、それより今は、自分も今までの先輩たちみたいにしっかり走りで引っ張っていきたいって気持ちが強いです。これから始まる新チームで、自分が満足いく結果で終えられるようにまたがんばっていきたいと思います」と、すでに気持ちを新たに前を見据えている。小林主将は「このチームを一緒に作ってくれてありがとうという気持ちです。後輩たちの支えに感謝の気持ちでいっぱいです」と、下級生へ感謝しきりだった。

富士山女子駅伝は今大会が第10回の節目。5年連続での優勝は、第1回から5回大会までを制した立命館大に並ぶ史上最多タイだ。全日本大学女子駅伝ではすでに今年度、史上初の6連覇を達成しており、来年度は6年連続での2冠を目指すシーズンへ入っていく。今後の駅伝での勝利は常に「史上初」の冠言葉で形容されることとなるだろう。未だ誰も踏み入れたことのない偉業へ向かって伝統をつないでいく。


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