「ビル再生100の物語」コンセプトを曲げない。
ビル再生100の物語 第47話
テナワンでは、これまで多くのビルの空室対策や賃貸運営を行ってきました。
それぞれの問題を解決してきたビル再生の事例を「100の物語」としてこれから公開していきます。
物件のメリットを強く認識していても、反響が出ないと自信がなくなっていくもの。それでもアピールを続ける勇気も必要です。
千代田区にある1フロア20坪程のビル。抜群の眺望にもかかわらず、なかなか反響が出ませんでした。
眺めの良いバルコニーに自信はあったが。
1982年に新築されたこのビルは、1階、2階は飲食店、3〜10階までがワンフロア17坪程度のオフィスが入る複合ビルです。
千代田区九段南という住所で士業など固い業種に好まれるエリアな上、エレベーター不停止機能や機械警備など、ビルの規模のわりに、スペックが良い物件です。また、全室にバルコニーがあり、目の前の神社の眺望がとれることが最大の強みでした。
春は桜、秋は紅葉が楽しめ、立地だけで他物件との差別化が図れるという、不動産として最大のメリットを活かせる物件だったので、募集資料も眺望を前面に出して強調しました。
問合せの少ないエリアであることに気付く。
ビルの住所は九段南であるものの、市ヶ谷駅(歩7分)、九段下駅(歩7分)という距離がネックになることがわかりました。
徒歩7分というと一見すると問題にならなそうですが、九段下からは皇居前の長い坂を上がることになり、市ヶ谷は路線が多く、路線によっては駅内だけでも4〜5分歩くこととなり、表示以上の駅距離に感じていしまうのです。
実際、募集を開始してみると問合せが少なく、エリアとして避けられているようにも見えてきました。業者にヒヤリングすると、駅近物件の紹介が中心で、都心にもかかわらず、陸の孤島のような印象です。
やっぱり眺望が成約の決め手に。
2〜3カ月問合せの少ない状態が続き、オーナーも当社も徐々に自信がなくなってきましたが、ふと目を外にやると紅葉の季節。やはり眺望が素敵なことが実感でき、よりアピールする方向でがんばることにしました。
募集階は他階と違い、17㎡もの広いバルコニーだったのですが、内覧客に使い方をイメージしてもらうため、テーブルと椅子を買って並べ、リラックスした打ち合わせに使えることをアピールしました。また、グリーンに恵まれたオフィスであることを強調するため、リースの観葉植物で飾りました。
それからしばらくすると、グリーンに恵まれた物件を探していたベンチャー企業の社長の目に止まりました。バルコニーを気に入ったことはもちろん、ビル側がデメリットと考えていた皇居前の長い坂も、通勤の行き帰りに千鳥ヶ淵を眺めることができてうれしい、とのこと。すぐに契約となりました。
その後、別フロアの退去がありましたが、同様に屋上からの緑あふれる景色を気に入った、緑化関係の団体に決まり、「眺望」という資産を持つビルとして浸透したことを実感することとなりました。