【名城大学】都市情報学部の稲葉千晴教授が「杉原千畝本」の増補改訂版を刊行

最新の千畝研究の成果と「杉原千畝ウクライナ難民募金」の活動報告を盛り込む

都市情報学部の稲葉千晴教授がこのほど、ホロコースト(大量虐殺)からユダヤ人を救った人々を概説して2020年7月に出版した著書「ヤド・ヴァシェームの丘に」の増補改訂版を刊行しました。第二次大戦下のリトアニアでユダヤ人難民に「命のヴィザ」を発給した外交官・杉原千畝に関する最新研究を解説し、ロシアのウクライナ侵攻後に稲葉教授と学生たちが取り組んだウクライナ難民募金の経過なども報告しています。

増補改訂版を手にする稲葉教授

イスラエルのエルサレムにある「ヤド・ヴァシェーム」は、ホロコーストで命を奪われた多くのユダヤ人と、ナチスの脅威に立ち向かい、ユダヤ人を助けた「有徳の人」を追悼する場所です。長年、千畝を研究する稲葉教授は著書の初版では、千畝や映画「シンドラーのリスト」で知られるオスカー・シンドラーら有徳の人々による32の事例について、その略歴や人道的行為、緊迫した救出劇などを具体的に紹介しました。

増補改訂版では、「杉原千畝と『命のヴィザ』」の章に、初版の刊行から4年の間に積み重ねた研究の成果を加筆しました。多くのユダヤ人難民を救うことができたのは、千畝の功績に加え、難民の支援に尽力したリトアニア政府、難民の旅費を支援するため全米から募金を集めた米ユダヤ基金、そして、難民自身の不撓不屈の精神が欠かせなかったことを解説。稲葉教授は「千畝だけではユダヤ難民は救えなかった」と指摘してします。

稲葉教授「あらためて募金に協力していただいた多くの方々に感謝」

また、「増補改訂版によせて」と題して巻頭に新たに記した章では、2022年2月のロシアによるウクライナへの侵攻後、稲葉教授が学生らとともに「杉原千畝ウクライナ難民募金」を立ち上げた経緯や街頭募金活動の回数、5000人以上から寄せられた善意の総額、募金の協力者、そしてリトアニアに逃れたウクライナ避難民への支援の内容と経過、避難民の厳しい現状なども紹介しています。

ロシアがウクライナに侵攻した当日、リトアニアを訪れていた稲葉教授。翌日にはポーランドに入り、両国で緊迫した状況を目の当たりにしました。稲葉教授は「千畝の研究を進めて米ユダヤ基金による募金もユダヤ難民を救う要因となったことが分かり、千畝研究者として募金の重要さを痛感して難民募金を始めました。この増補改訂版はその報告書でもあり、あらためて協力していただいた多くの方々に感謝します」と話しています。

増補改訂版「ヤド・ヴァシェームの丘に 杉原千畝とホロコーストからユダヤ人を救った人々」(成文社)は四六判、192ページ。定価は1800円+税。

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