トークレポート|P.I.C.S.「コミッションワークにおけるアニメーションの導入と実践」

11月2日(木)〜6日(月)まで開催中!世界初の空港内映画祭「第10回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」

コマーシャルフィルム、ミュージックビデオ、空間映像など、企業等のクライアントから依頼を受けて制作される「コミッションワーク」は、いまやアニメーションの主要な表現の場のひとつです。
開幕初日のトークプログラムは「コミッションワークにおけるアニメーションの導入と実践」として、映像というフィールドでジャンルを問わず新しい驚きを生み出すプロダクション「P.I.C.S.」から池田一真氏と稲葉秀樹氏の2名のディレクターをゲストにお迎えし、コミッションワークとアニメーションの関係を紐解きました。

池田 一真

池田 一真(映像ディレクター)
企画 / 演出。アイデアやユーモアに溢れた映像表現を得意とし、手法にとらわれない柔軟なディレクションで、TVCMから企業ブランディング映像、MV、アニメーションコンテンツやアトラクション用の空間映像まで、多岐に渡る媒体やジャンルを手がける。主なアニメーション領域での活動に、サンライズ×アソビシステムによるオリジナルプロジェクト『Artiswitch』(全6話)の監督や、テレビ朝日「クレヨンしんちゃん」オープニング映像のディレクションなど。

稲葉 秀樹

稲葉 秀樹(アニメーションアーティスト / 映像ディレクター)
CG映像製作会社を経て映像クリエーターとして活動。
2017年 Red Hot Chili Peppers「Getaway Tour Viz」に映像作家として参加。海外のアーティストとコラボレーションした作品は、Pictoplasma、Reading & Leeds Festivals、This is Colossal、The Vergeなどの映画祭やメディアで上映、掲載されている。”SlowlyRising”にて第20回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。独自の手法を用いた、繊細で緻密なアニメーションのスタイルを得意とし、CM、MV、OOHなど幅広く手掛けている。


冒頭では、お二人の直近のコミッションワークやお二人のターニングポイントとなる代表作についてのお話からスタートしました。池田さんは、livetune adding 中島 愛「Transfer」、そしてサンライズ×アソビシステムが手掛けるオリジナルアニメーション『Artiswitch(アーティスウィッチ)』を、稲葉さんからは、圧倒的な密度のアニメーションを取り入れたミュージックビデオ「Slowry Rising」と、その作品の延長的なコミッションワークとして作られた2019年の資生堂「Holiday Campaign」の動画が紹介されました。

与えられた条件の中でどうクリエイティビティを発揮するか、仕事に対する姿勢について

クライアントからの要望や目的といった枠組みがあるコミッションワークと、自分のクリエイティビティのバランスに対して、お二人共に、"そもそもの企画を一番大事に、そこからどう表現していけるか"をまず考えているとのこと。
池田さんは、「求められる方がテンションが上がるというか、何を期待されているんだろうと考えて応えられるように」したいとコミッションワークへのモチベーションについて語りつつ、自分が作りたいものよりも各セクションのメンバーたちと面白いものを作っていく方が好きという制作スタイルやその姿勢について、また稲葉さんはコミッションワークの中でも「コンテとコンテの間の部分が埋まっていない、そこが結構自由なポイントだと感じている。自分がこの案件にどんな遊びを入れられるだろうか」と楽しみながら取り組んでいると話しました。

池田 一真 氏
稲葉 秀樹 氏

プロダクションに所属するという選択

また、お二人はフリーランスながら「P.I.C.S.」というプロダクションに所属しています。さまざまな働き方がある中、マネジメントを受けながら活動することについて聞きました。
マネジメント契約ではあるものの、お二人ともフリーランスであり自分の看板で仕事をしている意識であるようです。池田さんはマネジメント契約のメリットに「スケジュール管理や予算等の交渉などがすごい苦手」とマネージャーに依頼することで制作にかける時間を確保している「逆にそうじゃないと今は終わらない状態」と言います。
また、稲葉さんは、自身の作品や制作スタイルに発注が来るようになっている一方で、それ以外の仕事がなかなか出来なくなることについて触れ、「自分のスタイル(の作品制作)もやりつつ、全然違う案件も受けられる」という仕事の選択肢を広げることができるメリットについて話しました。
司会の田中 大裕氏は、マネジメントを受けることが制約になると考える人がいるかもしれないが、むしろそれによって自由を確保出来る可能性が広がるというところが興味深いと締め括りました。

会場の様子(オアシスパーク)と司会進行の田中大裕氏(スクリーン左)

P.I.C.S.の映像作家がVJとして参戦!OTO TO TABI × NEW CHITOSE 2023 エアポート音楽会

11月5日(日)17:45からは、OTO TO TABI × NEW CHITOSE 2023 エアポート音楽会を開催。シンガーソングライター・澤部渡 (スカート) 氏による弾き語りライブと、そのVJにP.I.C.S. management 所属の渡部 康成 氏をお招きします。
新千歳空港国際アニメーション映画祭では、これまでgroup_inou、Homecomings、トクマルシューゴらのライブを行い、音楽と音に注目する様々なプログラムをお届けしてきました。
今年映画祭10回目を記念して、2011年から札幌市内でインディペンデントの音楽イベントを開催する「OTO TO TABI」とコラボレーション!
映画館の大スクリーンに包まれた特別な音楽会をお楽しみください。

新千歳空港国際アニメーション映画祭とは

新千歳空港国際アニメーション映画祭は、北海道と世界を結ぶゲートウェイである新千歳空港ターミナルビル(北海道千歳市)を会場とした、アニメーション専門の国際映画祭です。
記念すべき10回目の開催となる今年は、2023年11月2日(木)~11月6日(月)の5日間で、国内外の話題作など招待作品の上映はもちろん、アニメーションの意義を拡張する様々なプログラムを展開し、アニメーションの意義を拡張するような新しい価値を生み出す「遊び場」として、エネルギーを持ち帰ることができる文化交流拠点の創造を目指します。

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