2025年度自賠責運用益拠出事業17.7億円を決定 ~自動車事故防止対策や被害者支援に自賠責保険の運用益を活用~
一般社団法人 日本損害保険協会(会長:城田 宏明)は、2月20日(木)の理事会において、各損害保険会社から拠出される自動車損害賠償責任保険の運用益を活用し、新規12事業を含めた48事業に対する総額17億7,466万円の支援を決定しました。
当協会では、1971(昭和46)年から、同運用益を活用して自動車事故防止対策事業や自動車事故被害者対策事業などの多様な分野に対する支援を行っています。
2025年度は、事故当事者や家族等への支援につながるよう、自動車事故被害者対策を中心に取り組むとともに、昨今の交通環境の変化を踏まえて、自動車事故防止対策にもより一層注力することを基本方針としています。事業の詳細は、別紙「自賠責運用益拠出事業一覧」をご参照ください。
別紙URL: https://www.sonpo.or.jp/news/release/2024/pdf/2025_jibai_jigyou.pdf
なお、自動車事故防止対策においては、自動車事故の防止に貢献する様々な取組みに関して幅広く情報を収集するため、2019年度から公募制を導入し、より社会的ニーズに即した事業・研究に拠出するように努めています。
※自動車事故防止対策事業の公募については、当協会ホームページをご参照ください。
(2026年度の公募は、2025年4月頃にご案内予定です)
URL: https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/reduction/jibai-info/

- 2025年度「自賠責運用益拠出事業」概要
(1) 自動車事故防止対策
交通事故防止のための啓発・教育
交通事故防止機器の寄贈
交通事故防止に関する研究支援
(2) 救急医療体制の整備
救命救急医療機器・機材の寄贈
救急医師・救急看護師の育成等
ドクターヘリ事業の推進
(3) 自動車事故被害者対策
交通事故相談等への支援
交通遺児への支援
被害者・家族等の心のケア、講習会の支援
交通事故被害者対策に関する研究支援
(4) 後遺障害認定対策
公募による医療研究助成
(5) 医療費支払適正化対策
医療費支払適正化の取組み
- 2025年度に支援する新規事業・研究の紹介
(1) 自動車事故防止対策
ア. 子どもを含む運転免許を保有しない歩行者対象の安全教育と効果の持続性に関する研究(事業主体:一般財団法人 日本自動車研究所)
・子どもを含む運転免許を保有しない歩行者の交通事故状況や学習機会を調べ、交通安全に関する知識や技能等の習得状況を質問紙調査などで定量的に把握します。また、保護者を対象にインタビュー調査も行い、交通安全教育の効果とその持続性に関する影響要因を抽出し、持続的効果の要因を整理するとともに、学習の場を提案します。
イ. 認知機能の低下に起因する自動車事故の抑止を目的としたマルチモーダル認知症セルフチェックシステムに関する研究(事業主体:徳島大学)
・スマートフォン端末を使って簡単に利用できる認知症セルフチェックシステムを開発します。これを利用することで、認知症の早期発見が可能になり、運転免許の適切な返納や認知機能の衰えを原因とした自動車事故を未然に防止することに貢献します。
ウ. 交通弱者の横断歩道上における交通事故根絶を目的とする歩車分離式信号機の効果と歩行者の信号待機時間への影響に関する研究(事業主体:地方独立行政法人 東京都立病院機構 東京都立広尾病院)
・歩車分離式信号機の事故防止効果や導入が進まない原因を現地調査等によって検証し、結果を学会で発表のうえ、行政や交通安全に関わる関係機関に対して適切な提言を行います。
(2) 救急医療体制の整備
ア. 外傷外科医と外傷外科手術チームの養成事業(SSTT標準コース開催事業)
(事業主体:一般社団法人 SSTT運営協議会)
