ロシア・ウクライナ情勢 7割の企業が事業継続の観点からも懸念

危機管理担当者への緊急アンケート調査結果

危機管理とBCPの専門メディアであるリスク対策 .com(https://www.risktaisaku.com/)は、緊迫した状況が続くロシア・ウクライナ情勢について、各企業がどのようなリスクに対してどの程度懸念しているかを緊急調査した。その結果、特に物価の上昇やエネルギー価格の上昇を懸念する回答が多く、事業継続の観点からも約 7割の回答企業が現状に危機感を抱いていることが明らかになった。また、海外の拠点別に分析すると、海外に拠点がある企業の方が、拠点を持たない企業に比べ全体に懸念する傾向にあることが分かった。一方、多くの懸念について企業としての対策は決まっておらず、猛威をふるうサイバー攻撃へのリスクについても30%程度しか方向性が見いだせていない傾向が見えてきた。調査は、3月 14日から18日までの 5日間、リスク対策 .comのメールマガジン読者で組織のBCP担当など危機管理に携わる方に対してウェブ上で実施した。217 の回答があり、同一企業からの重複回答や、企業名が書かれていない回答を省いた 205 の有効回答について分析を実施した。

組織として、ロシア・ウクライナ情勢の悪化に伴い、どのようなリスクを懸念しているかを聞いた結果を【グラフ1】に示す。あらかじめ質問としてリストアップした15 の懸念項目につき、リッカート式に「1:ほとんど懸念していない」~「5:とても懸念している」までの5 段階から最も当てはまる回答を1 つを選んでもらった(海外拠点が無いなど、該当しない場合は6 を選択)。【グラフ1】は、「該当しない」を除く回答結果を5 点満点に換算して、平均ポイントが高いもの順に上から並べ替えたもの。選択肢6 は、欠損値として計算から省いた。グラフの色は、回答のばらつきを示す。緑が「1:ほとんど懸念していない」、黄緑が「2:あまり懸念していない」、黄色が「3:どちらとも言えない」、橙が「4:やや懸念している」、赤が「5:とても懸念している」の割合を示している。結果は、最も懸念しているのが「物価全体の上昇」(平均ポイント4.3)、次いで「燃料等エネルギー価格の上昇」(同4. 2)、「景気の悪化」(同4.2)、「サイバー攻撃の激化」(4.1)と続いた。

【グラフ1】
【グラフ1】

海外に拠点がある企業とない企業の温度差

次に、海外拠点がある地域別に、各リスクにどの程度懸念しているか平均ポイントを分析したところ、【グラフ2】が示す通り、ロシアとウクライナに拠点を持つ企業は、海外従業員の安全確保、海外出張者の安全確保、海外拠点の閉鎖・撤退といったリスクに対して、他より突出して懸念している傾向が表れた。一方、ヨーロッパ、中国に拠点を持つ企業と、海外のどこかに拠点を持つ企業は、懸念のレベルに大きな差は見られず、「海外拠点がない」企業の回答は、全体に「海外拠点がある」企業より懸念のレベルが低い傾向が表れた。サプライチェーンの途絶や、自社製品に必要な原材料や資機材の輸入停止・減少、自社製品に必要な原材料や資機材の価格高騰、輸送時間や輸送コストの増加、サイバー攻撃の激化など、海外拠点の有無にそれほど関係がないと思られるリスクについても懸念のレベルが低い。

【グラフ2】
【グラフ2】

決まらない対策の方向性

組織として、それぞれのリスクについてどの程度、対策の方向性が見えているかを示したのが【グラフ3】。リストアップした15 の懸念項目につき、リッカート式に対策が「1:全く見えていない」~「5:すでに対策が決まっている」までの5 段階から当てはまるもの1つを選んでもらった(該当しない場合は6 を選択)。「該当しない」を除く回答結果を5 点満点に換算して、平均点が低いもの順に上から並べ替えた。グラフの色は、回答のばらつきを示す。赤が「1:全く見えていない」、橙が「2:あまり見えてない」、黄色が「3:どちらとも言えない」、黄緑が「4:ある程度見えてきている」、緑が「5:すでに対策が決まっている」。全体に赤と橙が多く、緑や黄緑の占める割合が少ないのは、多くのリスクについて、まだ方向性が決まっていないことを表している。サイバー攻撃については、黄緑、緑の割合が30%ほどあるが、赤や橙も相応にあるため、平均値は2.9にとどまる。該当しないとの回答割合も全体に多いが、最も対策が見えていないのが、第3次世界大戦への発展や、台湾有事への発展など軍事リスクとなった。、物価の上昇などについても、ほとんど平均ポイントは変わらず、対策の方向性が見えてない状況がうかがえる。

【グラフ3】
【グラフ3】

現状を7割が懸念

「事業継続」の観点から、現時点におけるロシア・ウクライナ問題の影響を、どの程度心配しているかの結果を示したのが【グラフ4】。「1:全く心配していない」から「5:かなり心配」の5段階から当てはまるものを選んでもらったところ、「4:ある程度心配」が43.8%と全体の半数近くを占め、次いで「5:かなり心配」(23.9%)が続き、全体の7 割が事業継続についても懸念していることが分かった。一方、海外拠点別にみると、ウクライナ国内に拠点を持つ企業が最も懸念レベルは高く、海外に拠点を持たない企業の懸念レベルは比較的に低い【グラフ5】。
 

【グラフ4】
【グラフ4】
【グラフ5】
【グラフ5】

●専門家のコメント

危機管理・防災の専門の兵庫県立大学教授の木村玲欧氏は「興味深い結果だ。特にサイバー攻撃の激化については、8割近い人が懸念しているにもかかわらず、対策の方向性が見えているのはわずか 3割にとどまっている。今回のウクライナ侵攻は対岸の火事ではなく、自分たちも当事者の一人だという意識でサイバー攻撃に対する備えをこれを機会に充実させることが重要だ」と述べている。 また、リスク心理学の関東学院大学准教授の大友章司氏は「短期的に感情が高まって多くのことを脅威に感じている一方で、時間経過に伴って中長期的には懸念事項や必要な対策も変化していくだろう。今後も継続的な調査によって、人々の脅威がどのように移り変わっていくかを注視する必要がある」とコメントしている。

詳細は、リスク対策.com発行「BCPリーダーズ4月号」に掲載


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