【グレーゾーンとは】ほかの子と違う、育てにくい子の育て方に答えはある?

普通級の授業や学校生活についていけないわけではないけれど、ほかの子と比べると違和感があるわが子。「もしかするとグレーゾーンかもしれない」と思うことはありませんか。何となく知ってるけど疑問も多いグレーゾーンについて自閉症スペクトラム支援士の冨樫ちはるさんが解説します。

グレーゾーンとは

黒から白へのグラデーションを描いた時、黒でもないけど白でもない、濃いグレーから淡いグレーまでの曖昧な部分を”発達”になぞらえて表現したのがグレーゾーンです。また、物事は白か黒かだけではなく、さまざまな可能性があることから、最近はパステルゾーンと表現する人もいます。


グレーゾーンは障害などのような診断名ではなく、明確な定義はありません。


医療機関では発達検査などをした上で、「発達の凹凸や偏りがありますが(ASD、ADHDなどの)診断がつくほどではありませんね。いわゆるグレーゾーンです」といった表現をします。


つまり、グレーゾーンは診断基準を満たさないけれど特性があるということ。診断はつかなくとも何らかの支援や配慮が必要な状態と考えてよいでしょう。



グレーゾーンでも病院へ行くべき?

わが子のことはよく分かっていても、その子が同年齢の子たちの中でどのような位置にいるのかは分かりづらいものです。


親は「発達障害の診断を受けるほどではないだろうな」「おそらくグレーゾーンだろうな」と思っていても客観的にみると「かなり偏っている」「診断レベル」という場合があれば、「他人の目から見ても検査をしても凸凹ですらない」という場合もあります。


もし、親または本人が「どのくらいの凸凹なのか、はっきりさせたい」「どんな所が得意で、どんな所に困難を持っているのか知りたい」と思うのであれば受診をしてみるのもよいでしょう。発達検査をすることで凸凹の度合いが見え、医師や心理師のアドバイスを受けることができます。


また、子どもはある程度の年齢になると病院で受診することに対して何かを察知することがあります。必ずしも「受診すべき」ということはありませんので、子どもの気持ちも考えながら検討してみてくださいね。

発達障害のグレーゾーン

ひとことで発達障害といってもさまざまな診断があります。グレーゾーンの子の場合、下記のような傾向がありながらも診断に至るほど特性が強くないと言うことになります。


また、下記の発達障害は単独でみられることもあれば、重複していることもあり、特性にはそれぞれ「強弱」があります。


自閉症スペクトラム(ASD)

強いこだわり・臨機応変な対人関係が苦手・コミュニケーションが取りづらい・細部にこだわらず全体を見る力が弱い・実行機能(ものごとを順序立てて考える力)が弱い。

注意欠如・多動症(ADHD)

不注意、多動性・衝動性がある。※体の多動性がなく、不注意だけだとADD(不注意優勢型)と呼ばれる。

学習障害・限局性学習症(LD)

読み・書き・計算・推論など、特定の分野に本人の努力では補えない、極端な苦手さがある。



上記以外にも、マヒなどの運動障害がないにも関わらず、ボールを蹴ったり、字を書いたりすることなどに困難がある発達性強調運動症(DCD)があります。

グレーゾーンの子の特徴や困りごと

グレーゾーンは診断がないので、特徴や行動に定義はありません。ただ、保護者が「うちの子はグレーゾーンかもしれない」と感じる行動には下記のようなことがあります。

【小学校低学年】特徴や生活面での困りごと

✓生活習慣を身に付けるまでに時間がかかる
✓できることとできないことの差が大きい
✓似たようなことでも、できることとできないことがある
✓独特のこだわりや儀式的な行動をする
✓できないわけではないが、毎回指示や説明が必要
✓言葉や行動が達者なだけに、わざと間違えたり、怠けたりしているように見えてしまう

【小学校高学年】生活面での特徴や困り事

✓周囲の目を気にせず、身だしなみに気を配ることがない
✓精神的に幼さが残る子が多いため、思春期に差し掛かっているクラスメイトとのズレがでてくる
✓「群れて元気に遊ぶ人間関係」から「精神的な結びつきや会話で深まる人間関係」への移行についていけない
✓コミュニケーションや人間関係の苦手さゆえ、ほかの子の言っていることがよくわからず、孤立したりいじめの対象になりやすい
✓自分が周囲と何となく違うという違和感があるものの、うまく表現できなくて相談できない
✓周囲のズレを感じていてもプライドがあるので無理に合わせようとして疲れる


