【北海道 東川町】第39回「写真の町」東川賞の受賞作家が決定
国内作家賞を原美樹子氏、新人作家賞を藤岡亜弥氏など5名が受賞
北海道東川町は第39回「写真の町」東川賞の受賞作家5名を5月1日に発表いたしました。授賞式をはじめとして様々な写真関連イベントが行われる「第39回東川町国際写真フェスティバル」は7月29・30日に開催します。
第39回「写真の町」東川賞受賞作家
海外作家賞 アストリッド・ヤーンセン 氏(Astrid JAHNSEN)
国内作家賞 原 美樹子 氏(HARA Mikiko)
新人作家賞 藤岡 亜弥 氏(FUJIOKA Aya)
特別作家賞 石川 直樹 氏(ISHIKAWA Naoki)
飛彈野数右衛門賞 広田 尚敬 氏(HIROTA Naotaka)
海外作家賞
アストリッド・ヤーンセン(Astrid JAHNSEN) / 対象国:ペルー
受賞理由:『On Your Knees』(2017年)、『Backdrop』(2018年)、
『The Lost Gaze』(2019年〜)など、一連の作品に対して
1972年、ペルー・リマ生まれ。リマ大学コミュニケーション学部を卒業後、コピーライターとして、広告業界で働いた後、写真作品の制作を始める。情報を伝えるメディアとしての写真が、歴史を変えられるかということに興味をもち制作している。リマ、サンフランシスコ、マドリードを行き来しながら活動している。
曾祖父が、鉄道建設のためにペルーに来たイギリス人技師で、アマチュア写真家だった。彼の撮った写真を複写しているうちに、彼の見方を盗んでいるような気持ちになり、写真を使った作品の可能性を見出す。同じ頃、’60年代に制作されたポルノ本の撮影も始め、写真を再撮影することによって、物語が変化することに気づき、男性目線で撮られたポルノ写真のイメージを再構築した作品「ひざまづけ」を’17年に発表。
’18年、祖母から譲り受けた百科事典を見て、子供の頃、本の中に女性の姿が少ないことに衝撃を受けたことを思い出す。それから、撮影者の意図なしに、本の中に背景として登場する偶然通りかかった女性たちを再撮影し、主役として再配置する「背景」を発表。
’19年からスタートした「失われた視線」でも、祖母の蔵書の美術書を使用。西洋美術史の中に描かれてきた女性像を女性の元に取り戻そうと試み、そこで描かれてきた女性を男性の視線から遠ざける必要性を提示した。
主な個展に、「ひざまづけ」(Pinakothek Der Modern、ミュンヘン、’22年)、「継承」(ルイス・ミロ・ケサダ・ガーランド・ギャラリー、’19年)、主なグループ展に、「REFRAMED」(フロリダ写真美術館、’21年)、「OSMOSCOSMOS」(国立写真センター、ジュネーブ、’19年)、「’19サンタフェ・センター賞受賞作家展」(ピクチャー・ギャラリー、インディアナ、’19年)、「’19 Plat(T)Form,」(ヴィンタートゥール写真美術館、’19年)、主な受賞に、ブタペスト国際写真祭’19・ファインアートブロンズ賞(ハンガリー)、’19サンタフェ・センター賞・3位(米国)、ルーセス賞’19年ベスト写真展(ペルー)がある。
国内作家賞
原 美樹子(HARA Mikiko)
受賞理由:写真集『Small Myths』(Chose Commune、2022年)に対して
1967年富山県生まれ。’90年慶應義塾大学文学部卒業、’96年東京綜合写真専門学校研究科卒業。専門学校時代の課題のストリートスナップをきっかけに、しばしばノーファインダーというカメラのファインダーを覗かずに撮影する方法を用いながら、現在まで一貫して独自のスタイルで日常を切り取り続けている。
自身が偶然そこに居合わせた目の前の光景を「なるべく変質させることなくそのままとらえようとした」だけで、「多くのことはカメラに委ねています」と、’30年代のドイツ製フィルムカメラ「イコンタ」を胸からぶら下げ、三人の子供の子育てをしながら、日々の生活の中で出会ったありふれた光景――人、風景、モノを撮影している。写真家としてというより、日常に根ざした生活者の視点が強く見受けられるが、その写真のいずれもがつかみどころのない、言葉では説明しがたいものばかりである。「誰かが“写真は問いを生む”と言っていたのを覚えていますが、そういう禅問答をやっているような感覚がずっとあって」と語り、当たり前の日常の尊さ、慈しみさえ感じられる独特なスナップショットである。
