香り成分「β-カリオフィレン」の吸入に血管保護効果があることを発見 ニコチンによる動脈硬化の抑制効果にも大きな期待

近畿大学大学院農学研究科(奈良県奈良市)博士前期課程2年(当時)岸 千尋、博士前期課程1年 東原 真代、教授 財満 信宏、教授 森山 達哉、稲畑香料株式会社(大阪府大阪市)、三生医薬株式会社(静岡県富士市)らの研究チームは、クローブや黒胡椒などに含まれる香り成分「β-カリオフィレン(BCP)」を吸入することで強い血管保護効果が発揮されることを、マウス実験によって明らかにしました。ヒトにおいても、ニコチンによる動脈の硬化や脆弱化の抑制に繋がる研究成果であると期待されます。
本件に関する論文が、令和4年(2022年)7月22日(金)に、薬物療法に関する専門国際誌"Biomedicine & Pharmacotherapy"にオンライン掲載されました。

【本件のポイント】
●香り成分「β-カリオフィレン」を吸入することで強い血管保護効果が発揮される
●β-カリオフィレンを吸入したマウスの血液や血管でβ-カリオフィレンを検出
●血管疾患予防において、「吸入」という新たな経路を示した研究成果

【本件の内容】
β-カリオフィレン(BCP)とは、フトモモ科の樹木であるクローブから抽出した精油に含まれる天然の揮発性(香り)成分です。近年人気のカンナビジオール(CBD)の代替品として、経口摂取により抗炎症作用や抗酸化作用を示すことが報告されるなど、機能性食品成分としてさまざまな効果があることが知られています。
本研究では、ニコチンで誘導した血管損傷に対し、吸入したβ-カリオフィレンが及ぼす影響について検証しました。マウスによる実験の結果、β-カリオフィレンを吸入した個体において、血液や血管でβ-カリオフィレンが検出され、ニコチンによる動脈の硬化や脆弱化が抑制されることがわかりました。
これまでにも、β-カリオフィレンを経口摂取することによって、抗炎症作用や抗酸化作用を示すことが報告されていましたが、吸入による効果が証明されたのは初めてです。
本研究結果によって、血管疾患予防において「吸入」という新たな経路が示されました。今回のマウス実験で用いたβ-カリオフィレンの安全性や有効濃度から、ヒトでも同様の効果が期待されるため、今後、実際にヒトを対象とした臨床研究を進める予定です。

【論文掲載】
掲載誌:Biomedicine & Pharmacotherapy (インパクトファクター:7.419)
論文名:
Inhaled volatile β-caryophyllene is incorporated into the aortic wall and attenuates nicotine-induced aorta degeneration via a CB2 receptor-dependent pathway
(吸入された揮発性β-カリオフィレンは大動脈壁に取り込まれ、CB2受容体を介してニコチン誘導性大動脈損傷を抑制する)
著 者:
岸 千尋1*、東原 真代1*、竹本 有希1、亀井 萌花1、吉岡 百合2、松村 晋一2、山田 和哉3、小林 崇典3、又平 芳春3、森山 達哉1・4、財満 信宏1・4
*筆頭著者
所 属:
1 近畿大学農学研究科、2 稲畑香料株式会社、3 三生医薬株式会社、4 近畿大学アグリ技術革新研究所

【研究の詳細】
研究グループは、β-カリオフィレンの揮発性に着目し、香りとしてのβ-カリオフィレンの生理機能を明らかにするため、研究を進めてきました。先行研究において、吸入したβ-カリオフィレンが体内に取り込まれて臓器移行することを発見しており(Scientific Reports 2021)、経口摂取だけでなく、吸入によっても生理活性を持つことが示唆されています。
本研究では、ニコチンで誘導した血管損傷に対し、吸入したβ-カリオフィレンが及ぼす影響について検証しました。実験の結果、β-カリオフィレンを吸入したマウスの血液や血管でβ-カリオフィレンが検出され、ニコチンで引き起こされる動脈の硬化や脆弱化が、β-カリオフィレン吸入群では抑制されることがわかりました。動脈の硬化が抑制された血管では、血管の弾力性維持に貢献する弾性線維の破壊が抑制され、弾性線維を破壊する酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ-2)の量が減少していることがわかりました。また、カンナビノイド受容体CB2(CB2受容体)※1 阻害剤「AM630」によってβ-カリオフィレンの効果が減弱化したことから、β-カリオフィレンはCB2受容体を介して血管保護作用を示すことが示唆されました。

【用語解説】
※1 カンナビノイド受容体CB2:地球上で生きていくために本来備わっている身体調節機能=内因性カンナビノイド系(Endocannabinoid system)。内因性カンナビノイド系は、食欲、痛み、免疫調整、感情制御、運動機能、発達と老化、神経保護、認知と記憶などの機能を持ち、細胞同士のコミュニケーション活動を支えている。CB2は、免疫細胞上に多いカンナビノイド受容体。

【共同研究企業】
商  号:稲畑香料株式会社(大阪府大阪市)
所在地 :大阪府大阪市淀川区田川3丁目5番20号
代  表:代表取締役社長 稲畑 勝弥
設  立:大正15年(1926年)4月
事業内容:香料および食品素材製品の製造
従業員 :174名

商  号:三生医薬株式会社(静岡県富士市)
所在地 :静岡県富士市厚原1468
代表者 :代表取締役社長 今村 朗
事業内容:健康食品、医薬品、一般食品、雑貨等の企画・開発・受託製造
設  立:平成5年(1993年)11月
従業員 :680名 ※ 令和4年(2022年)7月現在

【関連リンク】
農学部 応用生命化学科 教授 財満 信宏(ザイマ ノブヒロ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/811-zaima-nobuhiro.html
農学部 応用生命化学科 教授 森山 達哉(モリヤマ タツヤ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/1060-moriyama-tatsuya.html

農学部
https://www.kindai.ac.jp/agriculture/
アグリ技術革新研究所
https://www.kindai.ac.jp/atiri/