第2回東京中野文学賞 大賞は作家として活躍する羽田圭介さんが受賞

応募総数216作品の中から大賞・佳作・中野区賞・クラファン賞の発表、授与が行われる

中野から世界に向けて新たな物語を発信することを目的につくられた「第2回 東京中野文学賞」(主催:一般社団法人中野区観光協会・東京中野文学賞実行委員会)の授賞式が3月29日(土)、中野区役所内のイベントスペース、ナカノバで開催。約200人の観客が集まる中、大賞、佳作、中野区賞と今回新設されたクラファン賞の発表、授与が行われました。
プロ・アマ、年齢・ジャンルを問わず、幅広い作品を募集。応募総数216の中から一次選考で46編、二次選考で8編の作品が選出。
小説家の中島京子氏、映画監督の篠原哲雄氏、ロックミュージシャンの大槻ケンヂ氏、作家のエージェント会社代表、小説家の鬼塚忠氏の最終選考委員により8作品の中から選ばれたのは下記の4作でした。
大賞は17歳で鮮烈のデビューを飾り、作家として活躍する羽田圭介さんの「その針がさすのは」。
佳作は六ッ川和泉さんの「軌道、レゾナント」、ふるたみゆきさんの「檸檬と蜜柑のラプソディ」の2作品。
中野区に関係する場所や人物などを題材にした中野区賞は、宮本直樹さんの「10円玉を握りしめたら」。
また、今年初の試みとして行ったクラウドファンディングでは、132名の方々から総額80万円近いご支援を頂くことができました。「ナカぶん」クラウドファンディングの支援者が最終選考通過作品に投票し、選定される「クラファン賞」には大賞と同じく、羽田圭介さんの「その針がさすのは」が選ばれました。
授賞式では、最終選考委員より各賞の授与が行われ、講評コメントが発表されました。授賞式の後に最終選考委員4名がこれまでの軌跡を振り返るトークイベントも同時に開催されました。
大賞を受賞した羽田圭介さんの作品は文芸誌「新潮」4月7日発売号で全文掲載されます。

最終選考委員と大賞・佳作・中野区賞受賞者の皆さん

最終選考委員の講評より

中島京子さん「若い人が主人公だったり、青春時代の人との出会いや挫折を通して人が成長していく時間の厚みのようなものが描かれた、”中野”という一つの大きな物語が共有された作品が多く、読んでいて楽しかった。大賞を受賞した羽田さんの作品は小説としての完成度、文章の強度が素晴らしかった。小説としての完成度は劣るものの、佳作の六ツ川さんの作品も描写や設定に魅力がありとても映像的だった。中野区賞は自身でエントリーする面白い方式を取っている文学賞だが、中野的ディテールを書き込んだ作品もあり、楽しく読めた。」
篠原哲雄さん「受賞した4作品はどれもすべて面白く、それぞれに持ち味があった。特に中野区賞を受賞した宮本さんの作品は、中野駅に一つしか残っていない公衆電話を主人公にして、とある事件を公衆電話が救うという発想がユニークだった」
大槻ケンヂさん「8作品どれも面白かった。大賞を受賞した羽田さんの作品は群像劇。一人一人の人間が色濃く描かれていたのが印象的だった」
鬼塚忠「最終選考の8作品に絞られる前にも面白く、豊かな作品が集まったと聞いている。多くの作品が寄せられて、出版、舞台、映画化に結びつき、さらには海外にまで飛び出していてほしい。ますますこの文学賞が魅力的になっていくといいと思う」

大賞・クラファン賞「その針がさすのは」羽田圭介さん

大賞プレゼンターの中島京子さんと羽田さん
クラファン賞プレゼンターの実行委員と羽田さん

【中島京子さんコメントより】
羽田さんとは作家デビューが一緒なので、羽田さんが選考委員でもおかしくないと思ったが、中野文学賞は新人発掘の賞ではなく、ベテランコピーライターや音楽劇の作家さんなど各方面で活躍している方の作品が集まっているため、純粋に作品と向き合って選考した。
文章の強度、小説としての完成度もさることながら、小説の舞台となっている中野の描写のディテールの細かさ、面白さが際立った。
いろいろな人の声が入ってくる、魅力にあふれている作品。

