医学部教授2名が「Highly Cited Researchers 2021」に選出 臨床医学部門において本学より同時に2名受賞の快挙!
近畿大学医学部(大阪府大阪狭山市)内科学教室(消化器内科部門)主任教授 工藤 正俊と、内科学教室(腫瘍内科部門)主任教授 中川 和彦が、世界的な学術情報サービス企業、クラリベイト・アナリティクス社(Clarivate Analytics)の「高被引用論文著者(Highly Cited Researchers 2021)臨床医学部門」に選出されました。
これは、世界の全論文のなかで引用回数が上位1%に入る研究論文を、複数発表し続けていることを意味します。臨床医学部門において、本学から同時に2名の受賞となり、また医学部主任教授 工藤 正俊は3年連続の受賞となります。
【本件のポイント】
●医学部主任教授 工藤 正俊と、同主任教授 中川 和彦が、クラリベイト・アナリティクス社「高被引用論文著者 臨床医学部門」に選出
●臨床医学部門において、本学から同時に2名の受賞
●がん治療に関する論文引用が多く、近畿大学医学部および近畿大学病院が世界におけるがん治療を牽引していることを示す
【本件の内容】
「Highly Cited Researchers」とは、クラリベイト・アナリティクス社が運営する論文検索サービス「Web of Science」に収録の学術誌に発表された論文について、発表から1年間の被引用件数を分析したものです。自然科学及び社会科学の21分野に、一人の研究者が複数分野で論文を発表している場合の合計被引用件数を示すクロスフィールドカテゴリーを加えた、合計22分野における論文の被引用件数が世界の上位1%に該当するものを高被引用論文として定義し、平成26年(2014年)から毎年その著者がリストアップされています。
令和3年(2021年)にリストアップされた22分野6,602名のうち、日本の機関に所属している研究者は89名、本学からは臨床医学部門で、医学部主任教授 工藤 正俊、同主任教授 中川 和彦の2名が、名誉ある受賞となりました。なお、臨床医学部門の受賞者で、日本の研究機関に所属している日本人は、本学の教授2名のみとなります。
【受賞者紹介】
(1)工藤 正俊(くどう まさとし)
近畿大学医学部内科学教室(消化器内科部門)主任教授
専門:消化器内科学
論文出版数(Publications):1,354
総引用数(Total Times Cited):39,976
※ 令和3年(2021年)11月16日現在
Publon:https://publons.com/researcher/3112744/masatoshi-kudo/metrics/
<受賞コメント>
現時点における治療法の限界(Unmet needs:解決しなければならない問題点)を解決するために、これまで多くの臨床試験に取り組んできました。その結果、日本ならびに世界の肝癌の治療体系を変えることができました。当然、発表した英文論文は世界中の多くの研究者に読まれ、また彼らの論文に引用され、標準治療として確立されてきました。結果として世界の患者さんの生命予後延長に寄与していると自負しています。解決された最新の標準治療は、世界の人たちと一緒にガイドラインとして英文で発表してきました。このような私の論文の被引用回数の多さが、今回の3年連続受賞につながったのだと思います。過去2年間は私が日本人唯一の受賞者でありましたが、今年は同じ近畿大学医学部より中川教授も受賞され、日本人受賞者2人ともが同じ近畿大学ということになります。このことは、如何に近畿大学の臨床レベルと研究のクオリティが高いかということを物語っていると思います。しかし、臨床研究に終わりはありません。引き続き来年も連続受賞できるよう、未解決の問題にチャレンジして精進を続けたいと考えています。
<直近の論文紹介(一部)>
論文名:
Patient-reported outcomes with atezolizumab plus bevacizumab versus sorafenib in patients with unresectable hepatocellular carcinoma (IMbrave150): an open-label, randomised, phase 3 trial
(アテゾリズマブベバシズマブ併用療法対ソラフェニブの比較試験(IMbrabe 150)における患者申告のQOL)
掲載誌:
The Lancet Oncology, 22(7):991-1001, 2021.
(IF:41.316@2020)
URL:
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1470204521001510?via%3Dihub
論文名:
Atezolizumab plus Bevacizumab in Unresectable Hepatocellular Carcinoma
(切除不能肝細胞癌におけるアテゾリズマブベバシズマブ併用療法の有効性と安全性)
掲載誌:
The New England Journal of Medicine, 382(20): 1894-1905, 2020.
(IF:91.245@2020)
URL:
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1915745?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed
(2)中川 和彦(なかがわ かずひこ)
近畿大学医学部内科学教室(腫瘍内科部門)主任教授
専門:腫瘍内科学
論文出版数(Publications):537
総引用数(Total Times Cited):31,435
※ 令和3年(2021年)11月16日現在
Publon:https://publons.com/researcher/4784574/kazuhiko-nakagawa/
<受賞コメント>
肺がんは最も悪性度の高い腫瘍として恐れられてきました。その転機となったのが分子標的治療薬ゲフィチニブの登場でした。私は、ゲフィチニブ(イレッサ:EGFRチロシンキナーゼ阻害剤)による著効例を世界で初めて経験した臨床試験を、治験責任医師として1998年から実施し、驚くべき成果を報告することになりました。強力な抗がん剤治療をもってしてもびくともしなかった肺がん治療に、転機をもたらした瞬間でした。EGFR遺伝子に特徴的な遺伝子変化が起こると肺腺がんが発生し、このがんはゲフィチニブ著効します。「がんは遺伝子の病気である」ことが治療現場で証明されました。ALK遺伝子異常のある肺がん(ALK肺がん)にはALK阻害剤、ROS1肺がんにはROS1阻害剤、MET肺がんにはMET阻害剤、BRAF肺がんにはBRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用療法、RET肺がんにはRET阻害剤と、次々と連座反応のように「遺伝子異常」に対応する「分子標的薬」が開発され、もはや肺がんは「最も悪性度の高い恐るべき腫瘍」ではなくなったのです。免疫チェックポイント阻害剤を含めて多くの新薬開発に医局員と共に参加することができ、代表して多くの論文の著者となることができました。今回の受賞は臨床試験に参加された患者さんとご家族、および臨床試験に関わってくれた多くの医療スタッフのおかげです。心より感謝申し上げます。
<直近の論文紹介(一部)>
論文名:
Trastuzumab Deruxtecan in HER2-Mutant Non–Small-Cell Lung Cancer
(HER2遺伝子変異陽性非小細胞肺癌におけるエンハーツの効果)
掲載誌:
The New England Journal of Medicine, in press, 2021.
(IF:91.245@2020)
URL:
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2112431?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub++0pubmed
論文名:
Ramucirumab plus erlotinib in patients with untreated, EGFR-mutated, advanced non-small-cell lung cancer (RELAY): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial
(未治療EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌におけるラムシルマブ+エルロチニブ併用療法(RELAY試験))
掲載誌:
The Lancet Oncology, 20(12):1655-1669, 2019.
(IF:41.316@2020)
URL:
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1470204519306345?via%3Dihub
【関連リンク】
医学部 医学科 教授 工藤 正俊(クドウ マサトシ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/569-kudou-masatoshi.html
医学部 医学科 教授 中川 和彦(ナカガワ カズヒコ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/755-nakagawa-kazuhiko.html