'96年に初個展「Is As It」(ギャラリー・ル・デコ、東京)を開催。同年、第13回キヤノン写真新世紀展佳作、第8回写真『ひとつぼ展』に入選する。また、’07年の個展「Blind Letter」 Cohen Amador Gallery (ニューヨーク)以降、海外でも注目を集め、’14年には長野重一、森山大道、瀬戸正人との四人展 「In Focus: Tokyo」(ゲティ美術館、ロサンジェルス)に出品した。海外で個展、グループ展に参加する一方、国内では’19年のグループ展「対話のあとさき」(横浜市民ギャラリー)で多くの最近作を発表。写真集に『Hysteric Thirteen: Hara Mikiko』(ヒステリックグラマー、’05年)、『These are Days』(オシリス、’14年)などがあり、’17年には『Change』で第42回木村伊兵衛写真賞を受賞。そして、昨年、’96年から2021年までの作品で構成された写真集『Small Myths』が、フランスのChose Commune から出版された。
新人作家賞
藤岡 亜弥(FUJIOKA Aya)
受賞理由:展覧会「New Stories ニュー・ストーリーズ」(奈良市写真美術館、2022年)、「ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で」(金沢21世紀美術館、2021年)ほか、近年の多様な活動に対して
1972年広島県生まれ。’94年日本大学芸術学部写真学科卒業。
大学卒業後に滞在した台湾での出会いからヨーロッパを旅することになる。2週間の予定が、エストニアからフィンランド、イギリス、フランス、スロバキア、ハンガリーと1年半彷徨う。旅先で出会った人々やそこでの経験を写真にした「さよならを教えて」は、’04年ビジュアルアーツフォトアワードを受賞し、同名の写真集がビジュアルアーツ出版から出される。
帰国し、安定した生活が続くと次第に焦燥感を感じ始め、’07年新進芸術家海外研修制度(文化庁)の研修員としてニューヨークに向かう。研修期間終了後も’12年まで滞在し、そこでの出来事や出会った子どもたちをスナップした作品「Life Studies」、「Home Alone」(Dexon gallery、NY、’10年)を発表。
その前後、帰国した地元広島の実家での日常や、家族との距離感を撮った写真集『私は眠らない』(赤々舎、’09年)を出版する。さらに、広島に暮らすようになると「いやがおうでもヒロシマの表象に出会う」。そこから「日常を通して歴史を意識化」しようとヒロシマと向かい合い、それらは「川はゆく」(ニコンサロン、東京、大阪、’16年)に繋がり、第41回伊奈信男賞を受賞。同名の写真集『川はゆく』(赤々舎、’17年) は、’18年第27回林忠彦賞と第43回木村伊兵衛写真賞をダブル受賞。
主な個展に「さよならを教えて」(ビジュアルアーツギャラリー、東京、大阪他、’05年)、「私は眠らない」(AKAAKA Gallery、東京、’09年)、「Life Studies 2」(Place M、東京、’14年)、「アヤ子形而上学的研究」(ガーデアンガーデン、東京、’17年)、「アヤ子江古田気分」(OGUMAGU、東京、’22年)、「New Stories」入江泰吉記念奈良市写真美術館(奈良、’22年)、主なグループ展に「DOMANI 明日2020」(国立新美術館、’20年)、「日常の光-写し出された広島-」(広島県立美術館、’20年)、「日常とつながる美術の扉」(東広島美術館、’20年)、「ぎこちない会話への対応策―第三波フェミニズムの視点で」(金沢21世紀美術館、’21年)等がある。
特別作家賞
石川 直樹(ISHIKAWA Naoki)
受賞理由:写真集『SAKHALIN』(アマナ、2015年)、『知床半島』(北海道新聞社、2017年)、2016年から展開されている「写真ゼロ番地」の一連のプロジェクトに対して
1977年東京都生まれ。’00年北極から南極までを人力で踏破し、’01年七大陸最高峰の登頂に当時最年少で成功する。’02年早稲田大学第二文学部卒業、’08年東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。文化人類学、民俗学などの領域にも関心を持ち、世界最高峰の峰々や辺境から都市に至るまであらゆるフィールドを対象に、写真作品を制作、発表している。
‘08年、世界各地に残る先史時代の壁画を旅した写真集『NEW DIMENSION』(赤々舎)、北極圏の大自然とそこに暮らす人々に迫った『POLAR』(リトルモア)で日本写真協会新人賞、講談社出版文化賞を受賞。眺める山ではなく登る山として富士山を捉えた『Mt. Fuji』(リトルモア)の出版をはじめとする積極的な活動が評価され、’09年東川賞·新人作家賞を受賞。’11年南太平洋の島々の歴史と人々の営みを考察した『CORONA』(青土社)で土門拳賞を受賞。その後、8,000メートル峰に焦点を当てたヒマラヤシリーズ『Lhotse』『Makalu』(SLANT)など数多くの写真集を発表し、’20年には『EVEREST』(CCCメディアハウス)、『まれびと』(小学館)により日本写真協会賞作家賞を受賞。また、不屈の冒険家神田道夫の軌跡を追った著書『最後の冒険家』(集英社)では、開高健ノンフィクション賞を受賞する。