・日本に不足する専門的な外傷外科医と外傷外科に精通した看護師による外傷外科チームを養成するSSTT(Surgical Strategy and Treatment for Trauma)標準コースの運営を支援することにより、交通事故死者ならびに後遺症患者の減少に寄与します。
イ. 日本病院前救急診療医学会ドクターカー研修会事業
(事業主体:一般社団法人 日本病院前救急診療医学会)
・交通事故と外傷における「防ぎ得る外傷死」を撲滅するため、安全運行と病院前診療の質を高めるための教育研修事業を、全国のドクターカーに従事する関係者を一堂に集めて行います。
(3) 自動車事故被害者対策
ア. 高次脳機能障害者のピアサポート活動支援に関する事業
(事業主体:一般社団法人 どんまいネットみやぎ)
・高次脳機能障害者のピアサポートの研究事業では、同障害を負った人が自身の経験を伝えることで、伝え手と受け手の双方が自身の障害を相対化・客観視し、障害を受け入れて未来を描くことが、社会復帰に向けて有効であることが示されています。
・本事業では、同研究事業で有効性が示された、自身の経験を伝えることに挑戦し、情報発信します。
イ. 頸髄損傷者に対するセルフヘルプ事業
(事業主体:全国頸髄損傷者連絡会)
・当該団体が取り組む、セルフヘルプ、ピアサポート活動、勉強会の活動を支援します。
また、頸髄損傷者の基本的問題に関する調査活動に対して支援を行います。
ウ. 外傷患者(交通外傷)の社会復帰率を最大化するためのテーラーメイド型社会復帰支援システムの構築
(事業主体:東海大学)
・日本全国救命救急センターで外傷患者の症例登録を行い、その大規模コホートの長期予後を2年間限定で追跡しています。本事業では、この追跡期間を3年間延長(総追跡期間5年間)し、複数の臨床情報と自動車事故形態データを組み合わせて分析します。そして、外傷患者の社会状況に応じた『テーラーメイド型社会復帰支援システム』を確立し、外傷患者の社会復帰率向上の最大化・被害の低減に取り組みます。
エ. MRIにおける頚椎加齢変化の縦断的研究
(事業主体:慶應義塾大学)
・30年前に横断的に調査したむち打ち損傷患者、健常者、各500名を縦断的に調査し、頚椎MRIと診察を元にむち打ちの損傷の長期予後を検討します。
オ. 交通事故遺族へのグリーフケア推進に向けた基盤整備のための研究
(事業主体:関西学院大学)
・交通事故遺族へのグリーフケアを推進するための基盤整備に向けて、交通事故による死別が遺族に及ぼす心理的影響や、交通事故遺族を対象とした心理社会的支援の効果、支援者の養成とネットワークの構築などについて研究します。
カ. 交通死亡事故遺族に対するメタバースの活用に向けての調査研究
(事業主体:早稲田大学)
・どのような交通死亡事故遺族がどのような場面、目的でメタバースを活用して再現された故人と再会することでグリーフケアの効果高まるか、逆に、どのような形での故人との再会は避けなければならないかを、交通事故被害者を中心にアンケート調査を実施し、その結果を分析します。
キ. 交通事故等による脳損傷者を対象とした水中環境における運動による当事者等の心理的変化の解明、各地域の支援プログラム構築の研究
(事業主体:一般社団法人 輝水会)
・交通事故等による脳損傷者が、地域の既存のプールを利用し、定期的な水中活動を行う場と機会を定着させながら調査研究を行います。
<ご参考>「自賠責運用益拠出事業」について
・自賠責保険は、交通事故被害者への損害賠償という保険本来の役割だけでなく、交通事故防止や被害者とその家族への支援など、被害者保護を目的とした事業を支援する役割も担っています。そのために役立てられているのが、自賠責保険の運用益です。
・自賠責運用益の使途は、将来の自賠責保険の収支改善のための財源とするほか、自動車事故防止対策、救急医療体制の整備、自動車事故被害者対策等に必要な費用など、被害者保護の増進に資する施策に活用できるとされています(自賠法第28条の3)。
・当協会では、各損害保険会社から運用益の拠出を受け、真に被害者の支援となる事業を心掛け、「自賠責運用益拠出事業」の運営を行っています。