【名城大学】子どもがまちを知る。柳ヶ瀬商店街で「謎解き×まちめぐり」。
やながせこどものがっこう
子どもたちがインスタントカメラを片手に、謎解きしながら商店街をめぐる。面白いと感じたものがあればシャッターをパシャリ。岐阜県岐阜市の柳ヶ瀬商店街で、楽しみながら学びも多い企画を名城生が実施しました。もともとはゼミの取り組みが、有志の活動になったこのプロジェクト。どのように形になったのか、運営の裏側も含めて中心となったメンバーにお話を聞きました。
どんなプロジェクト?
「やながせこどものがっこう」は、都市情報学部の田口ゼミが、2021年から継続的に関わってきたプロジェクトです。岐阜県岐阜市の柳ヶ瀬商店街で、子どもたちがまちを知り、愛着を深めるきっかけとなる、体験型プログラムを考え、実行してきました。企画主体となってきたのは、田口ゼミと、地元の建築設計事務所の「ミユキデザイン」、まちづくり会社の「柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社」の三者。田口ゼミの学生たちは、学外の人たちとも協力しながら、ひとつの企画を作り上げる機会を得てきました。
2022年度には、多彩なプログラムで柳ヶ瀬商店街の面白さを体感できるイベント「柳ヶ瀬日常ニナーレ2022」で、商店街を舞台に親子で謎解きしながらまちをめぐる企画を実施。この内容が2023年度にもつながるものになりました。
2023年度は、田口先生が研究休暇に入るためゼミが開かれないことに。ゼミの3年生を中心に、「やながせこどものがっこう」をどうするかが話し合われました。結果、ゼミ内だけでなく学内から広くメンバーを募り、新たなチームで活動を続けると決めました。当時3年生だった牛田さん、長尾さんらが主導し、メンバーを集め、Enjoy Learningプロジェクトへ申請を行い、「柳ヶ瀬日常ニナーレ2023」への出展に向けて、着々と準備が進められました。
夢中でミッションをクリアしながら、 まちの魅力を自由に見つける子どもたち。
まず当日の様子をレポートしましょう。「柳ヶ瀬日常ニナーレ2023」は、2023年11月19日から12月31日の約1ヶ月半にわたって開かれ、「やながせこどものがっこう」は11月25日と12月9日の2回、プログラムを実施しました。タイトルは、「〜怪盗Xからの挑戦状〜商店街で妖怪を探すこどもRPG」。怪盗Xが岐阜城から宝箱を盗んだために商店街に妖怪が逃げ出してしまった。そんなストーリーに沿って、子どもたちは謎解きにチャレンジし、妖怪たちから与えられるミッションをクリアしていきます。一人ひとりがインスタントカメラを持ち、ミッションで使用するほか、気になったものをパシャパシャと撮っていく。すべての謎を解きゴールした後には、撮影した写真を見ながら、面白いと感じたことを共有しました。
サポート役の学生や妖怪たちの力も借りながら、謎解きに夢中になり、柳ヶ瀬商店街のさまざまなスポットで自由にシャッターを切る子どもたちの姿が印象的でした。ユニークな視点でまちの景色を切り取った写真もいくつも。一緒に参加した保護者の方からも、「目的の場所を訪れるだけでなく、商店街を回遊して、寄り道する楽しさを味わえた」「新しいお店や人に出会えました。子どもにとって、大学生のお兄さん、お姉さんと関われるのも良い経験になるでしょう」といった感想が聞かれました。参加した子どもも大人も、楽しみや発見を得られたようです。プロジェクトリーダーを務めた牛田さんに、企画当日を振り返ってもらうと…
「子どもたちに楽しんでもらえたようで良かったです。大人にはない視点やあふれるエネルギーを感じて、子どもって本当にすごいですね。未就学児や外国人の方、2年続けて参加してくださった方もいました。商店街をふらりと歩くこと自体が実は新鮮な経験で、思いがいけないまちの魅力を見つけてもらえたと思います。柳ヶ瀬商店街を知ってもらうという、企画の目的は果たせたのではないかと」
プロジェクトの運営を通して、 大切なまちがひとつ増えた。
牛田さん、長尾さん、尾口さん、井上さんは、プロジェクトの責任ある役割を担ったメンバーです。
それぞれが得られた気づきや学びについて聞いてみると…
「子どもやまちに関わるのが好きで、昔から「こどものまち」という活動にも参加してきました。こうした取り組みには正解はありません。2年続けて企画ができたおかげで、これから活かせる経験の幅が広がりました」と牛田さん。
事務長として全体の動きを見ながら、重要な書類の作成などを担当した長尾さん。「柳ヶ瀬商店街は歩くだけで面白いまちです。子どもやいろいろな人とめぐると、目を向ける場所もその見方も違う。他者の目を通して、改めてこのまちの可能性に気づけました」。
チラシの制作など広報の責任者を担当した尾口さんは、「協力いただくお店の方とのやりとりをたくさんできて、私自身の柳ヶ瀬商店街との距離も縮まりました。もともと自分の地元をもっと良くしたいという思いもあって、この経験も将来につながると思います」と語ってくれました。
最後に、この企画の世界観を伝える演劇やゴール後の感想共有の部分を取りまとめた井上さん。「柳ヶ瀬をほとんど知りませんでしたが、自然と愛着が湧きました。誰かを連れて遊びにきたいです。グループをまとめる経験を積むと同時に、牛田さんや長尾さんの熱のあるやりとりから学ぶことも多かった」といいます。
リーダーたちの視点。新たなメンバーとの活動で得た成長。
ゼミの活動の枠をこえて、23名のメンバーで進めた今回のプロジェクト。
牛田さんや長尾さんは、自分たちの卒業後も見据えた動きを考えたそうです。
「仮に、田口ゼミに所属していた4年生だけで進めても、次の年は続けていけません。継続できる可能性を高めるためにも、1年生、2年生の人も入れようと考えました。Enjoy Learningプロジェクトも、採択されるとは限りませんでしたが、チームの経験として挑戦してみようと決めたんです。企画を固めていく段階では、経験者だけでなく、新しい人も意見を出しやすい雰囲気づくりを心がけました。大所帯になると全員のモチベーションを維持するのも大切なので。具体的な作業のスケジュールを示すなど、メンバーの足並みを揃える工夫もしました。有志のチームになっても、ミユキデザインさん、柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社さん、柳ヶ瀬商店街のみなさんからに快くご協力をいただけて、本当に心強かったです。
また、関わるメンバーの範囲が広がったことの効果について長尾さんはこう語ります。
「もしも私がメインで企画をしたら、今回の内容にはならなかったと思います。一歩引いた距離をとったからこそ、自分だけではできない経験ができました。妖怪になって子どもと接したからこそできるコミュニケーションもあって、結果的に企画者も参加者もみんなが楽しかった。広くメンバーを募ったからこそ、今までにない学び合いが生まれました」
プロジェクトの継続も考えて門戸を広げた牛田さん、長尾さんたちの決断は、ふたり自身にもこれまでにはない経験や気づきをもたらしたのではないでしょうか。
まちと関わる貴重な実践のその先に…
「やながせこどものがっこうのように、まちと深く関わるチャンスはなかなかありません。今年のチームのように、誰でも気軽に参加できる場所があるのは、良いことではないかと思います」という長尾さん。
やながせこどものがっこうが、次年度以降どうなっていくかはまだ定かではないそうですが、4人だけでなく、関わったメンバーにとって、柳ヶ瀬商店街への思い入れが深めながら、将来も生きる視点や力を磨く機会になったと思います。やながせこどものがっこうの今後の情報もぜひチェックしてください。