主な個展に「JAPONÉSIA」(ジャパンハウス サンパウロ、オスカーニーマイヤー美術館、ブラジル、’20-’21)、「この星の光の地図を写す」(水戸芸術館、新潟市美術館、市原湖畔美術館、高知県立美術館、北九州市立美術館、東京オペラシティアートギャラリー、’16-’19)、「K2」(CHANEL NEXUS HALL、東京、’15)、「ARCHIPELAGO」(沖縄県立美術館、’2010)等がある。作品は、東京都現代美術館、東京都写真美術館、横浜美術館、沖縄県立美術館等に収蔵されている。
また、‘16年より道東の知床半島の魅力を、写真を通して発見·発信するプロジェクト「写真ゼロ番地 知床」に関わり、写真展、ワークショップ、トークショー等の活動を積極的に展開している。
飛彈野数右衛門賞
広田 尚敬(HIROTA Naotaka)
受賞理由:長年にわたって地域の人・自然・文化と密接に関連している鉄道を撮り続けている活動に対して
1935年東京都生まれ。中央大学経済学部卒業。
幼少時より鉄道に興味を持ち、中学3年の時に初めて鉄道写真を撮影。以後、鉄道写真にのめり込み、業界の第一人者となり、’88年には日本鉄道写真作家協会を設立。初代会長をつとめるなど、日本の鉄道写真界を牽引してきた。
中央大学卒業後、会社員を経て、’60年フリーの写真家となる。’68年に初個展「蒸気機関車たち」ではオリジナリティ溢れる表現で、新たな鉄道写真の世界を示し、話題となる。同年、初の鉄道写真集『魅惑の鉄道』(ジャパンタイムズ、'69年)をまとめ、英語版も出版。
その後の著作は、初の海外の鉄道写真集である『ヨーロッパのSL』(朝日新聞社、’73年)、全てモノクロ写真で構成された『SL夢幻』(蝸牛社、’75年)など200冊以上にのぼる。また、20代から、それまで絵で描かれてきた子ども向けの乗り物絵本を、写真で構成する写真絵本に仕立て、制作出版を重ねている。
‘99年より『レイル・マガジン』増刊としてイヤーブック『鉄道写真』を編集し,自らの作品を発表する一方,業界の先人たちの仕事を紹介するなど、アマチュア写真家たちへ鉄道写真の啓蒙活動を積極的に展開してきた。
‘09年には、’60年代にニコンFで撮影した写真をまとめた写真集『Fの時代』(小学館)を出版し、同名の写真展を’18年にニコンミュージアム、'19年に東川町文化ギャラリーで開催し、好評を博す。
最近では、電子書籍を自身で編集、デザインし、発表している。
ブレ、ボケやデフォルメ、自作のカメラを使った独自の撮影方法を手掛けるなど、鉄道写真の表現の幅を広げるとともに、車両のみならず、周辺の風景や人々と鉄道との関わりを捉えるなど、鉄道写真の新機軸を打ち立ててきた。
第39回写真の町東川賞審査会委員(敬称略/五十音順)
安珠 (写真家)
上野 修 (写真評論家)
神山 亮子 (学芸員、戦後日本美術史研究)
北野 謙 (写真家)
倉石 信乃 (詩人、写真批評)
柴崎 友香 (小説家)
丹羽 晴美 (学芸員、写真論)
原 耕一 (デザイナー)
「写真の町」東川賞
写真文化への貢献と育成、東川町民の文化意識の醸成と高揚を目的とし、これからの時代をつくる優れた写真作品(作家)に対し、昭和60年(1985年)を 初年度とし、毎年、東川町より、賞、並びに賞金を贈呈するものです。
東川賞の第一の特徴は、日本ではじめて自治体によって写真作家賞が制定されたこと。第二の特徴は、日本の写真作家賞が全て“年度”賞であるのに対し、国内、新人作家賞については、作品発表年から3年間までを審査の対象とし、作品の再評価への対応にも努めていること。第三の特徴は、海外の写真家を定期的に顕彰し、あまり知られていない海外の優れた写真家を日本に紹介してきたこと。また、顕彰を通じて海外の人々と出会い、交流し、平和への祈りと夢のひろがりを次の時代に託すことにあります。
各賞の対象については、国内作家賞及び新人作家賞は、前述の通り発表年度を過去3年間までさかのぼり、写真史上、あるいは写真表現上、未来に残すことのできる作品を発表した作家を対象とします。
特別作家賞は北海道在住または出身の作家、もしくは北海道をテーマ・被写体として作品を撮った作家、飛彈野数右衛門賞は長年にわたり地域の人・自然・文化などを撮り続け、地域に対する貢献が認められるものを対象とします。
東川町長が依頼するノミネーターにより推薦された作品を、東川町長が委嘱した委員で構成する[写真の町東川賞審査会]において審査します。
リリース用データについて
プレスリリース用データにつきましては、以下よりダウンロードしご使用ください。また、受賞作家の言葉や東川賞審査会講評につきましては、東川町国際写真フェスティバル公式ホームページよりご確認いただけます。
東川町国際写真フェスティバル公式HP
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