【羽田さん 受賞コメントより】
たまたま仕事の合間にスマホを見ていて中野文学賞という賞を知った。プロアマ問わず応募できることが心に残っていた。
日本全国ローカルな文学賞はいろいろあるが、東京の、中野というローカルな文学賞って面白いなと思った。
日頃、単品では小説にできない小ネタをネタ帳に書き留めている。文学賞を意識し始めたことでその小ネタがどんどん結びつき、作品となった。
例えると、手元にある野菜の端材を「中野」という熱伝導率の良い「鍋」で煮込んだら、おいしい出汁ができたようなイメージ。
「東京中野文学賞」という賞がなければ生まれなかった小説。中野で生活する人や多くの人に読んでもらい、小説の「鍋」となった中野の良さに気づいてもらえるきっかけとなれば嬉しい。

クラファン賞の方の感想より
・中野の街を知っているとニヤリとする背景描写と、主人公を取り巻くドラマがちょうどいい塩梅に折り重なっており、テーマもキャラクターも「東京中野文学賞とは」に書かれたメッセージにフィットする作品だと感じた。
・さすがに、読ませる小説だった。ブロードウェイの時計屋の多さ、放置自転車の多さなど中野の町をストーリーに生かされていた。
・中野に住んでるんじゃないかと思えるくらい、今の中野の再開発等の問題をしっかりと捉えた作品ではないかと思った。

【羽田圭介さんプロフィール】
東京都出身、1985年生まれ。高校在学中の2003年、「黒冷水」で第40回文藝賞を受賞し小説家デビュー。2015年「スクラップ・アンド・ビルド」で第153回芥川賞受賞。その他にも『走ル』『盗まれた顔』『メタモルフォシス』『成功者K』『ポルシェ太郎』『Phantom』『滅私』『タブー・トラック』などの小説や、『羽田圭介、クルマを買う。』『三十一歳の初体験』などエッセイも出版。最新刊は初の短編集『バックミラー』(河出書房新社)。

佳作「檸檬と蜜柑のラプソディ」ふるたみゆきさん

プレゼンターの大槻さんとふるたさん

【大槻ケンヂさんコメントより】
読んでいて気持ちがいい、サクサク読めて面白い作品。文学賞が目指すマンガ化や映像化しやすい作品だと感じられる、頭の中で妄想キャスティングするのも楽しい作品。

【ふるたさん 受賞コメントより】
現在は京都在住だが、10年以上東京に住んでいて愛着がある。
中野は文化の交差点としてエネルギッシュな街。その文学賞で受賞できて嬉しい。

【ふるたみゆきさんプロフィール】
京都市出身。早稲田大学第一文学部卒。芸術団体「夢の浮橋」制作企画 主宰。京都×音楽をテーマに作品を発表している。音楽小説の受賞作に『歌うキノコと孤児たち』(第41回さきがけ文学賞 最高賞)など。脚本では、京都の古典に根ざした音楽朗読劇のシリーズを展開。「未来の古典」となりうる総合芸術作品をめざし、音楽家との協業を重ねている。これまでに、北海道東川町主催「片山柊ピアノリサイタル」(2021)、京都ノートルダム女学院中学高等学校オーケストラクラブ主催公演(2022)、京都外国語大学 図書館主催「耳で読む戯曲」(2025)等で新作の音楽朗読劇を上演。2025年5月、ピアノと香りで楽しむ音楽朗読劇《小野小町、ショパンを聞く》を京都で上演予定。

佳作「軌道、レゾナント」六ッ川 和泉さん(授賞式は都合により欠席)

プレゼンター篠原哲雄さんのコメント
私の審査基準は「いかに心が動いたか」。
双子の姉妹が両親が亡くなって窮屈な生活をしながらパラダイスな暮らしにいきつく、大転換、わくわく感がすごくあった。

六ツ川さん受賞コメント
幼いころから空想(妄想)が日常でした。白昼夢を作り出すことでなんとか現実を生きてきたのだと、今となってはわかります。そんな自分が嫌で、しばらくは実社会で身を立てることに躍起になってきました。自分の妄想と創作を結びつけるようになったのは3年前です。物語を作りたいという思いが沸きあがり、自然とキーボードを叩いていました。自分の妄想を許せた時だったのかもしれません。拙いものであっても、私の手元にある表現方法は文章だけです。書き続けていきます。

【六ッ川和泉さんプロフィール】
1977年生まれ。横浜市出身。信州大学人文学部卒業後、しばらく安曇野に住む。横浜で障害分野のソーシャルワークに従事。2024年から再び安曇野在住。社会福祉士、公認心理師。

