誘導体化イメージングMSによる テアニン体内動態の可視化と脳への影響 ~日本食品科学工学会 第68回大会で発表~
福島大学食農学類 平 修教授、太陽化学株式会社(本社:三重県四日市市)らの研究グループは、2021年8月26日(木)~28日(土)に全面オンラインにて開催される日本食品科学工学会(第68回大会プログラム)において、テアニンの体内動態と脳への影響について発表します。
講演番号:3Cp08(一般講演 食品分析)
発表演題:「誘導体化イメージングMSによるテアニン体内動態の可視化と脳への影響」
平 修1、鹿野 仁美1、安部 綾2、小関 誠2
(1 福島大学食農学類、2 太陽化学株式会社)
1. 研究背景について
テアニンは茶葉特有のアミノ酸で、お茶のうまみ、甘みに寄与する成分ですが、近年、リラックス効果など脳への作用が注目されています。これまでの研究から、テアニンを摂取すると、テアニンは脳に移行すること、また、脳内のGABA※1やドパミン※2など神経伝達物質の量を変化させることが示されていますが、テアニンを投与したとき、脳全体でどの神経伝達物質がどのように変化するかについて、詳細に観察されたことはありませんでした。
2. 研究方法について
マウスにテアニンを経口投与させた後、脳におけるテアニンの動態、および各神経伝達物質が何処でどのように変化するのか、イメージング質量分析技術※3を駆使して視覚的に解析しました。
また、比較のため、同じくリラックス効果が知られるGABAでも同様の実験を行いました。
3. 主な研究結果について
テアニン投与30分後から、テアニンの脳側室への局在が観察されました。また、テアニン投与後、GABAが嗅球で、ドパミンが線条体で、それぞれ時間依存的に増加しました。一方、ノルアドレナリン※4は青斑核で時間依存的に減少しました。
テアニンは脳への移行が観察された一方、投与したGABAの脳内への移行は観察されませんでした。
4. 考察と今後の展望
GABA、ドパミンは抑制系、快楽系物質、ノルアドレナリンは興奮系物質であることから、テアニン投与により脳内では興奮系よりも抑制系・快楽系物質が増加することが視覚的に示されました。今後、さらに詳細に解析することで、テアニンの脳機能調節作用のメカニズムが明らかになることが期待されます。
用語説明
※1 GABA
γ-アミノ酪酸(gamma-Aminobutyric acid)。アミノ酸の一種で、脳内で主に抑制性の神経伝達物質として機能し、鎮静、抗痙攣、抗不安作用などに関わる。GABAは様々な食品にも含まれるが、血液脳関門を通過せず、体外からGABAを摂取しても、それが神経伝達物質としてそのまま用いられることはないと考えられている。本研究のイメージング分析においても投与したGABAが脳内に移行しないことが確認された。
※2 ドパミン
快く感じる原因となる脳内報酬系の活性化において中心的な役割を果たす神経伝達物質で、運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる。ノルアドレナリン、アドレナリンの前駆体でもある。
※3 イメージング質量分析技術
組織切片上で2次元的に質量分析を行うことで、生体組織上における目的化合物の分布を視覚的に解析する技術。
※4 ノルアドレナリン
興奮系の神経伝達物質で、覚醒、注意、ストレス反応などに関わる。
会社概要
商号 : 太陽化学株式会社
代表者 : 代表取締役社長 山崎 長宏
所在地 : 〒512-1111 三重県四日市市山田町800番
設立 : 1948年1月
事業内容: 乳化剤、安定剤、鶏卵加工品、機能性食品素材等の開発、製造。
資本金 : 77億3,062万円
URL : https://www.taiyokagaku.com/