【中学生】生活面での特徴と困り事

✓考え方や行動が幼いが生活年齢としての思春期は来るのでアンバランスさが目につく
✓できないことがさらに増え、体の成長とともに親も違和感を感じやすい
✓小学校時代からの生活の変化に順応できない子も多く、不登校やいじめのターゲットになりやすい
✓友達とのズレがますます大きくなり、孤立することがある
✓「中学生」と言われることや制服を着ることで、切り替えしやすくなり規律正しく一気に成長する場合もある
✓規範意識が高いので、礼儀正しく言葉遣いも丁寧である反面、凹凸が目立ち、つかみどころのない人と表現されることもある


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グレーゾーンの子育てのヒント

「グレーゾーンということは、黒(発達障害)ではない」「定型発達の子と同じ」と考えていると、本人に大きな負担を強いることになってしまいます。要求が高くなったり、「がんばればできるはず」と苦手の克服を強要したりすることになりかねません。

グレーゾーンの子を育てる上で壁にぶつかったとき、私がおすすめするのは「発達障害の子どもに有効な育て方を実践すること」です。

近年、厚生労働省でも推奨するようになった「ペアレント・トレーニング」では、子どもを変えるのではなく、親の対応を変えることを目標としています。発達障害に特化していると思われがちですが、どんな子どもに対しても有効です。

私も講師として100人以上の保護者・支援者の方に実施してきましたが、「定型発達のきょうだい児にも同じ対応をしたら、親子関係がとても良くなった」という感想の声をよく聞きます。

「ペアレント・トレーニング」では子どもの良い所を見つけてほめることや、わかりやすい指示や伝え方、注目と計画的無視を必要に応じて使い、良い行動を増やす方法を学びます。子育ての基本ともいえる手法は、発達障害の有無に関係なく、子どもの自己肯定感を高めます。


ペアレント・トレーニング実践例

では、「ペアレント・トレーニング」を用いた子育て方法をよくある子育ての悩みにあてはめて紹介します。

【お悩み】
うちの子は物の管理ができません。部屋はいつも足の踏み場もなく、ちらかっています。片付けさせると出来るのですが、片付けの習慣が身に付きません。ゲームばかりして、宿題もなかなか手をつけません。やっと宿題をやる気になってもまず部屋の片づけから、となります。いつも母親が手伝わなければ片付けも宿題もできません。


「手伝わないと片付けも宿題もできない」という表現を、「手伝えば片付けられる」「手伝えば宿題ができる」という風に、「~すればできる」という表現に変換しましょう。

また、手伝いが必要ということは、お子さんの目標をもっと下げて「机の周りだけは自分でする」など、ポイントを絞るといいでしょう。部屋全体を常にきれいに保つのは難しいものです。

また、物がありすぎるのであれば、増やさない工夫をしましょう。相談して使わないものはマメに捨て、大切なものだけを残す中で、不要なものは処分することも学べます。

時間の使い方のルールを決める、片付いた状態の写真を貼ってモデルとするなど視覚的な支援も良いかも知れません。



親を不幸にしようと思って問題行動を起こす子はいません。 周囲を困らせる子は、それ以上に本人が困っているのです。

子どもが困っていることに気付いても、親はどうしたらいいのかわからない。それはいつ、誰にでも起こることです。価値観がどんどん変わる現代は、自分の親とも意見が合わないことも多いものです。

発達に関しては、ここ20年ほどでさまざまな研究が進んでいます。自分の今までの常識が、当たり前ではなくなってきています。多分、あなたの知らないことがまだまだたくさんあるはずです。

「育て方が悪い」
「もっと〇〇しないとダメだ」
「甘やかすな」

そんな心無い言葉に傷つけられてきた方もいらっしゃるでしょう。

子どものことを口にすることで、自分や子どもを否定するような気持ちになる怖さがあるかも知れません。でもそれ以上に、今まで頑張ってきたあなたを肯定してくれる人は、たくさんいます。

どうか一人で抱え込まずに、誰かに相談してください。あなたと同じ悩みを持っている人や、同じ経験をした人がたくさんいます。 ほんの少しの勇気が、親子が笑顔で人生を歩んでいく最初の一歩になるはずです。


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