中野区賞「10円玉を握りしめたら」宮本 直樹さん

【プレゼンター 鬼塚さんコメント】
良い作品が並んだが、記憶に残り続ける作品を基準に選んだ。老若男女が楽しめる中野を舞台にした、中野区賞にふさわしい作品と選考委員満場一致の結果だった。舞台化映画化にふさわしい作品。

【宮本さん受賞コメント】
中野文学賞は日本で一番若い文学賞なのではないかと思う。
中野の破天荒なエネルギー、カオスのドロドロした感じ同様、既存の文学賞の権威に喧嘩を売るような文学賞に育ってくれると嬉しいと思う。

【宮本直樹さんプロフィール】
山梨県甲府市生まれ。甲府南高校卒、青学大を5年で卒業。新聞記者を志望するが挫折。マスコミ業界にいれば道も開けるかと、20歳の時からCM制作会社でアルバイトをする。26歳の時、外資系広告代理店の人事局長から「出社時間も休みも自分で決めていい。喧嘩しようが不倫しようがいい仕事さえしてくれればそれでいい」との言葉に釣られて入社。23年間勤務するがマネージメントの一人と対立して退社。上司と同僚とでCUNEを立ち上げた後、現在はフリーランス。広告の受賞歴は[カンヌ国際広告祭銅賞][クリオ賞・ブロンズ賞][IBAファイナリスト][ACC奨励賞]など。敬愛する作家は、浅田次郎、倉本聰、藤原新也、高村薫、他。

東京中野文学賞とは

新たな才能の発掘と、若者の夢を育む町、中野から世界に向けて発信する物語を生み出すことを目指して2022年に新設。今回が2回目。大賞と佳作を選定し、それとは別に、中野区に関係する場所、人物などを題材にした作品から中野区賞を選定する。
●募集期間:2024年4月30日(火)〜 8月31日(土)
●応募総数:216作
●応募ジャンル:恋愛小説/青春小説/お仕事小説/歴史小説/ミステリー/サスペンス/SF/ファンタジー/ホラー/コメディ/その他 
●一次選考通過作品数:46作(2024年10月31日発表)
●二次選考通過作品数:8作品(2024年12月28日発表)
●最終選考結果発表 :2025年3月29日(土)発表
●賞の種類: 大賞/1編 30万円+副賞、佳作/2編 5万円+副賞、中野区賞/1編 10万円+副賞、クラファン賞/1編 表彰状
●クラファン賞:今回初の試み。総勢132名の方々から総額80万円近い支援があった。「ナカぶん」クラウドファンディングの支援者が最終選考通過作品に投票し、選定される
●最終選考委員:中島 京子氏(小説家)、篠原 哲雄氏(映画監督)、大槻 ケンヂ氏(ロックミュージシャン)鬼塚 忠氏(小説家・作家エージェント)
●主催:一般社団法人中野区観光協会/東京中野文学賞実行委員会
●後援:中野区/東京商工会議所中野支部/中野区商店街連合会/中野工業産業協会/東京都書店商業組合/NPO法人中野コンテンツネットワーク協会
●授賞式イベント後援:東京都
●授賞式イベント助成:公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京(芸術文化創出助成)

アップルシード・エージェンシーは東京中野文学賞の広報活動をサポートしています。

最終選考委員プロフィール

中島 京子(小説家)
東京都出身。2003年に小説『FUTON』でデビュー。2010年『小さいおうち』で直木賞を受賞以来、数々の文学賞を受賞。『妻が椎茸だったころ』『かたづの!』『長いお別れ』『夢見る帝国図書館』『やさしい猫』など著書多数。

篠原 哲雄(映画監督)
東京都出身。フリーの助監督を経て1996年、山崎まさよし主演の『月とキャベツ』で劇場用映画監督デビュー。その後精力的に撮り続け、2018年、『花戦さ』で第41回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。最新作「本を綴る」が2024年秋から全国で随時公開予定。

大槻 ケンヂ(ロックミュージシャン)
東京都中野区出身。ロックバンド「筋肉少女帯」での活動と共に、エッセイ、作詞、テレビ、ラジオ、映画等多方面で活躍中。小説では「くるぐる使い」「のの子の復讐ジグジグ」で2年連続「星雲賞」を受賞。「グミ・チョコレート・パイン」等映画化作品も多数。

鬼塚 忠(小説家 ·作家エージェント)
鹿児島市出身。2001年、作家のエージェント会社アップルシード・エージェンシーを設立し多くの作家を発掘する。また、自身でも小説を書き、『花戦さ』など9作中、7作が映画化されている。

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