「ビル再生100の物語」ジサゲしたお話
ビル再生100の物語 第28話
テナワンでは、これまで多くのビルの空室対策や賃貸運営を行ってきました。
それぞれの問題を解決してきたビル再生の事例を「100の物語」としてこれから公開していきます。
ビルじゃありませんが、足立区の一戸建ての問題を解決したお話です。
でも、当初の見立て通りいかなかった事例です。
足立区の一戸建ての問題を解決したお話
もうずいぶん長い間使っていなかった一戸建て。
土地は借地(旧法)で、地代は安いものの
「もう使ってないんだしもったいない。なんとかならないかしら?」
というご相談でした。
当初の計画通りにはいかず……
最初は、
「借地でも建物を直せば貸せるんでは?」
「最悪でも借地権として買ってくれる人はいるはず」
という見込みで検討を開始しました。
しかし、もともと教室として建てられていたことと、とにかく古いので住宅へのリノベーションは相当がコストがかかるうえに、誰かが建物を買った場合は
「借地権の譲渡承諾料」
を地主さんに払わなければいけません。
借地物件の場合、これがネックになってどうにもできないことがよくあります。
今回も、地主さんとの話ではソコがネックに。
承諾料が高額で、どう計算しても収支が合いません。
建物オーナー(借地人)が自分で直せば承諾料はかかりませんが、今回それはしたくないとのこと。
戸建て業者さんにも相談しましたが、周辺の相場から逆算して解体費用や建築費などを引いていくと、やはり承諾料がネックでとても値段をつけられないということが判明しました。
考えあぐねた結果……
考えあぐねた末の結論は、
「借地契約を解約して地主さんに引き取ってもらう」
でした。
はっきり言って敗戦処理です。
税務上の借地権割合での評価では、更地の60%もの価値があることになっているのに、ビジネス上はゼロ(というか、マイナス評価)。
釈然としませんが、今のまま地代を払い続けるよりはいい、ということに。
地主さんとの話し合いの末……
本来、借地契約を解約する場合は、建物を解体して更地に戻す
「原状回復義務」
があるのですが、建物オーナーがお金を出して更地にするのでは泣きっ面にハチです。
交渉の結果、わずかですが建物を買い取る形にしてもらい、借地契約を解約することにしました。
地主さんは解体費用を自分で出さないといけませんが、更地になれば借地させている土地よりも断然価値が上がりますから、これはお得です。
残った建物も地主さんが自分で直せば有効活用することも安くできます。
一方で、使わなくなった建物でも借地権を持ったまま相続すると、価値ゼロの評価のものでもきっちり相続税評価の対象になってしまいます。
戦後のいびつな状況下で借地人に有利な旧借地借家法ができた経緯があるわけですが、デフレ&空室率急上昇のこれからは、こういう案件が増えるのかもしれません。